擦鳴+九尾+三代目
とある任務帰り、報告書を渡すべく鳴門は三代目のいる執務室へ足を運んでいた。
「彼奴は一緒ではないのか」
「九離魔の事?」
「そうじゃ」
三代目は九尾とは面識があった。
偶に暗部の任務へ連れて行く時とか、一緒に執務室へ足を運んだ事もある。
「彼奴と連絡を取れるのはお主だけだからの、もし今度会った時は此処へ来るよう伝えておいてはくれぬだろうか」
三代目は九離魔が九尾だと言う事は知らない。
もし伝えたとして、後が煩いたろうと鳴門は思っていたから。
時期が来れば伝えてもいいとは思うが、今は其の時期ではない。
「…分かった、伝えておくよ」
「うむ、頼むぞ」
もう少し、九離魔が三代目に信用されるなら話は早い。
今の状態で言えば、偶に鳴門の傍にいる奴としか認識がない。
鳴門も鳴門で教える気は更々ない。
三代目も其れを知っているからこそ何も聞かないのだ。
「(其れにしても、九離魔に何の用なんだろ)」
「ただ今」
『お、鳴門丁度いい所に!』
死の森の奥にある本宅へ戻ると、其処には何やら楽し気な九尾がいた。
「どうしたの」
『新発売してたのだ!』
テーブルの上にあるのは、木の葉の甘味処の器。
どうやらパフェのようだ。
フレークとバニラアイスとフルーツ、そして粒餡と生クリーム更に上から粉末状の抹茶をふりかけている。
『抹茶パフェじゃ!』
まんまじゃねーか。
「…我が儘言ったな」
『だって、鳴門おらぬではないか』
「爺の所に行ってたんだ」
『分かったからほら、食うぞ。何の為に4つも買ってきたと思うておる』
鳴門の前に1つ、九尾の前には3つ。
まぁ、分かっていた事だが九尾はよく食べる。
実体化した時にしか食事をしないからか、など鳴門は勝手に思っているのだが。
「サンキュー」
『んー、美味い』
「あ、そう言えば爺が九尾に話があるってさ」
『…儂にか?』
「話の内容は知らないけど、夜行ってみたら?」
『うむ』
『儂に何用か、三代目』
一応、暗部装束を身に付けて。
面は鳴門と同じ狐で、色が赤だった。
「そちとこうして2人きりで話すのは初めてじゃの、九尾」
『Σ…気付いておったか』
「あまり甘く見るでない。此れでも一応は火影じゃぞ。
どんなに消しても、お主のチャクラを忘れた事などありはせん」
静かに、其れでいて冷静な三代目。
其れを見て九尾は面を取った。
「どうやって出て来れた、などは言わずとも分かっておる。
鳴門の奴の仕業じゃろう」
『…』
「全く、あの馬鹿者め」
『そう言うな、鳴門も儂がこうして出て来るようになってからは楽しそうだしの』
「うむ、其れも理解しておる」
雰囲気が違う、そう三代目は言う。
前の鳴門はピリピリしていた。
其れは里からの視線諸々全てを1人で背負っていたからだ。
まだ3歳の小さな子だとしても、其れはあまりに負担が大きい。
子供たち同士で遊ぶにしろ、あの子を知る親は危険信号を発して子供を鳴門から離す。
其れが当たり前となっていた。
「あの子は何時も1人だったからの…」
『心配しておるなら何かしら策を練ればよいではないか。まぁ里の人間どもが素直に其れを聞くとは思えぬがな』
だから、鳴門は九尾の所にちょくちょくと通っていたのだ。
九尾は何処も逃げていかない。
其処に行けば、必ずいるから。
「鳴門に監視役が付いている事は知っておるな」
『あの煩いハエか』
「鳴門をよくは思っておらん」
『其れを言うなら里の人間全てではないのか?』
痛い所を突かれた三代目は押し黙る。
三代目がどんなに可愛がっても、里の人間たちは鳴門を九尾としか見ていない。
あの子は、里を救った。
九尾の器になってくれたのに。
「ワシは鳴門が幸せになれるなら、其れで構わん。其の為なら何だってしてみせよう」
『ほぅ…』
「だから九尾よ、お主に鳴門の監視役になって欲しいのじゃ」
『…其れはまたぶっ飛んだ話だの』
「暗部から選んでもまた鳴門に危害を加えるやもしれん。
だから、お主に表向き監視役としておってほしい」
何かあった場合にすぐ駆け付けられる。
何かあった場合にすぐ止めに入れる。
其れを見越しての三代目からの要望。
『…まぁ仕方ないの。鳴門には…』
「どちらでも構わん。伝えてもよし伝えぬのもよし」
三代目とて、鳴門は可愛い孫だ。
危ない橋はもちろんの事、危険な目にも遭ってはほしくない。
『(…鳴門の奴も、気付いておるかもしれぬが、此処は黙っておくか)
話は其れだけか?』
「嗚呼、其れだけじゃ」
『なら儂は帰る』
此れからあの子がどう成長しようが、九尾が傍にいる事には変わりないのだから。
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