(君の隣に)


髪を乾かすことは今回のことだけではない。
面倒くさがりのなまえは風呂から上がった後、タオルである程度拭いた後は肩にタオルをかけて自然に乾くのを待っているぐらいだ。
だからせめて、俺がいるときぐらいはちゃんとドライヤーで乾かせてやろうと思った結果の行動だ。

いつかこうなるとは思っていたが、まさかこれが今日だとは思ってもいなかったし予想もしていなかった。
何がというと元凶は今自分の膝の間ですやすやと気持ちよさそうに寝ている年下の幼なじみだ。
そして助け舟を研磨に出したが、なまえを起こすのがかわいそうだと言ってなかなか協力してくれず挙句の果てにはイヤホンを耳に突っ込んでゲームをし始めた。

お前…さっきまで眠たそうな顔してただろう。
なんていうことを言っても研磨には俺の声は聞こえない。

別にこのままの状態で寝れるものなら部活の練習で疲れているため寝たい。
しかし、俺だってれっきとした思春期真っ只中の男子高校生だ。
いくら小さい頃から一緒にいる幼なじみかと言っても何も思わないなんてことはない。
加えて長年隠してきたとはいえ、想いを抱いている相手が無防備に目の前で寝ているのは拷問以外何でもなのではないか…。
いまの状況を喜ぶべきなのか悲しむべきなのか…。
大きく息を吸ってため息を吐いた。

「はぁ…」
「…クロ」
「!?何だよ。ゲームしてたんじゃなかったのか」
「さっき終わった。…クロさ」
「何だよ?」
「今日寝不足決定だよね」
「そう思うなら助けてくれ」
「やだ。絶対になまえ起きる」
「はぁ…。最悪起こすしかねぇな…」
「起こすの…?」
「…本当になまえのことになったら強いな、オマエ」
「そんなことない。でもなまえのことは好きだよ」
「はぁっ!?」
「友達としてね」
「お、まえなぁ…」
「クロ面白いね」
「面白くねぇよ」
「俺は応援してるから」
「…おうよ」

好きになったときからきっと自分のこの恋は長期戦になると思っていた。
幼なじみとしての信頼を全て捨ててまで想いを告げようと思ったことはない。
自分のこの気持ちを伝えることで関係が崩れるぐらいなら胸に秘めておこうと思ったのはいつだっただろうか…。

「俺はなまえの中でもクロは特別な存在だと思うよ」
「…そうだったらいいけどな」
「そうでしょ。だってなまえは俺の膝の上とかでは絶対に寝ないよ」
「たまたまだろ」
「眠たくて頭が揺れてるときも絶対に寝ない」
「………」
「少しは自信持っていいと思うけど…」
「持てねぇよ…」
「変なところで弱気だよね、クロって」
「だろうな」

ずっと隣にいたなまえが自分のこの想いを知って隣から姿を消したらと思うと怖くて仕方ない。
どうしても手放したくない。
なまえや研磨のことに関してはどうしても臆病になる。

「で、どうするの?起こすの?」
「…いや、このままでいい」
「じゃあこれ」

ベッドの上に置かれていた布団を研磨が引きずって持ってきた。
俺となまえを包み込むように布団をかけてくれた研磨にお礼を言うと満更でもない顔をして研磨は部屋の電気を消した後、お気に入りのソファーに一緒に持ってきたのであろう研磨用の掛け布団に丸まった。

「おやすみ、クロ」
「あぁ。おやすみ、研磨」

しばらくしてすぐに研磨の寝息が聞こえてきた。
相変わらず寝入るのは早いことだ。
暗くなると先ほど以上になまえの体温を感じた。
なんだかんだで疲れた体となまえの温かいさに段々に睡魔が襲ってきたのでそれに抗うことなく瞳を閉じた。

((隣にいれるだけでいいなんて、甘いのだろうか…))


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