擦鳴+暗憔フルメンバー

 
中忍試験、最終試験。
ハラハラと白い羽が会場全体に舞い始めた。

「幻術か」

冷静に幻術返しの術を発動したのち、現れた5人の部下。
周りを見渡せば幻術返しの出来ない一般客たちが次々と眠りに落ちていく。

「「御命令を」」

片膝を付いた奴らが、俺の背後にいた。
姿を見なくとも分かる。

「20分、くれてやる。
戒俚と翔赫は此処にいる雑魚を狩れ生死は問わない好きに暴れてこい。顔は判別出来る程度に残しておけよ。其れと、あの瓢箪持った奴ら砂は生かしておけ。
神楽、お前は怪我人の処理、凉蘿と呀狼は外の応援に回って指揮を取りつつ蹴散らしてこい」

「「御意っ」」

サッと散っていった部下を見送り、状況を眺めていた。
暗憔部隊フルメンバーの、表舞台での華麗なるデビュー戦だ。
思い切り暴れて見せつけてやれ。
暗憔部隊と言うNo.1の実力を、他の奴らに思い知らせてやれ。

「な、鳴門…?」

「どうして…アンタ…」

「…此の臭いっ…」

「鹿丸がいないんだ!桜も佐助も!」

「…雛多もいないな」

「螺子もよ」

周りにいた下忍たちが、驚き戸惑っていた。
其れも仕方ない。

今までの俺はドベでありバカばっかりしてる意外性No.1。
其れがいきなり暗部を従え指示を出したんだ。
普通に驚くよな。

でも、今は其れ所じゃない。

「お前ら、今は危ないから伏せてろ。
敵が気付いて殺しにくるぞ」

「ガ、ァ…!!」

ほら言わんこっちゃねぇ。
俺に駆け寄ってきた下忍たちの背後から敵が1匹。
出していた触手で其奴の心臓を貫いた。

「分かったなら伏せてろ」

「「っ…」」

下忍たちが隠れるのを確認して、俺はまた会場を見渡す。

ーキンッ、キキンッ

蛇野郎が砂と結託し、木の葉を潰しにかかると言う噂は耳にしていた。
だからこうして中忍試験に俺の部下、暗憔部隊と信頼出来る部隊を配置させていたんだ。

何が起こっても対処出来るように。

ーサッ…

「ご報告します。一般人及び大名たちの安全を確保、怪我人死者共にありません」

「ご苦労。引き続き逃げ遅れがないか探索を続けろ。怪我人は早急に前線から外れて神楽の所に連れていけ。
其れから、無様な死に方だけはするなと、他の部隊長たちに伝えておけ」

「承知!」

姿を消した部下と代わるように、案山子がやってきた。

「な、鳴門…?今の、暗部だよね…?
どうして、鳴門が指示出来…」

「…其の話は後だ。案山子はガイと一緒に下忍たちを頼んだ」

戸惑いつつ、案山子は頷いた。
納得はしてないだろうけど、今はそんな場合じゃないのは奴だって理解してる筈だ。
下忍たちを守るのが担任上忍の務め。

「(総隊長、瓢箪が逃げたが追うか?)」

「(分身に行かせるから問題はない。其れに九離魔も付ける)」

「(了解)」

尾獣VS人柱力か…。
中々面白そうだが、仕方ない。
俺はこっちに集中しなければいけないから。

「…」

しかし、たかが2つの国如きで木の葉潰しとは、舐められたもんだな。

「ぐあっ」

「雑魚が」

細く尖ったモノへ姿を変えて、敵の喉元へ突き刺し、息がなくなった其れを下へ落とす。

クナイ、刀、手裏剣の交戦する金属音。
激しく鳴り響いていたのも、途切れ途切れに聞こえてくる事から、敵の数が減ってきていると判断出来る。

「そろそろだな、時間の問題か」

後は彼奴らの帰りを待つだけ。

「ご報告します」

「どうした」

「三代目火影さまが、ただ今物見櫓にて戦闘中です」

「相手は?」

「大蛇丸に御座います。奇怪な術を使い、初代目さまと二代目さまを呼び出した模様。
周りには結界か張られており、中に入れず苦戦を強いられてますが如何なさいますか?」

「爺は老いぼれでも一応火影だ、早々死にはしないだろ。
頃合いを見て、俺が行く。
其れまで雑魚を狩りまくれ」

「はっ」

チラリとそちらに目を向けると、紫色の結界が空高く聳え立っていた。

初代目と二代目、ねぇ。
死者を呼び出して何になる。
其れを使わなきゃ爺1人殺せないないのか?
落ちぶれたもんだな、あの蛇野郎も。

ーサササッ

「「ただ今戻りました」」

「状況は」

「壊滅状態です」

「死体は別の場所に保管してる」

「凉蘿さまは神楽の所に行きました」

「分かった。さて、頑固爺の所へ行くぞ」

「「御意」」

死ぬつもり満々のあの老いぼれを、誰が死なせてやるもんか。

「…」

あの爺…死んだ後誰があの書類の山を片付けると思ってんだ。
暗部の任務も増えてきて、遊べずあの書類を俺に押し付けようと思ってんのか?
此の俺に?ふざけんなよクソ爺が。
爺は爺らしく前線なんか出ずにコツコツとディスクワークでもしてろってんだ。

俺はまだ火影なんかにゃならねぇからな。

「怒ってるな、完全に」

「三代目も哀れな…」

「どうか、死なない程度に」

部下のそんな言葉を軽く聞き流し、俺たちは物見櫓までやってきた。

「…四紫円陣か」

蛇野郎の部下4人が内側から結界を守っていた。

「翔赫」

「何でしょうか」

「此の程度の結界くらい、破れるだろ?」

「お任せ下さい」

翔赫は角にいる1人の目の前まで移動した。
そして、印を結ぶ。

すると、翔赫の右手に纏う黒い炎のようなモノ。

へぇ。新しい術か。
感心しつつ、見ていると、翔赫は其の右手を結界へ。

ーパリィンっ

「「Σなっ!?」」

此の四紫円陣は触れた瞬間、炎に包まれる。

翔赫のあの黒い炎が其れを防いでいるのか。
影、だから、か?

「まだ驚くのは早いぜ?」

結界の中へ貫通した右手の黒い其れが、一瞬にして無数の棘の如く伸び尖った。

「…カ、ハッ…!」

蛇野郎の部下の1人が、全身其れで穴を開けられ、死亡。

4人で作り上げていた結界が、みるみるうちに消えてなくなる。

「上出来だな」

「影真似の応用版か」

「やるじゃないか翔赫」

形状変化を元の炎に戻すと、串刺しになった奴らはバタリと地面へと倒れる。

「さて、どうするかな」

ゆっくりと歩み寄る俺たちの前に、結界を張っていた蛇野郎の部下が立ちふさがる。

「およし!」

「「Σっ」」

爺と交戦していた蛇野郎が、俺の前に現れた。
其の前に…

「爺のクセに出しゃばるからこうゆう結果を招くんだろうが、阿呆」

「…鳴門」

誰が勝手に死ねっつった?あ?
師弟関係だか何だか知らねぇが、少しは残された奴らのことを考えろっての。
俺だけじゃない、木の葉の里の奴らは、アンタを大切な存在として見てるんだ。

「前にも言ったろ?老衰しか認めねぇって」

印を結び、術を発動させた。

「「っ…」」

結界に閉じ込めただけだけど。
其れでも、今はよしとしよう。

身動き出来ない初代目と二代目を横目に、蛇野郎は顔を歪めた。

「…とんだ脅威を隠していたとわね。猿飛先生」

「何が脅威じゃ。鳴門は里の為に力を付けたにすぎん」

テメェの為だろうが。
テメェが弱いから。

「で、どうする?俺と殺る?大蛇丸」

「分が悪いわね…一端退くわよ!」

部下を引き連れ、蛇野郎は去っていった。
其れを追おうとした翔赫を止める。

「また、会う時があるさ。其の時にでも」

殺せば、何ら問題はない。

「今は里の方が大事だろ」

神楽の所に部下を向かわせ、残った俺と爺。
其れと結界の中にいる初代目と二代目。

「すまぬ、猿飛…」

「猿飛、世話をかけたな…」

「初代目さま、二代目さま…」

「其処の小僧か、此の結界をやったのは」

「…嗚呼」

「よく出来てる結界だな」

「ビクともせん」

コンコン、と中から結界を叩く二代目。

「…此のような形で…っ!」

「サル、泣くな」

「年寄りの涙など、誰が見たいと思う」

「残念ですっ」

「小僧」

「?」

「出来るか?」

「…」

チラリと爺を見ると、ゆっくりと頷いた。

「御兄弟、ゆっくりとお眠り下され」

「嗚呼」

「元気でな」

印を結び、2人の火影を元に戻した。
ズザザザザ、大量の紙中から音の忍の亡骸が姿を現した。

「生きた人間を生贄にする禁術か」

掌を上に向け、ボッと着火した蒼い炎を其奴らに投げやった。

「爺、事が終わり次第、五代目を決めておけよ。世代交代だ、大人しくディスクワークのみちびちびやってな」

「…お主には、敵わぬな」

爺を神楽の所へと連れて行こう。

「すまぬの、鳴門…」

「謝るくらいなら大人しく身を引いてればいいもんを」

「…」

本当、老いぼれも頑固すぎると手に負えないっての…。






死者34名、怪我人320名。
観客、大名に死者や怪我人ゼロ。
まぁまぁだな。

「此れだけに抑えられただけでもよしとするか。
各部隊長はいるか」

「「はっ」」

サッと俺の前に現れた13人の暗部。

「第1部隊は一般客と大名どもに状況説明をしてこい。煽ったり殺気立ったりするなよ。
第2部隊は第3と…」

「「鳴門!!」」

後ろを振り返ると、下忍と上忍が勢揃い。

「…忙しいから後にしてくれ」

此奴らの要件なんて分かってる。

「時間がある時なら、質問でも何でもゆっくり聞いてやるから」

取り敢えず今の優先順位は里の事が第一。
怪我人の手当ても、まだ時間がかかりそうだし。

「すみません、お手をお貸し下さい」

「嗚呼、今行く」

壊れた残骸を取り除き、新しく木遁で建て直し、相談役たちへの報告、などどう頑張っても1日とかかってしまった。

神楽と凉蘿は医療班と怪我人の面倒、戒俚と翔赫と呀狼は動ける人間と残骸撤去に回り。
怪我人320人は殆どが忍で、今残ってるのは俺たち暗憔部隊メンバーとほか暗部部隊。
下忍と上忍数名。
一般人の男どもには復旧作業をしてもらい、女子供には食事全般を任せていた。

復旧作業での監督兼見回りをしていた俺の所に、1人の部下がやってきた。

「蒼翠さま」

「何だ」

「三代目火影さまがお呼びで御座います。
暗憔部隊のメンバー全員も既にお待ちになっておられます」

「分かった」

呼び出しの理由なんて、考えなくても分かる。
きっと彼奴らだ。
 

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