「僕はあんまり戦闘は好まない質でね」

眼鏡をクイ、と中指で上げて、そしてその男は聨めがけ向かってきた。

―ヒュン…ヒュンヒュン…

「そんな攻撃、僕には当たらないよ?」

「…ただの子供と思ってた僕が悪かったようだよ」

「そうだよ。僕たちは強いもん」

言い終わって聨は刀を振り下ろした。


―ザク…


「っ、そうみたいだね…」

斬られた所を手で押さえ、男は2・3歩後ろへよろめいた。

「何其れ、凄ぉい!」

面白そうに声を上げる聨。

其の男の傷は、シュゥ…と音立ててみるみる内に傷が修復していった。

「僕はね。驚異の回復スピードを持っているんだ…だからこんな傷直ぐ治るんだよ」

「じゃあ、心臓停止させないとダメなんだ…」

「聨、やっぱ殺すな」

突然割り込んできた鳴門。

「?どうしたの?」

「連れて帰る」

「分かった!」

そう言って聨は男を拘束した。

「縄抜けしたって無駄だぜ?」

「狽チ…」

「俺らのは、特別だからな」

「解き方は俺ら以外に知る奴いねぇし」

男を連れて鳴門たちは砂の里へと戻って行った。




風影邸。
男を中心に風影、火影、我愛羅たち、鳴門たちと囲んでいた。

「此の男が…」

「何か知ってればと思って、連れて帰ったんですが」

「音隠れ…」

風影は男を見ても、首を傾げるだけであった。
見た事もない、と。

「君、薬師 兜くんだよね?」

「親父…知ってんの?」

突然の湊の言葉に鳴門は恍曜に目をやった。

「君、確か前回の中忍選抜試験に出てたよね?
第3試験前に辞めた、しかも、君木の葉の忍者じゃなかった?」

前回の中忍選抜試験は火影である湊も参加している。
だから、覚えていたのだろう。

「……」

「だんまりかよ」

「アンタの目的は?」

「……敵に捕まって、僕がわざわざ言うと思うかい?」

頑として言うつもりはないのだろ。

「ま、普通は言わねぇよな」

「其れじゃあ仕方ねぇか…」

そう言って鳴門は素早く印を結び、兜の額に指で触れた…。

「さて…喋ってもらおうか」

「此の術は何?」

「一種の催眠術だよ」

触れた人物に対して知ってる事を全て吐かせてしまう、催眠術。

「質問した事には全部答えるから遠慮なく質問してもいいよ」

「だ、誰が言うか!」

「言う言わないは、其れはアンタ自身で決める事だからな」

クスクスと笑いながら鳴門は兜を見つめた。

「じゃあ手始めに。アンタの目的は何?」

「っ…ぁ…か…風…影の、いの…ち…」

顔を歪ませる兜。
自分の意思とは別に、口が勝手に動く事が兜は信じられないのだろう。

「あれ?言わないんじゃなかった?」

初めて味わう屈辱に兜の顔は更に歪んでいた。

「クソっ…!」

「まぁ風影の命を狙ってるのは分かったよ。
で、もし殺したとしてどうするつもりだったの?」

次に質問したのは湊だ。

「ぅ、…風影、に…化けるつもり…だった…っ」

「貴様1人で企んだのか?」

次に風影。

「違……音隠れの、長が…木の葉崩し…の為…に、考えたシナリオ…だっ…!
見方に、付けて…木の葉を潰…す…つもりだ、った…っ」

「其の音隠れの長って誰だ」

次に鹿丸。

「ぉ、大蛇…丸さ…ま」

「泊蜴ヨ丸?!」

驚きに声を上げたのは湊だった。

「大蛇丸と知り合いか?」

「知り合いってまではいかないけど…。
木の葉の里から抜け忍となったって聞いてたけど…
里を作っていたとはね…」

「そ。其れで、アンタはバレないように砂の忍を殺ってた訳だ。でも、今の侭じゃ絶対無理だろ」

「何で…だ」

「だって、アンタ失敗して砂は見方に付いてない状況で、どうやって木の葉に勝つ気?」

鳴門がそう言うと、続けて鹿丸が口を開いた。

「火影である湊さんと俺たち敵に回したら、誰だって命はねぇぜ?」

次に聨。

「そうそう。さっき戦って分かったけど、お兄さん弱いし…」

3人が順に言葉を並べると、兜はまた顔を歪ませた。

拘束された紐は、どんな縄抜けの術でも解けず、全て吐かせられて、オマケに弱い発言。
誰もが顔を歪めるだろう。

「まぁアンタらの企みは分かったとして。
アンタにはまだやってもらう事があるんだよ」

「何をする気だっ!」

「ちょっとな…―――」





「さて、行きますか」

「久しぶりに暴れられる」

「楽しみだなぁv」

「あんまり無茶しないでよね…」

兜を先頭に、鳴門、鹿丸、聨、湊の5人は砂隠れの里を後にした。
我愛羅たちは砂へ置いて、鳴門たちだけで。

「…」

「ねぇねぇ鳴くん!其の大蛇丸って人強いかなぁv」

「どうだか…たかが木の葉相手に砂を見方に付けようとしてた奴だぜ?」

今、5人が向かっているのは兜が知る大蛇丸のアジトだ。

「そう、だよね」

「でも多少は期待出来るんじゃねぇ?」

「かもな」

先を歩く兜に鳴門は術を使って拘束していた。
其れは鳴門が独自に開発した術の1つだ。
肉眼では見えない糸で相手の体に巻き付け、逃げられないようにする。

今の兜の体には其の糸で巻かれ、言う事を聞かずにはいられないのだ。

「、…」

「逃げようとしても無駄なんだから…大人しく道案内しろよ」

「くっ…!」




砂から遠くない場所にある音隠れの里。

「こんなちんけな里作って…大蛇丸も相当暇人だな」

ふぅ、と呆れたような溜息を付いて兜に続く。

「時間稼ぎしたって無駄だからな。大蛇丸の所に早く連れてけよ?」

「俺ら短気だからさ」

兜へと催促をし、スピードを速める。

音隠れの里の街は人が行き交い、普通の里だ。
陰気臭いと言えば、陰気臭いが、見た目は普通を装っているらしい。

「なぁ、アレ…」

「…兜さん、だよな」

「オイ…」

「嗚呼…彼奴ら何しに」

通り過ぎた後に感じる視線と会話。
やはり、何かありそうだ。
そう感じるのは鳴門だけではなかった。

「1人1人から血の臭いがするし…」

「なんつー里作ったんだよ…」

「コソコソと僕たちの後追いて来てるし…」

「仕掛けてくるかな…」

そんな会話をしていても、焦りはなく何とも呑気な鳴門たち。

そして、兜はと言うと…

「(頼んだぞ…)」

「(了解…)」

誰かと目で会話していた。

其の男は鳴門たちから見えない場所に移動して、里の奥へ消えて行った。
兜は鳴門たちからは後ろ姿しか見えない事に安心していた。
だが、其の消えて行った男の頷く姿を目撃していた。

「……」

鳴門は、其れを見逃さなかった。

「ちょっと寄り道しようぜ」

そう言って鳴門は先程消えた男の後を追うように、左を向いて歩き出した。

「(なっ、そっちはっ!)」





方向転換してから数分後。
消えた男が目の前にいた。

「おい、其処のお兄さん」

前を行く男に声を掛けると、男は驚いたように振り返る。

「狽チ!な…何だ」

「何をそんなに急いでるんだ?」

「狽ゥ、関係ないだろ!!」

そう叫び男は再び走り出したが…

「まぁ待てって」

瞬身の術で目の前に立つと、男は鳴門とぶつかるのを避ける為にバランスを崩して転倒した。

―ズザザザザッ…

「…っ!!」

「なぁ、此の先に何があるか教えてくれよ」

転倒した男の元へ行き、見下ろす。
無表情の鳴門に恐怖したのか、男の顔は段々と青ざめている。

「ぁ…あ、……っ」

「ねぇ…?」

「(ビクッ)……」

睨みに殺気を混ぜていくと、男は其の侭後ろへ倒れていった。

「…気ぃ失ってるし。
つーかアンタ、俺を出し抜こうと思う前に命が欲しかったらちゃんと大蛇丸の所に連れてけよ」

「っ…」

もう観念したのか、兜は無言で歩き始めた。
気を失ってる男が走っていた方向へ。




オイ、来たぞ…

嗚呼…

用意はいいか?

バッチリだぜ!

茂みへ潜む複数の人影。
其の人影の方へ向かってくるのは、鳴門たちだ。

目の前に来た瞬間、茂みに潜んでいた者たちは一斉に仕掛けていた罠を発動させる為の糸をクナイで、プツン、と切った。

すると、其の時、四方八方から鳴門たちに向かって無数の手裏剣や起爆札クナイなど、武器の雨を降らせた。

「しまっ…」

「鳴くん!」

「鹿っ!」

「狽チ!!」

―ドカーンッ

爆発が起こり、其処にはモクモクと煙が立ち登っていた。

「…やったか…?」

「…やっただろ」

「あんなの避けられる訳がないだろ…」

茂みから顔を覗かせて、其の侭茂みから身を出した。
未だ煙が立ち登る其処を、見つめていた。

「…っ…何故だ!?」

「確かに、いた筈なのに…」

「何処に…」

煙がなくなった其処には、もぬけの殻と言う言葉が似合う、そんな状況だった。

兜冴え、其の状況に目を見開いていた。

「今までの、は…」

「分身だよ」

後ろから聞こえてきた声に、兜や茂みに隠れていた奴らも、驚きに勢いよく振り返った。

「って言うか、分身に入れ替わった事も分からないなんてな…」

「やっぱり弱いね」

「あれぐらい気付かなきゃ」

鳴門、鹿丸、聨、湊と横一線に並んでいる。

「鹿、聨、行くぞ」

鳴門がそう言うと、頷いた鹿丸と聨は鳴門と同時に瞬時に奴らの後ろへ回り込み、
鳴門はチャクラ刀で
鹿丸は朱羅時雨で
聨は腰に差した刀で

奴らの首を斬り落とした。

―ゴトゴトゴト…
―バタバタバタン…

其の後、其の斬り落とした頭へ刀を突き刺した。

すると生首は青い炎に包まれ、消滅した。

「こっちもやっとくか」

体にも刀を突き刺して、消滅させた。

「…残りも始末しとこう」

「そうだな」

数秒後、其処に立っているのは鳴門たちと兜だとなった。

「煤cっ」

「大人しく言う事聞いてたらよかったんだよ」

「そう言う事だ、早く案内しろよ」

「僕たち、嘘つきは嫌いだから…」

「人間、正直じゃなきゃね」






「此処が、ねぇ…」

森の中にひっそりと佇む大蛇丸のアジト。

「結界も張らねぇで…」

「不気味ぃ」

「さ、行こうか」

鳴門たちはまたも兜を先頭にアジトの中へと入って行った。

中へ入って直ぐ、3つの別れ道。

兜は左の道へ。其れに続く鳴門たち。

左の道へ入ってもまだ、別れ道はあり、兜は慣れた足取りでドンドン進んで行った。




「此処だよ…」

此の中にいる、と言う兜に鳴門はにっこりと笑った。

「案内ご苦労さん。アンタにはもう用はないから、……死んでいいよ」

言い終わると同時に後ろからチャクラ刀で心臓を一突き。

「っグ…ァ…!」

「医療忍術使っても、無駄だぜ?大人しく死んでろ」

突き刺した其処から、兜の体は青い炎に包まれて何1つ、塵も残らずに、兜は消滅。

「さて、行こうか」

目の前のドアを蹴り開ける。

「!……」

其の部屋の中は、案外広い空間だった。

「誰……っ?!」

「久しぶり、かな」

「生きていたのね…湊。あら、其処にいるのは鳴門くんじゃない…」

鳴門を見た瞬間に、変わった表情。

「ども」
 

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