("友達")


「これ渡してほしいんだけど…」
『自分で渡せないぐらいなら付き合う資格よりむしろ告白する資格もない』
「でもよ…!」
『私は協力しない。そんなことで呼ばないでくれる?時間の無駄。じゃあね』

高校に入ってから回数が増えた呼び出し。
それは私に用があるわけではなく、双子の姉の双子姉に用がある人のほうが多い。
大体が手紙を渡してほしい。
そんな感じだ。
呼び出されていた階段の踊り場から、下の階に向かって歩いた。
向かったすぐそこには見慣れた蜂蜜色の頭をした彼。

『…聞いてたの』
「盗み聞きしたわけじゃねーよ。聞こえた」
『はいはい』
「…お前さ」
『んー?』
「実は姉のこと好きでも嫌いでもないだろ」
『………』

私の後ろをついてくるように歩いている宮地くん。
そんな宮地くんの言葉に目を見開いて、後ろに振り向いた。

「図星か」
『なんで…』
「オレも双子じゃねーけど1個上の兄がいてよ」
『知ってる』
「結構比べられるんだよ。あまりいい気はしねーしな」
『あぁ…。なるほどね…』
「お前だってそうだろ?」
『まぁねー。慣れたけど』
「だから断ったんだろ。さっきの」
『それもあるけど、さっき言ったこともあながち嘘じゃない。好きなら好きって本人に自分で言わなきゃ意味ないでしょ』
「男前だな」
『それ言われて嬉しい女子いると思う?』
「さぁな」
『宮地くんだってそう思わない?』
「どうだろな。まぁ直接言った方が気持ちは伝わるけどな」
『本当に好きなら自分から言えるでしょ。それを他人任せにするぐらいならそれほどの気持ちってね』
「お前のそういうとこオレは好きだわ」
『うわ、あの宮地くんがデレた…』
「てめぇな…!」
『デレたよ。あの宮地くんが…』

笑いにこらえられずに吹き出してしまう。
そんな私の頭を大きな手で鷲掴みをする宮地くん。

「お前な。それ照れ隠しだろ」
『っ…!』
「ほら見ろ。オレの勝ち」

図星を突かれ、顔に熱が篭っていく。
宮地くんはやってやったという顔。
顔が整っている彼のその表情はなんともキラキラと輝いていた。
不覚にも胸がときめいてしまった。

『〜っ。調子に乗らないでよっ!』
「痛っ…!」

隣に立っている宮地くんの横腹に肘をさした。
案外クリーンヒットしたみたいだ。
ちっちゃいやつ舐めんなよ…!
しかし、さすが男子バスケ部のレギュラーだ。
復活が早い。

「なんだよ、おまえ…」
『別に。いつものお返し』
「不覚すぎるっつーの」
『宮地くんだって人のこと言えないでしょ!』
「オレはいいんだよ」
『意味わかんない』
「お前って絶対に鈍感だよな」
『へ?』
「なんでもねーよ。早く行くぞ。練習始まる」
『え、もうそんな時間?!準備してないし…!』
「だから、呼びに来たんだよ」
『あ、そうだったんだ』
「行くぞ」
『うん』

先に行ってしまった蜂蜜色をした頭。
階段を降りる度にふわふわと揺れる少し長めで柔らかそうな髪の毛。
思わず手を伸ばして触れたくなる。
 

((宮地くんは"友達"なのに…))
((いつになったら"友達"を卒業できるんだろうな…))


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