俺はお前で、 | ナノ

お前は君と、 第15話
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素直になれそうだと思ったとしても現実は思うようにいかない上、習慣と言うもので友哉はいつもの様に夜の街を歩いている。
ただ今日はいつもよりも気分が軽い。
やっぱり自分と普通に関わってくれる人が居るだけでそのように感じる。
一人の頃と比べても今は感情の起伏はゆっくりであると自負できる。

「ん?」

街を歩いていると、何かを殴る様な心地よい音と、短い悲鳴と笑い声が聞こえてくる。
何処からだろうと思って友哉は探す。
そして見つけた。

簡単に言い表すとカツアゲ中。

友哉はどうすべきか一瞬考えた。

助けるべきか、助けないべきか、
もし助けたら今度はこっちに向かって来るわけで…いや、別にすぐにフルボッコにするからいいんだが。
助けないとなったら…んー、あー!めんどくせぇ!!

「おい、テメェら!!」

「ぁあ?んだテメェ…テメェもこいつみてぇに――。」

「お、オイ馬鹿!!お前よく見ろ、脱色した髪に意味分かんねぇぐらい入れてるメッシュ!
あ、あいつは…!あいつの歩いた後には地獄絵図しか残らないという噂の、魔の破壊神友哉…だぞ!?」

「なッ…マジかよっ!?ヒッひぃい!!助けッ!!!」

カツアゲしていた奴らはその対象を放り出し、そのまま逃げ去った。
声をかけただけなのに…。

「えー…。」

ただただ粋がっている不良だったのだろう。
友哉の姿だけを見て逃げ出すと言うことは、実力を全く持たない無節操な奴だったと言うだけの話。

友哉はそんな奴らに構っているほど暇ではないし、メリットを見いだせない為シカトする。
それからとりあえずカツアゲに遇っていた方の少年に話しかけることにした。

「おい、お前…大丈夫か?」

「…アンタも俺を殴りに来たのかよ。」

殴られていた少年は友哉をギロリと睨みつけ、毒を吐いた。
そして友哉はそれを許せるほど寛大ではない。

「ぁあ?誰がテメェなんぞ殴るかよ。
俺はなぁ、自分からテメェみてぇな弱い奴を殴るほど落ちぶれてねぇんだよ。俺がやり合うのは骨のある奴だけだ。まぁ?最近じゃぁ骨のある奴は亜久津位だがな。
テメェみてぇなガキはさっさと家に帰れ。」

メリットがまるで無い。これなら変に悩まずに見捨てておくべきだったのか。
姑みてぇに小言並べるとかダセェ。

とそんなことを考えながら友哉はこの場を去っていった。
この場に残っているのはその少年。

「……カッケェ!!
決めた!俺、舎弟にしてもらおう!!」

そう心に決めた少年が一人。


そして次の日友哉の前にその少年が現れた。
友哉は机にだれておりだるそうにその少年の方を向いた。
それからクラスの中の空気はと言うと凍りついた。
あの、あの血濡れた喧嘩人形と悪名高い友哉にニコニコと話しかけるテニス部エースが話しかけているのだから。

「守本友哉さんっすよね!!」

「…あ?お前、誰?」

「昨日、友哉さんに助けてもらった切原赤也っすよ!よろしくお願いしますっす!」

「あぁ、昨日の…で、なんの用だ?」

「いやー、昨日は失礼したっす!まさかこんなにも兄貴なお人にあんな言葉遣いをするなんてあの時の俺をぶん殴りたいぐらいっすよ!!
俺、友哉さんみたいに強くなりたいんす!!テニスでも強いんすけど、やっぱ男はケンカに強くないといけないっすよねぇ!
だから俺を友哉さんの舎弟にして下さいっす!!」

話の流れからだと予想は出来ていた。
予想は出来ていたが、理性的に対応なんて友哉には出来ない。

「ッ要らねぇ!!舎弟なんざ、そんなものぜってぇ要らねぇ!!!」

「っ!?」

友哉は大きな音を立て椅子から立ち上がり机を感情的に叩いて言い放った。
そしてシン、と静まる教室。

「………チッ。」

「あ、…待って下さいっす!」

友哉はこの空気が嫌になりすぐに教室から出て行った。
後を追う様に赤也も教室から出て行った。



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