俺はお前で、 | ナノ

お前は君と、 第14話
(14/23) 

「は?何も言われてねぇけど…?幸村に何か言われたのか?」

友哉の睨みつけてくるような視線にジャッカルは怯むことも無く、視線を逸らすことも無く、ただただ友哉の質問にキョトンとした顔で答えた。
嘘をついているなら友哉と目を逸らしてしまうか、泳がしてしまうか、どちらにせよ分かってしまうのだが、ジャッカルの行動にそう言ったモノは見受けられなかった。

つまりは本当に何も企んでいないと言う事として処理しても構わないと言う事。

「…そうか、……そうか。」

「ま、なんにせよ。赤也と関わることがあったらよろしくな。」

「お、…おぉ……ご馳走様でした。」

「お粗末様っつっても俺が作ったわけじゃねーけどな。
ワリィななんか無理やり食わしたみてぇで。」

「いや…美味かったし、…また食いたいなと思う……。」

「そっか、これからよろしくな守本。」

「あぁ、よろしく…。」

ジャッカルと友哉は食堂で別れた。
元々クラスも違うし、ブン太が居なければこうやって直接関わることも無かった。
よろしくな、と言われてもただ挨拶する程度だろう。

そろそろ五時間目が始まる時間である。
友哉はサボってしまおうとサボり場へ向かった。
そこに仁王が居ることを期待して、それで言ってやるんだ。

ジャッカル、めっちゃ良い奴。つーかハゲてねぇじゃん、剃ってるつってたぞ、と。


「守本君。」

「あ?…ゲ……。」

ふいに呼び止められて友哉は振り返った。
するとそこには柳生が居たわけである。

「ゲ、とは随分な挨拶ですね。」

いつにも増してメガネが輝いている気がする。
いや、鋭さを増していると言えば正しい。友哉を睨みつけてくる柳生は紳士と言うより般若と言った方がいい。

「ハハハハハ、ハハ…。」

「私があなたに話しかけた理由分りますよね?」

「あー…全く思いつかねぇや。」

「全く…あなたは学習能力と言うものは無いのですか?私が何回あなたに注意したと思っているのですか?」

「さ、さぁ…?」

「もう軽く10回は超えています。いい加減、その服装や頭髪を直したらいいかがです?
腰パンはダメだと言っているでしょう。それに制服も原形を保っていない。アクセサリーも脱色も染髪も、総て校則違反です。」

「ヘヘヘ…見逃してくれよ。」

「あなた一人を見逃したら他の生徒に示しがつかないでしょう。」

「あー…俺は特別ってことで!
つーか、こんな生徒が一人居たところで俺の真似しようとは思わねぇべ。
俺を立海生だなんて思わなくたっていいんだぜ?そう思ったらお前も一々俺に注意しなくて済むだろ。」

「何を戯言を…私は生徒を誰一人特別扱いしません。
それに、何を言っているのですか。あなたがどんな方であろうとあなたは立海の生徒でしょう。誰があなたを立海の生徒ではないだなんて思いますか。
どんなに着崩しをしていてもあなたの着ている制服は立海のものです。立派な立海生でしょう。」

「!?……そう、か…ハハ……。」

何だが嬉しい気持ちでいっぱいである。
思わず顔がにやけてしまう。

「なんですか?その笑い。反省の色が見られないようですけど、
全く…私がこれだけ言っても反省しないと言うことは前の学校でもそのような格好をしていたのですね。ハァ…前の学校はなんて放任主義のいい加減な学校なのでしょうね。」

「あぁ、そうさ。前の学校はいい加減な学校だったよ。教師なんてクソだ。」

前の学校の話題が出てきて友哉は少し苛立ちを覚えた。
虐めには目を向けない。臭いものには蓋をしている学校の事を話題に出され友哉はさっきの様な声ではなく重い声で言い切った。

「…何か、私は気に障る様なこと言いましたか?」

様子が先ほどと全く違うものになってしまった友哉を気にして柳生は気遣う言葉をかけた。

「………じゃ、そういうことで!!」

「なっ、待ちなさい!!守本君!!」

柳生が少し穏やかな口調になった瞬間友哉は脱兎の如く脱げ出した。
思わずあのような態度をとってしまったが、結果オーライである。


しかし確かに柳生の一言は嬉しかった。
「立派な立海生」という言葉。
自分は立海の生徒からも疎まれて、避けられて、立海の生徒じゃなかったらいいのに、とみんなが思っているのかと思った。

特に柳生や真田は自分の事を立海の生徒と認めたくない輩だと思っていた。
立海の制服を着ていながら自分は違反しまくって、
反抗しまくって、
目の上のたんこぶで、自分を立海の生徒だなんて思わなくていいと言った瞬間に同意して自分を他者だと思うだろうと思ったのに、
それを否定して立海の生徒だと言ってくれた。

予想外で、予想以上に嬉しかったこの言葉。
友哉自身も素直になれそうな予感である。


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