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「えっと、守本!…だよな?」
食堂を出ようと体を反転させた瞬間友哉の名を呼ぶ声がした。
「ぁあ?…誰………。」
名を呼ばれ振り返ってみるとそこにはハゲた生徒がいた。
仁王の言っていたテニス部のハゲ…なのか?
「俺、ジャッカル桑原って言うんだけどよ。」
「…ハァ……。」
「お前、今日ブン太にムースポッキーくれただろ?」
「あ?…あぁ。確かにやったけど?」
「サンキューな。ブン太に菓子をやってくれて。」
「いや、俺もあいつのお菓子踏んじまったし…。」
「だけどよ、そのポッキーってお前の昼飯だったんだろ?」
「あぁ、まぁ…。」
「だからお前も多分食堂に来るんじゃねーかなって思って、買っておいてやったぜ!席もとってあるし一緒に食おうぜ!!」
「え、ちょ!」
友哉の腕を掴んでジャッカルは自分がとったと言う席まで引っ張っていった。
そこにはとても豪華な昼飯とそれからおにぎりが三つと言った昼飯とがあり、友哉はおにぎり三つが置かれている席に座った。
そうしたらジャッカルがそのおにぎりを奪い、友哉の目の前に豪華な昼飯を置きなおした。
「は?俺おにぎりの方じゃねーの?」
「いや、そっちの立海スペシャルであってるぜ?それ美味しいから食ってみろよ。」
ジャッカルはおにぎりを食べながら友哉に立海スペシャルを勧めた。
「え…でもこれ、お前が食うべきものじゃねーの?俺昼飯を丸井にやったっつってもポッキーだぜ?」
「物をやったのには変わりねぇ。だから俺からの礼だ。それに限定のムースポッキーだっつってブン太、喜んでたしな。
ほら、冷えちまうぞ?」
「……ジャッカル…って言ったよな?」
「ん?おぉ…。」
「お前、ホント良い奴!!マジで!!」
「そうか?」
「ホントマジ良い奴!!俺、お前みてぇな良い奴見たことねぇ!!」
「お、おぉ…そうなのか。
その俺の意思をくんで食べてくれると嬉しいんだけどな。」
「食べる食べる!ジャッカル、ゴチになりまーす!!」
友哉は箸を手に取り目の前にある昼食を食べていく。
スペシャルとついているからだろうか、今まで食べてきた物より美味しい気がする。
きっとジャッカルと言う友達が隣に居て一緒に食べていることも関係している。
立海に来てから友哉はたった一人で何もかもをしていたから、
だから余計にそう感じてしまうのかもしれない。
「そう言えばジャッカルはさ、テニス部か?」
先ほど疑問に思ったことを聞いてみる。
ジャッカルの第一的な特徴の坊主頭。もしかしたら仁王の言っていた部員ではないのかと、
「ん?あぁ、そうだぜ?何で知ってんだ?ブン太から聞いたのか?」
「違ぇ、仁王からハゲの部員が居るって聞いたから、お前かなって思って。」
「ハゲじゃねぇ!剃ってんだよ!!」
どうやらハゲ、ではなくわざわざ剃っているらしい。
仁王の話の仕方じゃとても弊害がある。
ジャッカルは激しく訂正した。
「え?そうなのか、そうかそうか…ワリィ。」
「いや、その言い方は仁王が悪い。つーか守本は仁王と仲良かったのか?」
「あぁ、たまたまサボるところが何回か被ってな。暇つぶしによく話してる。あいつのプリだとかピヨだとかアイツの変な方言は聞いてて面白いからな。」
「仁王はそういう奴だからな。」
「…でよ、お前みてぇに俺の事を畏怖せずに接してくれるからな。そんな存在、こっちじゃ数える位しか居ねぇもん。」
「あー……何人居るんだ?ここで関わっている人。」
「んー…仁王と……………………………幸村と柳…。」
「何なんだその妙の間は…。」
「いや…後者二人は自称友達って言うか…なんと言うか……。
あ、そうそう、話をしただけなら丸井と真田と…えっと、ムスカっぽいやつ…。」
「ムスカ?…あぁ、柳生の事か?」
「あぁ!そうそう、柳生!真田と柳生は風紀委員で俺の事執拗に責めてくるんだよ。」
「確かに守本は校則違反の塊だからな。」
「…俺のアイデンティティ……けど俺は屈しない!!」
「ハハハ、頑張れよ。それよりお前、関わりあんのって見事にテニス部レギュラーだけだな。」
「……え?」
「まだ赤也とは関わってねーらしいけど関わることになるんじゃねーの?」
「…お前、幸村からなんか聞いたか?」
思わず威嚇する。
少し前幸村に言われた「テニス部総出で君の関わってどうこうしようってことは無いから安心して」という言葉。
それが嘘なのだとしたら、あの時友哉の警戒を一瞬でも解くための方便だとしたら、
ジャッカルは幸村から何か言われてこうやって友哉に関わっているのかもしれない。
友哉は睨みつけるようにジャッカルの目と目をあわせた。
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