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「結果発表やでぇ!!」
司会の声でざわついていた体育館の中が再び静かになる。
「俺…帰る。」
どうせ入賞してないと思い友哉はこの場を離れることを望む。
「臆病モンが…。」
白石が挑発。
「ぁあ?んなこと言われる筋合いねぇだろうが、…分かったよ、残ればいいんだろう?残れば!!」
次々と入賞者の名前が呼ばれる。
しかし友哉の名は呼ばれない。
「次!準優勝者ぁ…は遠山金太郎君や!!」
金太郎の名が呼ばれテニス部歓喜。
友哉も喜ぶ様につられて喜んだ。
「残るは優勝者やでぇ!!…優勝者は異例の三年生での参加の…守本友哉君や!!」
「へ?俺?」
お目めをぱちくりさせてキョトンだ。
「なんや、最後まで気づかんかったんか?
体育館の中が静かになったのは自分の装いに引いたんやなくて、クォリティーが高すぎて静まり返ったんやで?」
呆れたように白石が言う。
「マジか!?」
「ホンマや、ほら司会者が呼んどるで?行ってき。」
「お、おぉ。」
友哉は促されるままステージ上へ。
今度の体育館は賑やかだ。
「えー…投票のコメントとしては…
【守本君がこんなにユーモアな人だとは思わなかった】
【女の私にその色気を分けてください】
【俺と付き合ってくれ】
【この先性転換する予定はないんですか?】
【女辞めたくなりました】などなど…。
どうですか!?今の心境は!!」
「え、…あの。正直嬉しい、です…よ。」
たどたどしく答える友哉。
戸惑っている感MAXだ。
「だそうです!!もう一度優勝者守本友哉君に大きな拍手を!!」
体育館が大きな拍手に包めれる。
そして解散になる全体。
友哉も着替えるために部室に戻る。
「はー…疲れた。」
「友哉さんお疲れ様でした。」
「おー、財前…お疲れたぜー。」
財前の言葉に返事しながら着物を脱ぐ。
「友哉ー、これから人気者やでぇ。」
「ほんとか?なんかまだ実感わかねーよ。」
「そらそやろ。まだ生徒と関わってないやん。
教室行ったらすごいことになってんでー。」
「ほんとか?それは嬉しーな。
…………………よし、着替え終わった。謙也、教室行こうぜ。」
「おん、」
「じゃ財前、また部活で!!」
「あ、ハイ。お疲れ様でした。」
部室に居たメンツに簡単に挨拶をして教室へ向かう。
「守本…君!!」
クラスの女子が話かけてきた。
「ん?何?」
初めてクラスの人に話しかけられた。
「今まで…話しかけなくてごめんなさい!!」
「…や、いいよ。原因は俺にあったわけだし、これから短い間だけど仲良くしてくれれば。」
器の広い男友哉、ここに誕生。
「なんやねん、散々ぶちぶち文句言いよったのは誰や。」
「白石ー、ちょっと黙ろうか?
……クラスのみんなは…俺が怖かったんだろ?」
そう聞くと無言になる。
無言は肯定ととろう。
「でもさ、俺だって怖いだけじゃねーし…みんなと仲良くしてーし……だからさ、ホント話しかけてくれて嬉しいぜ!!」
ニカッと笑う。
やっと友哉がクラスに馴染めた瞬間だった。
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