擦鳴+雛多

 
時々見せる、アナタの別の顔。

其れはふとした時に垣間見える其の顔に、私の心が揺さぶられる。

何時ものアナタも素敵だけど

別の顔の時もアナタは変わらず素敵。

どんなアナタだろうと、私の心は変わらない。

私は鳴門くんが大好きだから。









「日向 雛多だな」

知らない大人に声をかけられた。
木の葉の人ではなさそうで、警戒して距離を取っていた。

「どなた、ですか…」

「…」

ニヤリ、と笑った其の顔を見て、危険だと思った。
其の侭背中を向けて全力で走った。
走って走って、もうすぐ其処に家がある。

「逃げるなんて、酷いなぁ」

一瞬にして目の前に現れた其の人に、捕まった。

「は、離して下さいっ!」

「大きな声を出すんじゃない」

「ん゙んーっ」

口を手で抑えられ、ジタバタしても力では到底敵わない。

私、此の侭どうなっちゃうんだろ…。
もう会えなくなるのかな…?

ーーーー鳴門、くん…!

「其の薄汚い手で、うちの里の人間を触らないでくれない?」

「Σ誰だ!?」

金色の長い髪、蒼い瞳。

現れた其の人は、大人で、格好よくて、でも何処となくあの人に似てる…。

「今助けてやるからな」

優しい言葉…。
嗚呼、やっぱり似てる…。

瞬間移動したみたいに、私は彼の腕に抱かれていた。
お姫様抱っこ、は少し恥ずかしかったけど、下から見上げた彼の顔は鳴門くんと見間違う程に。

「このガキっ!」

下に下ろされた私を、此の人は見えない壁に閉じ込める。

「少しじっとしてな。目、閉じてろよ」

「…は、い」

時々見せるあの顔だ。
冷たく、そして凛としてて…。

でも、私は目を開いた侭。
見逃してはいけないって思った。
だから、しっかり此の人を見つめていた。

「俺1人だけだと思うなよ…」

敵は1人だったのに、3人に増えた。
其れでも、此の人は余裕を見せている。

「仲間を呼んでも同じだって事が分からないんだな、アンタ」

嗚呼、何て凄いのだろう。
何人もの大人をものともしない其の強さ。
1つ1つに心を奪われる。

似てると思ったからか、其れとももう自分の中で決定打を出したからなのか。

もう、あの人にしか見えなかった。

「はぁ…弱すぎる」

「…」

「悪かったな」

「鳴門、くん…」

「…!」

驚いた顔で、私を見た。

嗚呼、やっぱり鳴門くんだ…。

どんな鳴門くんでも、私は否定しない。
全て受け入れて、其れで笑ってあげるの。
何時ものように、鳴門くんって。

「私も、そっちにいける、かな…?」

「…」

どんなに鳴門くんが強くても、あの何時もの鳴門くんが演技だとしても私は気にしない。
鳴門くんである事には変わりないもの。

そう、私が好きなのは鳴門くんだから。

「…来たい、のか?」

「い、行きたい…!」

「…はぁ」

こんな私でも、アナタのお役に立てる事は可能ですか…?
 

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