擦鳴+九尾+佐助
俺は、見てはいけないモノを見た気がした。
ある日俺は微かに聞こえた金属音に、小首を傾げた。
里の中心部から少し離れた所で、聞こえた音は人気のなさそうな林の中からで…。
「…」
好奇心に駆られた。
其の音が一体何なのか。
其れは次第に激しくなっていく。
金属と金属がぶつかる音、何かが落ちる音、そして…
「ぐ、ぁ…!」
人の声…。
其処は、戦場だった。
無数に横たわる何か、黒い服の集団に囲まれた一際目立つ金色…。
「っ…」
金色の長い髪に蒼い瞳。
其奴は不適に笑いながら次々と敵であろう奴らを倒していく。
あんなに激しかった戦場だったのに、何時の間にか物音1つしなくなった。
一滴すら服に返り血のシミさえ付いていなかった。
人は彼処まで強くなれるのか…?
俺は?
俺は、強くなれるのだろうか…。
アカデミーの中でも軍を抜いて俺は優秀らしいが、あんな戦い見た後じゃ、自信なんて削がれてしまうくらいに圧倒的な力を見せつけられた気がした。
「…あれぇ?佐助、何してんのー?」
「Σっ!?」
元戦場だった場所には不釣り合いの明るい声。
其の声は戦いまが行われていた場所から聞こえた…。
目を向けると、其処には自分のよく知る子供がいた。
「…な、鳴門…?」
「やっぱり佐助か、其処にいたのは」
何故だ…?
何故、お前が其処にいる?
今まで敵を倒してたのは、一体、誰だったんだ…。
ゆっくりと近付いてくる鳴門。
俺は、身動き1つ出来なかった。
「佐助」
「…」
「今見た事は、忘れろ」
奴の顔が、別の顔になっていたから。
「俺はドベ、お前は優秀…。言ってみ?」
「鳴門、はドベ…お、れは、優秀…」
俺の頭の中で繰り返される其れ。
鳴門はドベで、俺は優秀…。
鳴門はドベで、俺は優秀…。
鳴門はドベで、俺は優秀…。
鳴門はドベで、俺は優秀…。
「…そう、其れでいい」
いいのか?其れで。
「ち、」
「あれ?」
俺は今、其れを…
「ちが…」
否定したばっかじゃねぇか…。
「あらまぁ…」
「俺は、優秀なんかじゃ…ない…」
「(余程今のが残ってんだなぁ…。どーしよーかなぁ…)」
頭にある、金色…。
あれは、鳴門なのか?
いきなり、パチンと指が鳴り俺は、我に返る。
「初めてだよ、暗示が聞かなかったの」
「…」
「どうしたい?」
「どう…」
俺は今、何を望んでる?
あの金色の人みたいに、鳴門みたいに…
「強く、なりたい…」
「九離魔、出てこーい」
『やはりと言うか何と言うか…』
目の前に現れた白髪の大人。
180cmはあるだろう其の大きな体に、少し恐怖を覚えた。
『鳴門、お前少しは自分て育てると言う選択肢はないのか…?』
「俺は忙しいんだよ。お前暇だろ?」
『勝手に人を暇人扱いするでない!』
「甘味巡りなんて忙しいうちに入りません」
『わ、儂の中では入ります…!』
「此奴元々は素質あるから」
『…バッサリ切られたの儂…』
「螺子らへんまでよろしくー」
『む…言い逃げとは…!』
手を振って鳴門は去っていった。
何が何だか分からない。
どうゆう事だ。
何が、どうなってる…。
『…はぁ。よかったの小僧』
「?」
『鳴門はお主を受け入れておる』
受け入れるって…何だ。
『彼奴は変わったの…前までは儂以外、傍におらんかったのに…今じゃ賑やかになりつつある』
此の白髪の大人は何を言ってるんだ。
鳴門の傍に、誰もいなかった?
其れはない。
アカデミーでは、奈良と犬塚と秋道と一緒に悪さしてるじゃないか…。
『小僧、陽の下で見るモノ全てが事実と思うな。誰もが見せておらぬ所もあるであろう?』
アカデミーで見てる鳴門は、たった一部にしか過ぎない?
其れとも、今の鳴門がホンモノで、アカデミーのはニセモノとでも?
『取り敢えず、修行するか』
「え、急…」
『今まで一番最速で鳴門に近付いたのは、奈良の小僧だぞ』
鳴門に近付いた…。
「…する。今からでいい」
『では、此処でよいか』
俺は其れを越せるだろうか…。
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