02
オルタ視点。
時は暫く遡って…
「名前さんーーーっ!!!!」
「しまっーーーーっ」
マシュの悲鳴に近い叫び声と、尻餅を付き呆然とするグダ男、そして崖の下へと落ちて行く名前と一瞬目が合って動揺した自分が居た。
あいつ、あの一瞬笑ってやがった…
チッと短く舌打ちをして、俺の周りをちょこまかと動き回る鬱陶しいワイバーン - ハエ - へとゲイボルクを突き立てる。
「名前さん!名前さん!!名前さぁぁーーん!!ダメです、見失いました!目視出来ません!!」
『ダメだ!こちらも通信してるけど、全然応答が無い!!』
ーーー煩い
【名前さん…自分の所為で…】
『グダ男くん、反省するのは良いことだが、それをするのは今じゃ無いよ?今は目の前の敵に集中してくれ!』
「そうです!先輩!!名前さんを助けたい気持ちは分かりますが、今は目の前の敵を片付けてからじゃ無いと救出出来ません!!」
【了解…っ】
煩い…
『よし、それじゃあ気を取り直して…って!オルタが凄い形相してるぞ?!まさか、名前ちゃんが落下しちゃったから…?』
「ーーー黙れ…」
『ヒィッ?!画面越しでも物凄い威圧感がぁ!?』
「オルタさん!気持ちは分かりますが落ち着いて!!?」
【そ、そうです!今は敵をーーー】
「煩い、黙れ、俺は冷静だ。テメェらこそピーピー騒いでねぇで、そこを退きやがれ…」
「そこって…?」
【…名前さんが落ちて行った崖下の事?】
『ま、待ってくれオルタ!今此処での単独行動は危険だ!!先ずは敵の殲滅をーーー!!』
「ーーー黙れ」
『ヒッ!?』
「危険なのはあいつも同じだろうが…此処はテメェらに任せるっつてんだ、大人しく言う事聞きやがれ」
「し、しかしーーっ!?」
【……マシュ、ドクター】
「…先輩?」
両手を強く握ったグダ男が二人に静止の声をかける。
それに不安そうな顔をするマシュ、きっと彼女は気付いているのだ。彼が言わんとしている事を…
【行かせてあげよう】
「先輩!!」
『グダ男くん!!』
【だって、だって彼は名前さんのサーヴァントだから、だからきっと表情には出てないけど名前さんの事一番心配してると思うんだ…っ!!】
「先輩…」
【オルタ、絶対に名前さんを助けてあげて】
「…クッ、分かってるじゃねぇか坊主」
【名前さんの事、任せたよ?】
「言われなくとも…」
坊主が握った拳を俺へと突き付ける。
それに返すつもりはねぇが、気持ちだけは受け取っておいてやるよ…。
そして、
『ま、待ってくれ!それは余りにもーーーっ』
飛んで来た反対の声を静かに、そして冷静に【ドクター】と遮った。
その顔は、既に答えを出した顔をして居る。
『グダ男くん…』
【何かあったら責任は自分が取ります!だから、オルタを行かせて下さい!!】
「ドクター、私からもお願いします!!」
『グダ男くん、マシュ…あーーっもうっ!』
頭を下げたグダ男とデミサーヴァント、それに対して、俺のひと睨み程度で慌てふためき半べそをかいて居た様な奴が盛大な溜息と少しの文句を呟いた後、ひとつ咳払いして、真面目な顔をする。
……ほお、テメェそんな顔も出来るんじゃねぇか…
ドクターとやらの変わり様や目付きの鋭さが何処と無く愉快で、我知らず喉の奥で笑いが溢れていた。
『クー・フーリン オルタ、カルデア機関臨時所長の名において、単独行動を許可するっ!目的はーーー』
「御託は良いからサッサとしろ」
『〜〜〜っ、も、目的は名前ちゃんの救出!それ以上でもそれ以下でも無い!!人命優先!二人とも無事に帰ってくる事!!以上!』
「オルタさん、お気を付けて…っ此方も片付き次第必ずそちらの応援に向かいますから!」
【オルタ、行ってらっしゃい…っ!】
「ーーー、ああ、行ってくる…っ」
グダ男達へと不敵に笑って、彼は彼女の落ちて行った崖下へと消えていった。
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