(嫉妬と自己嫌悪)


目を覚ましたら時計が示す時間はもうお昼前になっていた。
少し寝すぎたと、なかなか思考回路が動かない頭で思いつつも体が動かない。
そろそろ顔を洗おうとその場を立とうとして自分がベッドで寝ていなかったことに気づいた。
振り返ればベッドを背もたれにして眠っているてっちゃんがいた。
あ、そうか。
昨日髪を乾かしてもらっているときにそのまま寝ちゃったんだ。
いつもと違う体勢で寝ていたからなのか、てっちゃんのいつもの寝癖が付いていない。
何だか少し新鮮だ。

てっちゃんを起こさないようにうまく布団からすり抜けて洗面所で顔を洗った。
そこで洗濯するのをすっかり忘れていたと少し焦ったが、最後にお風呂に入った研磨が回してくれたみたいで安心した。
目がすっきりと覚めたところでキッチンに移動して朝昼兼用のご飯を作っていく。ん

珍しく遅くまで寝ているてっちゃんと、いつも通りソファーに丸まって寝ている研磨に笑みを浮かべてから窓の外にふと目をやると、折角の2人のオフは生憎の悪天候だった。

『(これじゃどこにも行けないな…)』
「…なまえ」
『あ、起きた?』
「うん…」
『おはよう、研磨』
「おはよう…。お腹空いた…」
『今から作るよ。顔洗ってきたら?』
「そうする…」

のそのそと洗面所へ歩いて行った研磨を横目に、冷蔵庫の中にあるものを確認して適当に何種類かのおかずを作っていった。
ご飯ができるまで相変わらずソファーでゲームをしていた研磨を呼んで配膳してもらった。
さてと…。

『てっちゃんがここまで寝てるって珍しいな…』
「たぶん、ちゃんと寝れてないんだと思う…」
『どうして?』
「えっと…。男の事情って奴かな…。わかんないけど」
『そっか。てっちゃん!起きて!』
「……ん」

私の声にてっちゃんが少し身じろいでゆっくりと目を開けた。
さすが昔から寝起きだけはいい。

「……あれ…」
『もうお昼だよ』
「え…。まじかよ…寝すぎた…」

ゆっくりと立ち上がって後頭部をぼりぼりと掻く。
彼自身もこんな時間まで寝ていたことに驚いていた。

『ご飯できてるから顔洗ってくれば?』
「そうする」

顔を洗って戻ってきたてっちゃんがいつもの特定席に座ってからお昼ご飯を食べた。
このときはすっかり油断していた。
お化け屋敷とかホラー映画とかなんでも大丈夫な私の唯一の天敵が迫ってきていることに…。

先ほどから激しく振っている雨が目に入って、これはやばいと感じた。
"やつ"が現れる前に研磨のところに…。
と、思ったが時既に遅しとはこのことだと思った。
窓の外からピカッと"何か"が光り次の瞬間、お腹に響くほどの大きな雷鳴が鳴り響いた。

『っ!!!』
「あ…」
「おいなまえ。そこで固まるな」

暢気に声を漏らした研磨と雷の音に固まった私を呆れたように見るてっちゃん。
一目散に私はソファーに寝転がっている研磨の元に駆け寄った。

『無理無理無理無理…』
「ちょっと怖いから呪文みたいに呟かないでよ」
「いい加減に克服しろよなぁ…」
『絶対に無理っ!というかこれはてっちゃんのせいだから!』
「俺なんかしたか?」
「確か雷が鳴るごとにクロが頭の上に落ちてくるとかいろいろ言ってたからでしょ」
「そんなこと言ってたか?」
「うん。たぶんその恐怖が染み付いてるんじゃない?だから雷のときだけクロの所じゃないんだよ」
「つーか、それいつの話だよ…」

研磨に抱きつくようななまえに何となくイラッと来るのはなんだろうか…。
いつもは自分の方に寄ってくるのにこういうときだけ研磨だからなぁ。

「クロ…?」
「いや、なんでもねぇ…」
「…そう」

自分のこの感情が何なのか分かっているからこそ自分自身に腹が立つ。
自分を応援してくれている研磨に嫉妬しても意味無いことは明確なのに…。
無償にむしゃくしゃして頭を雑に掻いた

(てっちゃん、どうしたの?)
(自己嫌悪中だから放っておいていいよ)
(うん?)


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