擦鳴+螺子
1人のんびり甘味を満腹に平らげた儂は木の葉の外に出ていた。
鳴門の近くには奈良の小僧もいるから、大丈夫だと思って。
ーサ、サ、サッ
『…ん?』
数人の男が、通り過ぎる。
誰かを背負って。
『…此の匂い…』
日向の小娘の匂いがした。
『…やれやれじゃの』
人間たちに追い付くなど、容易い事だった。
目の前に現れた儂を、人間どもは警戒し、構える。
『其の小僧を何処に連れてく気か』
「誰だ貴様…」
「見られたからには生きては返さない」
「1人で我らに敵うとでも?」
「目撃者は作らない主義なんだ」
『…ほぅ、随分と威勢のいい人間だの』
ゆらゆらと滲み出るチャクラが、貴様らに分かるか?
俗に言う禍々しい、と言うであろう?
『…久々、人間でも食らうか。儂は悪くないからの、手助けじゃ、此れは』
『…うむ、やはり美味じゃわい』
口から垂れた赤いモノを指で掬い、舐めとる。
横たわる小僧に目を向け、体を揺さぶった。
『おい、小僧。起きろ』
「…ん…?」
目を開けた小僧からはやはり小娘の匂いがした。
『小僧、日向の人間だな』
「…俺は一体…っ、奴らは何処、ぅ…!」
頭を押さえて、顔を歪めた小僧を抱き上げた。
『さっきの人間なら儂が食ったから心配するでない。兎に角、里へ戻るぞ』
「食っ…??」
『喋るな。頭に響く』
小僧を抱えた侭、儂はある場所へ向かった。
だって、其処しか思いつかなかった。
そもそも、儂悪くない。
其れに顔知られてないし、不審者など言われとぅもない。
『…』
「雛、多さま…?」
「九離魔、どうゆうつもりだ…」
『お、怒るでない!儂は此の小僧を助けたにすぎん!』
だから、鳴門の所に行くしか儂の中では其れしかなかったのだ。
「螺子兄さん…助けたって…」
「何処の奴らだ」
『…んー…』
何処だったかの…。
「九離魔…」
『…忘れた』
にっこりと笑った顔から、ドス黒いモノが見えておるのは儂だけか?
鳴門が、怒っておる…。
「お前、食っただろ」
『…』
「額当ても見ずに、自分の腹満たして?
助けたからって怒られないとでも思ってたのか?ん?」
『ごめんなさい!此の通り!許して!!』
「罰として、此奴を育てろ」
指指したのはさっき儂が助けた小僧。
「返事は?」
『承知、した…』
見られたからの。
ま、儂が連れてきたのがそもそもの理由で、当然だと言えば当然。
『小僧、取り敢えず行くか』
「えっと、雛多さま!?」
「螺子兄さん、頑張って!」
儂も随分と人間に慣れたものじゃの。
鳴門は別だが、奈良の小僧、日向の小娘。
そして
『儂は九離魔じゃ。師匠と呼べ』
「…はぁ」
『一応、話してはおくが、誰にも口を漏らすでないぞ。
もし漏らすような事があれば、其の時は儂がお前を食ってやるからの』
鳴門と小僧と小娘。
其の話をした途端、小僧の目つきが変わった。
此奴、鳴門と小僧の事はどうでもいいのか…。
『小娘と同じ位置に向かうか』
「雛多さまは、今どの…」
『暗憔部隊、と言う暗部に所属しておる』
「…暗部…さっきの2人は?」
漸く向けた興味に、儂はニヤリと笑った。
『金色の子は、一番上に立っておるぞ。
あの黒髪は其の隣にいる』
「…」
『1年我慢せぇ。儂が連れて行ってやる』
鳴門と同じ景色を見せてやる。
小僧と同じ空気を吸わせてやる。
小娘と同じ緊張を味合わせてやる。
『では、覚悟はよいか?』
「…何時でも!」
チャクラ増幅、コントロール、速さ、対処、医療。
全てを叩き込む。
鳴門は男には厳しいからの。
彼奴が認めるくらい、力を付けさせようぞ。
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