(7/17)
授業も終わり放課後、友哉は校内を闊歩する。
謙也はさっさと部活に行けと訴えたが、その意見を却下しての行動だ。
「俺がテニスしても意味ねーだろ。」
(せやかて、練習…。)
「謙也お前部活の仲間にボール当てられたりしても、なんで部活に出席しようとしてんだよ。辛いだけじゃねーか。」
(……俺が…部活に行かんようなったら……誤解が解けても自分の居場所がなくなるような気ぃして…。)
「お前、どんだけ好きなんだよ。」
(今まで一緒に頑張ってきた仲間がおるんや、そいつらを嫌いになることなんて出来へん。)
「そのお仲間は謙也のことなんて嫌いらしいけどな。」
(っう……。)
「っ!?泣くなよ!!泣くな!!デリカシーの無いこと言って悪かった!!よし部活行こ!!お前の居場所は俺が確保しに行ってやるから、な!!」
友哉は謙也の機嫌を伺うようにテニスコートへと向かう。
途中に昨日助けた財前がテニスコートへ向かおうと友哉の先を歩いていた。
「お、昨日三天宝寺のやつにボコボコに殴られてた財前クンじゃん。殴られてたところ平気か?」
フレンドリーに腕をつかむ。
「!?なんでアンタがそれを知っとるんや。」
「え?だって俺が助けたじゃん。」
(アホ!!友哉は友哉の名前、名乗っとったやろ、財前は俺の姿て認識しとらんっちゅー話や!!)
「(あ、やべ…ミスった。)」
「なんなんすか、俺は友哉さんに助けられたんや、アンタやない。
ちゅーか、その髪全っ然似合っとらんすわ。」
掴まれていた腕を振りほどき財前は足早にテニスコートに向かった。
「アハハハハ…正体知ったらどんな反応するかなー?」
目が笑っていない。
(友哉…怖いで?)
「俺のブリーチが似合ってないって言いやがった…チッ後輩のくせに舐められすぎだろ謙也。」
(………………。)
友哉も遅れたがテニスコートに向かう。そして部室でユニフォームへと着替える。半そでからは痣だらけの腕がのぞく。
テニスコートに着くなりテニスボールが友哉めがけて飛んできた。
何個ものボールが飛んできたため流石にすべて避けることができず体に直撃してしまった。
「ってぇー、んだよ。」
怒りを露わにする。
(大丈夫か?友哉!!)
「(大丈夫な訳ねーだろ!!お前は平気だったのかよ!!)」
(……平気やなかった。)
「なんや、お前いつから社長出勤できるくらい偉くなったんや?」
「(…誰だ?)」
(一氏ユウジ…や。)
「…昨日からだ。お前こそ人にボール当てて謝罪の一つもねーのかよ。」
「なんで俺がお前みたいな屑に謝らんとあかんのんや。」
「あ?屑?誰が屑だと?コラ、」
静かに握り拳を作る。
(友哉待って、殴らんといて!!抵抗せんといて!!)
「(あ?)」
(殴ったらあかん!!俺は、俺は仲間が俺の手で傷つくとこ見とうないっ。)
「(おま、まだ言うか)ぁあ?」
謙也の言葉に気をとられていたら体を大男に拘束されていた。
「(でか!?誰だ!!)」
(千歳千里や。)
「ちょ、お前離せよ!!」
千歳の拘束から逃れようと暴れるが解くことができなかった。
「暴れるんじゃなかと。」
千歳はそのままコートの端にある木へと友哉を運ぶ。
後ろについてきてた一氏がどこからともなくロープを持って来て友哉を括り付ける。
「さぁ、さっさと謙也を的にして練習するばい。」
「謙也に当てたらジュース奢っちゃるでー、もち謙也の金で。」
千歳と一氏の煽りで部員が友哉めがけてボールを打つ。
レギュラーではないメンツの上手とも下手ともいえないボールが友哉めがけて飛んでくる。
「お、ま、え、らっ!!」
叫ぶ、自分はこんな目に合うためにここに来たのではないと、謙也が自分の居場所を無くしたくないというから来たのだ。
この状況ではすでに謙也の居場所は失われてるのではないかと言う考えが友哉の脳裏に横切る。
しかし、謙也はこの状況を耐えている。
証拠に涙が出ていない。
「(謙也…平気なのか?)」
(平気じゃない…けど、ここで泣いたら負けや。)
「(お前、強いな。)ガァッ!?」
(友哉っ!?)
いきなり強い衝撃が襲う。
友哉が前を向いてみるとボールを打っていたのはレギュラーメンバー。
さっきまでのボールの重みの比ではない。砲丸を腹部に食らったような衝撃だ。
意識が朦朧としてきた。
目の前がかすむ。
ここまで一方的に攻撃を受けるのは生まれて初めてかもしれない。
[ 8/97 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
mark