強くなりたい

 
任務を終えて木の葉へと帰ってきた時は既に夜中だった。

鳴門たちと混じり、砂隠れの里から一緒に付いてきた我愛羅の姿。

中忍試験が始まるまでの短い間に、鳴門たちに修業を見てもらう為だ。

「鳴、早く帰ってメシにしようぜ?俺もう腹ペコ」

「パパも〜」

「僕も〜」

砂に着いた時から何かと動いていた鳴門たちは、お昼から何も口にしていなかったのだ。

「分かった分かった。で、我愛羅は家泊まるんだろ?」

「い、いいのか…?」

「いいよいいよ。宿泊まるより早いじゃん?」

「すまない…世話になる」

「あ、でもやる事はやってもらうからな?」

「何でも言ってくれ」

其の侭鳴門の家へと直行した。
真っ暗な道を急ぎ足で。



家へ付くと直ぐ、鳴門はキッチンへ立った。

「直ぐ用意する」

今日からまた1人、鳴門の家に我愛羅が加わった。

「ねぇねぇ我ぁくん!」

「が…我ぁくん…?」

「名前、我愛羅でしょ?」

首を傾げながらに言う聨に我愛羅は頷く。

だからと言って、何故我ぁくんなのか、と。

「我愛羅だから、我ぁくん!呼び名だよv」

どう返事したらいいのか分からない我愛羅の肩に鹿丸は、ポン、と手を置いた。

「気にすんな。何時もの事だ」

「そう、なのか…」

「ねぇねぇ!お風呂一緒に入ろうねv」

「ぇ、あ、嗚呼…」

「わーいv我ぁくんとお風呂ぉ!」

キャッキャッとはしゃぐ聨を見つめながら、

「彼奴、ああ見えて俺らと同い年だからな」

「煤H!…同い年…?」

我愛羅は思った。
世の中、色んな人がいるのだな…と。

「あ、我愛羅くん。取り敢えず明日は僕たちと一緒に行動ね?
お昼には任務終わるけど、1人でお留守番は寂しいからね」

「すまない…」

其の後、遅過ぎる夕飯が出来上がり、テーブルを囲いながら食べた。

「…美味い」

「だろ?鳴の手料理は世界一だからな」

「明日は我ぁくんの所の料理が食べたいな!」

「分かった。腕を振るおう」

「やったーv」

「楽しみにしてるよ」

食事を終えた後、片付けは湊に任せ鳴門たちは外へ出た。

「何処へ行くんだ…?」

「付いて来たら分かるって」

「とーっても楽しい事!」

楽しい事?と頭に疑問符を浮かべる我愛羅は、取り敢えず鳴門たちの後に続いた…。




「…どうしたんじゃ?今日は休んでもいいと言っておいた筈じゃが…」

執務室に現れた鳴門たちを見た三代目は、我愛羅の存在に気付いた。

「お主は、砂の…」

「夜分遅くにすまない」

此の言葉を聞いた三代目は、鳴門たちとは大違いじゃ、と心の中で呟いた。

「爺、適当でいいから任務ねぇか?」

「よいのか…?お主らは今日休みだと伝えた筈じゃが…」

「嗚呼、いいんだよ。取り敢えず5件な?」

「分かった」

今のやりとりを黙って見ていた我愛羅だったが、流石にこんな夜中に下忍の任務などありはしない、と理解した上でピンときたのだろう。

「…暗部だったのか?」

「そうだぜ」

「吃驚した?」

クスクスと笑っていて、どうやら聨が言っていた楽しい事、とは此れの事みたく…

「極秘だからな」

「んで、今日はお前にも手伝ってもらう」

「嗚呼」

我愛羅は何の躊躇もなく頷いた。

此れも強くなる為。

「此れに着替えろよ」

渡された暗部装束に腕を通す。

「後、体に纏ってる砂は剥ぐ事」

「何故だ?」

「我愛羅の場合、体に纏ってる砂はかなりチャックを消費するからな。長期戦になったら不利だ」

何事もチャクラを温存した態勢で。

人よりチャクラの量が多いと言っても、体の砂や絶対防御の砂にはかなりのチャクラを練り込んでいるのは見ても分かる。

「お前より強い敵だって世の中うじゃうじゃいる」

「其の為に素早い動きが出来るようにする為だ」

「分かった」

我愛羅は体を覆っていた砂を瓢箪の中へ戻した。

「よし、じゃあ行くか」

「御意」

「行こうv」

「宜しく頼む」

面を付けた4人は執務室を後にした。



「此処だな」

丘の上。
其の下には此処周辺を縄張りとしている盗賊たち。

「精々50其処らか」

「早く片付けそうですね」

「そうだな。我愛羅、50ぐらい簡単だろ?」

顔だけを動かして我愛羅を見る鳴門に、我愛羅は頷いた。

「大丈夫だ」

「僕たちの出番は…?」

「ない」

「えー?!」

「文句言うな。ほら、行くぞ」

鳴門を先頭に其の丘を下りた。

いきなり現れた鳴門たちに盗賊たちは武器を構えた。

「此処が何処だか知っててやってきたのか?ボーズ」

「……」

「悪い事は言わねぇ。さっさとお家に帰りな」

「我愛羅、一思いにやっちまいな」

「嗚呼」

話を全然聞いてない鳴門たちに怒りを覚えた奴らは、武器を握り絞める手に力を入れ、ギシギシと音をさせた。

「舐めてくれるな…野郎ども!1人残らず殺せっ!!」

「「オー!」」

向かってくる奴らを、

「砂漠柩…」

我愛羅は全員の動きを封じ込めた。

「な、何だコレっ!?」

「動きがっ…!」

「ゃ…やめろ!」

手を上にかざし、

「砂漠送葬!」

かざした手を力強く握り絞めると、50人あまり全員が殆ど同時に砂の間から血や肉片が飛び散った。

ビシャ…ポタ…ポタ…

ボト、ボトボトッ…

こちらへ飛んできたものは我愛羅が作っていた砂の壁でガードした。

「ま、50人ぐらい殺れねぇとな」

「後片付けは僕たちがするよ」

飛び散った肉片や血を、炎で消して、次へ向かった。



同じように、残り4件も我愛羅1人にさせ、鳴門は一部始終を眺めていた。

「決めた…」

ニヤリ、と笑い小さく呟いた言葉に、鹿丸や聨は悪夢を思い出した。

また、犠牲となる者が1人増える――と。



木の葉へと帰ってきた4人は執務室へ戻り、報告書を提出し終わると家へと帰宅途中。

「さて、修行しに行くぞ我愛羅!」

「今からか?」

「どうせ帰っても4時間しか寝れないなら修行してた方がいいだろ?」

鳴門の其の言葉に我愛羅は頷いた。

「頑張れよ」

「鳴くん厳しいから気を付けてね我ぁくん!」

「何言ってんだ。お前たちも一緒に来い」

「え〜…」

「…仕方ないな」

笑みを雫した鹿丸は、こうなる事だろうと理解した上での言葉。

「行くぞ我愛羅」

「嗚呼」

そして、4人は家とは方向の違う道を走り出した。



「此処は…」

着いた場所は木が1つもない、殺風景な所だった。
目の前に広がる広大な敷地に我愛羅はキョロキョロと辺りを見渡していた。

「此処なら思う存分走り回れる」

そう言って鳴門は印を結んだ。

「此処から街まで結界を張ったから思う存分ヤれるだろ?」

「先ず、何をするんだ?」

「我愛羅の絶対防御の弱点強化だ」

首を傾げる我愛羅。
鳴門が言った意味が分からなかったのだろう。

絶対防御なのに、弱点、と言う言葉が出てきた。

「我愛羅は砂で攻撃を防ぎ、尚且つ砂で攻撃する。
其処まではいいが、まだまだ其の防御する砂の動きが遅い…其れの強化だ」

「分かった」

「鹿丸、聨、お前らの出番だぜ」

「遠慮なく行くぜ」

「当てたらダメなんだよ?」

我愛羅の修行が始まった。
先ずは鹿丸と聨のスピードに慣れてもらわないと、始まらない。

「我愛羅は防御する事だけを考えろ」

鹿丸と聨の攻撃を防御するだけでも大変な事だ。

鳴門を始め、鹿丸も聨も、木の葉の里でもトップを誇る実力の持ち主。
そんな人物からの攻撃を簡単に防御出来たら、人間は苦労せずに人生を歩める。

其れが困難だからこそ意味がある。
意味があるからこそ、乗り越えて其れが自分の自信に繋がっていく。



「我愛羅!もっと集中しろっ!」


「ダメだダメだ!反応が鈍いぞっ!!」


「目で見えないなら音を聞け!」


3時間余りによる攻防が続いた。
鹿丸と聨の動きだけに集中して砂を操っていたからか、我愛羅は既に息を乱していた。

「約2000回、死んでたぜ」

「まだまだ動きが遅いな」

「やっぱり鳴くんの言う通りに体の砂はない方がいいかもね☆」

「はぁ…は、ぁ…」

我愛羅は思った。
アレ程動いていた鹿丸も聨も息1つ乱れがなく、疲れたのは我愛羅1人だけ…。

まだまだ鹿丸たちの足元にも及ばないのは我愛羅自身、よく分かっていた。
追い付こうと必死に鹿丸と聨の攻撃を防御していたのだ。

陽が上り始めた時刻になり、鳴門たちは修行を止め、自宅へと帰って行った。



「お帰りなさいv」

家に着くと、湊が笑顔で出迎えてくれた。
まだ6時過ぎた時間だと言うのに起きていた事に吃驚していた鳴門たちがいた。

「起きてたんだ…」

「さっき目が覚めてね。
ご飯出来てるよ、食べるでしょ?」

「もうお腹ペコペコっ」

「今日は上手に出来たからね!さ、早く食べようよ♪」

一同はリビングへと向かった。
そして、テーブルに並ぶ料理を見て…

「…親父…」

「ん?何鳴くんv」

「上手に出来たって、此れの事…?」

「そうだけど?」

テーブルに並ぶ料理。

目玉焼きなのかスクランブルエッグなのか、分からないモノ。
其れと色の濃いお吸い物…。

「ハムエッグにお味噌汁!美味そうでしょーv」

目玉じゃねぇし…

味噌汁って、もう少し色が薄かったような…

何でパン…味噌汁はご飯とかじゃない?

其れにパンなら牛乳だろ…何でお茶なんだろうか…

大体料理の組み合わせも変だ…。
其の料理を目の前にした鳴門たちは見つめた侭、黙り込んでしまった…。

しかし、折角作ってくれたのだからと、鳴門たちは席に付き、ゴクリと唾を飲み込んだ…。

必死の思いで…

「「ぃ、いただき…ます…」」

覚悟を決めて、其れを口に運んだ………。

―パクッ

「……………」
「……………」
「……………」
「……………」

箸を口に付けた侭…動きが止まった鳴門たちを見て、恍曜は…

「どう…?」



















―しばらくお待ち下さい―






















「ゴメンなさい…」

「誰かしら、失敗はあるさ…」

「そ、そうですよ!」

「そんなに落ち込まないでよパパっ!」

「ぇ…と…其の…」

あまりに不味く、飲み込めなかった鳴門たちに涙しながら謝る湊の姿があった…。

何とか鳴門が作り代えた朝食を済ませて、一同は今日の下忍の任務へと向かった。
 

[ 47/55 ]
[*prev] [next#]
[しおりを挟む]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -