俺はお前で、 | ナノ

お前は君と、 第06話
(6/23) 

友哉は転校した。
神奈川県、立海大付属中学へ。
そんな伝統ある学校へ何故、転校できたのか。
それは、手塚や不二が焼教師に口添えをして本来ならば道徳のある良い奴だと言ったため。
友哉が学校で暴れてしまった原因は学校側の措置の不手際であったことが理由である。と言ったため。
そして立海の生徒にはそれらの言い分は伏せられている。友哉はただ漠然とこの学校に転校してきた不良生徒であると言うことになっている。

理由としては、今の友哉は昔の…手塚や不二の言う良い奴とは適応されない為。情報の混乱を防ぐ為に伏せられている。
今の友哉はただただ、自暴自棄となり、暴れているただの餓鬼である。

毎晩毎晩、夜の街に繰り出して、絡まれるようなことを毎回して、
向こうからやってきた奴らを片っ端から病院送りにして来た。

そして数週間の間についた異名が「血塗れた喧嘩人形【ブラッディーマリオネット】」「殺戮人形【サツリクドール】」「暗夜狼鬼【ブラッディケルベロス】」「地獄図絵製作者【デッドマップメーカー】」…。
友哉と喧嘩をしていって負けた奴らが口々に言っていったその異名、より有名なのがこれらであって本来ならもっとあるかもしれない。
友哉自身はそんな異名なんて全く興味なかった。
しかし、それを自分で言っていれば向こうから腕試しだのなんだのと喧嘩をふっかけてくる輩が多かったので、メリットはあった。

いつからかその異名は関東、そして関西、その他へと広まっていった。
勿論尾ひれがついて、あること無い事、広まっていった。

あながち間違っていない噂。例えば「一般生徒にまで日常茶飯事に手をあげている。」
厳密に言えば間違っているのだが、誰が訂正してくれよう。
そしてその中に一つだけ完全な間違いがあった。「人を一人殺した。」そう言った類のもの。

それは真っ赤なウソであるが、人の口に衝立をすることは出来ない。
力づくで黙らせることは出来るが、それでは間に合わない。

こうして友哉は立海でも忌み嫌われ、一般生徒から避けられていったのである。

別に友達だった奴が離れて行ったわけではないから痛くもかゆくもない。
むしろ、それについては肯定する。

一人は楽でいい。


そうやって一匹狼を気取っていると今夜も絡まれた。

「おい、友哉。」

「あ?誰かと思ったら、亜久津じゃねーか。」

そう声をかけてきたのは山吹を縄張りとしている亜久津であり、前から友哉の仲間としてつるんでいたやつだった。
とりあえず愛想よくニコニコしておいた。
心から笑えなくても、表面上だけなら繕うことは出来る。

「テメェ、最近暴れ過ぎだ。」

「あー…んだよ、テメェ…俺に指図すんのか?ぁあ?」

笑みを消し、絶対零度の視線を注ぐ。

「何があったかは知らねーが、止めておけ、それ以上力を振うと身を滅ぼすぞ。」

「…ハハハハハハハハ、ご忠告どうも。
俺は、こうやって暴れてねぇと、自分を保てれねぇんだよ。忠告だけならもう俺は行くぜ?」

「友哉…俺の親切心が分かんねぇのか?」

亜久津は友哉の腕を掴み、去ろうとした友哉の動きを止める。

「んだよ、放せよ。
それを有難迷惑って言うんだよ。俺を止めたいならさぁ…力づくで止めてみろよ!!」

友哉は亜久津の手を振りほどき、殴りかかった。
亜久津は一瞬身をかわすのに遅れ、頬を少々負傷してしまう。

「テメェ…いい度胸じゃねーかぁ!!」

こうやって最強vs最強の喧嘩が始まったわけだ。

友哉の動きは自己流。
故に軌道が読めない。その上、隙が無い。力もあって、格闘技を行う上で必要なものは天から全て授かっていると表現したら正しいだろう。
だからこそ、強いのである。

一方、亜久津は空手を行っていたこともあってか一定の動きに規則性がある。
故に軌道は少々読むことが出来る。しかし、自己流も混ざっており空手だからと言って油断していると思わぬところから拳が飛んでくるのである。パワーも俊敏性も平均よりもかなり上。
だからこそ、強いのである。

何十分もやりあって、二人はそれぞれ負傷。
二人とも根をあげることは無かったのだが、満身創痍で動くことがやっとだ。


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