擦鳴+九尾+鹿丸
死の森、深部。
俺の本宅に、声が1つ増えた。
「ようこそ」
『大した小僧だの』
1年待っててやると言ったあの日から、今日で約1年。
正確には329日。
爺に鍛えてもらったとは聞いてたがまさか本当にやってのけるとは。
此処までの到着、何重にも張った結界を潜り抜け、高度なトラップも無傷ですり抜け、移動系幻術も見事突破。
鹿丸は今日、初めて本宅を訪れていた。
「で、どうするんだ」
「…俺はまだまだ力不足なのは理解してる」
「…」
力不足??
何言ってんの此奴。
「どんだけ向上心持ってんだよ…
あのさ、此処来るのに1年かかった、なんて思ってんじゃないだろうな?ん?」
「お、思ってるっつーの!」
「…馬鹿」
『間抜けーッグフ』
九尾の腹に肘鉄を食らわした後、俺は鹿丸にこう言った。
「俺は1年待っててやると言った。
其れは此処に辿り着けるくらい強くなれって意味だったんだ。分かるか?
此処に来るまでの術はどれも最高ランクに近いヤツばっかりだ」
『要は、もう少し自信を持てと言うておる』
此の死の森の中央の塔に行くのでも、中忍ですら無傷では難しい。
上忍も同じ事。
其れよりもはるかに難易度の高い術を無傷で辿り着ける鹿丸を、誰が認めないといった?
でも、まだ経験不足なのはある。
『此処も賑やかになってきたのー』
あ、いい事思い付いたかもー。
「何呑気な事言ってんの?九離魔」
『…』
「俺の隣に立たせたかったんだろ?此奴を」
『儂は予言したまでだ…』
「へえ、そう。予言だけ?あんな大口叩いといて、予言だけ?」
『(此のくそガキめっ!)』
「俺は厳しいぜ?」
『そんな事分かっておるわ!くそ、小僧!行くぞ!』
「え、あ、はい!」
認めてはいるんだ。
だから、早く此処にこい、鹿丸。
待っててやるからさ。
俺の隣、空けててやるから。
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