不穏な動き

 
下忍最強と詠われる第1班。
別名、天才忍者チーム。

そんな下忍最強チームの担任となっているのは、四代目火影である湊だ。

此の、何とも最強の名が相応しい第1班がこなす任務は昼前には必ず終わっていた。

「な る く ん v」

鳥肌が立つような、そんな、ウフンv的な声を発して近付いてきたのは湊だ。
其の湊に鳴門は眉間に紫波を寄せた。

「…何だよ」

「えっと、あのね?再来週に中忍試験があるんだけど、もちろん受けな…」

「るに決まってんだろ!受ける!に」

「何でよー!下忍の侭でいようよ〜(泣)」

「つまんねぇだろがっ!(怒)」

「ううん絶対面白い!」

四代目火影ともあろう此の人は息子激ラヴな親バカ。

愛しい息子に怪我をさせたくない思いからか、選んでくる任務は平和に等しいDランクで、其れも探し物や草むしりなんか。
其れを受け入れる鳴門でもなく、却下してSランクに選び変える。

親バカが過ぎて、困り果てているのだ。

最終的には怒られると分かっていても其れを繰り返すから余計に質が悪い…。

「んな訳あるかーっ!!(激怒)」

今回は、此れ。
中忍試験の報告での喧嘩。
息子激ラヴな湊としては、危ない橋を渡って欲しくもなく、当然のように言ったつもり(本人真面目)だが、逆効果…。

「ったく…何考えてんだよ!」

「う゛〜、だってぇ…」

「だってじゃねぇよ。俺らは早く下忍から抜け出してぇの!分かる?」

「(分からないよ!)…」

「不満そうな顔すんじゃねぇって…俺だって好きで自分の体傷付けるつもりはねぇから」

何より湊は鳴門の体に傷が付く事に関してかなり煩い。
ましてや、今回開催される中忍選抜試験は危険がイッパイ、だなんて考えているからだ。

「………本当に?」

「嗚呼」

「本当に本当?」

「嗚呼、本当」

「絶対だよ?!」

「 し つ こ い ! 」




年に2回行われる中忍選抜試験。
前回の開催時、湊は鳴門に此の事を黙っていた所為で散々怒られてしまった。

『もう口聞きたくねぇ』

そんな事を言われてしまったら、息子ラヴな湊はショックを受けて、数ヵ月間、魂が抜けたようになっていた事は言うまでもなく…

次回開催される中忍選抜試験の事はちゃんと報告する、と約束して許してもらったとか。

中忍選抜試験を心待ちにして、鳴門たちは任務に明け暮れた。
まだかまだかと、楽しみに。

其の日から、何時ものようにDランクを選んでくる湊を無視しながら、Sランクをこなしていた鳴門たち。
※下忍な彼らだが、Dランク任務をしてたまるかと、三代目を脅してSランク任務を楽しくやっています。

「取り敢えず、推薦しといたよ!」

一週間後には鳴門たち天才チームの推薦は通した。
中忍選抜試験が開催されるまで、後一週間。

「本当にやるの?」

「煩いぞ…(睨)」

「ゴメンナサイ…」

今日も待ってもいない下忍任務をする為に集まった第1班。とは言ってもSランク。

「じゃあ行こうか?」

「嗚呼」

「砂の里って暑いのかな?」

「さぁ、どうだか」

今日の任務は砂の里へ行き、現地の忍と合流する。
戦争とまでスケールが大きいモノではないが、応援と言う形で猿飛より任された此の任務。

「急ごうぜ」

「嗚呼」

走るスピードを上げた。

猿飛からは、

『湊たちを希望しておる。悪いが向かってくれぬかの?』

其れしか聞かされてない。
どんな理由か、どんなランクか、砂に着いてからのお楽しみと言う事だ。

風影からの指名だ、Dランクなどの低レベルな任務ではないだろう、と鳴門は内心、どんな任務かと血を騒がせていた…。



1日かけて第1班は砂の里へ着いた。

直ぐに執務室へと通され、其の部屋の中には

「久しぶりだな四代目」

「うん、久しぶりv」

砂の長である風影と

「紹介しよう。俺の子供たちだ」

「私は手毬。宜しくな」

「俺は勘九郎、宜しく」

「砂漠の我愛羅だ」

大きな扇子を持った金髪の女の子と、
歌舞伎のメイクをした男の子と、
大きい瓢箪を抱えた赤髪の男の子。

「渦巻 鳴門。宜しく」

「奈良 鹿丸」

「聨ですv」

自己紹介が終わった所で、問題の此の任務の内容の話に移る。

「で、僕たちを呼んだ理由は?」

「此の里に不審な動きがあってな」

「不審…?」

「里の忍が数人、砂漠の中で死体で発見されてる。しかも、此処最近だ」

階級は上忍。
上忍の忍が、其れも数人。
皆、心臓を刀で刺され、即死だそうだ。

風影は疑問に思う。
上忍と言う階級の忍が、一撃で敗れるなどと。

「砂の忍は弱くはないからな…何かあるんじゃないかと思ったんだ」

「誰の仕業か、確かめればいいの?」

「嗚呼。
近々中忍選抜試験も始まるし、俺は此の通り手が離せなくてな…
砂漠は広いから、案内役で此の子たちも一緒に同行させる」

「分かったよ」

「ちょっといいですか?」

声を上げたのは鳴門。
其れに風影は「何だ?」と返した。

「もし、犯人が分かったとして…其の場で殺してもいいんですか?
其れとも、里に連れて帰った方がいいですか?」

其の言葉を聞いた風影は一瞬目を丸くした、が其れは直ぐに細められる。

「報告してくれたらいい。君たちの好きにしてくれても構わない」

「分かりました」

「立派な息子だな」

「でしょー♪」

「四代目とは大違いだ」

「酷いよ〜…」



湊は執務室に残り、手毬たちと一緒に、街に出た鳴門たち。

先頭を歩く手毬、其の隣に鳴門、少し距離を置いて其の後ろには勘九郎と我愛羅と鹿丸と聨が並んで歩いていた。

「わざわざ木の葉から悪いな」

「別にいいですよ」

「ヤメヤメ。敬語はよせ」

「じゃあ…お言葉に甘えて」

ガヤガヤと砂も木の葉同様、街の中は賑わいを見せている。

だが、何処か懐かしい視線も感じる…。

「我愛羅って奴は、普段から無口なのか?」

「我愛羅は、ちょっと訳ありでな…」

「…?」

「我愛羅は、一尾を体に宿して生まれてきたんだ…」

「狽チ…」

自分と同じ、化け物を持つ人物がいる事に驚きを隠せなかった。



―嗚呼、だからか…。
化け物飼ってる我愛羅も、俺と同じ目にあってるんだ。
そっか、さっき感じたのは此れか…どうりで懐かしい訳だ…。

邪な視線を向けられる…

何も言われないけど、

あの視線が苦痛なんだ



彼奴もずっと、1人だったんだな―



「そっか…同じだな」

「同じ…?」

「彼奴と一緒で…俺は九尾を飼ってるからさ」

「狽チ…」

今度は手毬が驚いていた。

「仲良くなれそうだよ」

「…」

同じ痛みを知ってるから。
1人がどんなに寂しいか、必要とされてない存在がどんなに辛いか、愛されたいと実感したいか。

よく、知ってるから…。

「……?」

ふと、違和感を感じた。

「どうした?」

「いや、…何でもない」

気配を感じた。
其れは1つ、ポツンと街外れの場所に…動く事もない其の気配。

―分身送るか…?
いや、取り敢えず報告するだけで良いよな。
行動は其れからだ…

と、結論を出した鳴門。

「そろそろ陽が暮れるな。家へ戻ろう」

手毬の言葉により鳴門たちは風影邸へと、軸を返し、歩く。

鳴門は我愛羅の横に移動して、勘九郎たちは身を引くように距離を取った。

「我愛羅って言ったっけ?」

「…」

肩を並べて歩く中、やはりあの邪な視線は消えはしなかった。

「…あの1人ぼっちの苦しさは、本当半端ねぇよな…
誰も分かってくれなくて、自分の存在すら認めてくれない」

「煤c…」

我愛羅を見つめる鳴門、我愛羅も鳴門を見つめた。

「俺も我愛羅と一緒だったから、分かるよ。其の気持ち」

「…貴様は…」

「ナ ル ト!」

「な、鳴門は……何で…」

「俺も九尾の妖狐を飼ってんだ。我愛羅と同じに親父に封印されてさ。
まぁ最初は恨んだりしたが、でも、今は感謝してるよ」

可笑しい奴だ、と我愛羅は思う。
同じ化け物を体に宿していると言うのに此の鳴門の明るさ。

「九尾の存在が俺の中にあったから、守りたい人を守り抜く力を得た。
だから、我愛羅も利用すればいいんだ」

「??」

「化け物を体の中で生かしてやってんだ少しは協力しろよ、ってな。
其れで得た化け物の力で、民たちに示せばいい。
『俺はお前たちを守ってやれる此れだけの力があるんだ』って、見せ付ければ必ず理解してくれるさ」




すっかり陽が沈んだ砂の里も夜になると冷え冷えと肌寒い。
風影邸に戻ってから、鳴門は恍曜を呼び出した。

「親父」

「どうしたの?」

「気になる事がね…
昼間から全然動かない気配があるんだよ…」

「え、どうゆう意味…もしかして今回の不審者…?」

可能性がないとは言い切れない、もし其の気配がそうだったとしたら話は早いのだが。

「偵察してみるか?」

「そうだね、鹿丸くんと聨くん連れて様子見て来てくれる?僕は風影の所に行くから
其れで昼間に風影から言われた通りに、連れ帰ってもいいし始末してもいいよ。
其れは鳴くんに任せる」

「分かった」

其れから鹿丸と聨を連れて、問題の気配のする方向に足を向けた。

完全に気配、匂いを消して…




「いた」

あっさりと見つかった其の気配の人物。
大きな岩山の上から見下ろす場所に、其の人物はいた。

「つか、スゲーな此れ」

砂嵐が立ち込めていて、顔などを確認するには解り辛い状態だった…。

「気付いてねぇし…彼奴絶対弱ぇぜ」

「何かしてない?」

「もう1人、傍にいるな…」

薄暗い中、気配の人物の傍に横たわる黒い物体が微かに見える。

「死んでんぜありゃ…」

心臓の音もしない物体に触れる謎の人物を見下ろす一行。

「どうするんだ?」

「接触してみっか」

「不審者だったらいいね」

順に言い、3人は音立てずに大きな岩山を下りて、謎の人物の背後へと。

「全く。何時までこうしてればいいんだ…
早くしないと気付かれてしまうよ」

「誰に気付かれるんだ?」

「狽チ?!?!」

背後からした突然の声に其の人物は慌てて振り向き、信じられない、と言う風に目を見開いていた。

眼鏡を掛けた其の男の額当てには音隠れの印が刻まれていた。

「…」

「ねぇ、此の人、砂の人だよ」

横たわる其の物体は、人だった。しかも其れは砂の忍。

「本当だ」

「アンタが殺ったんだ?」

見上げる其の男は目を見開いた侭、動く事すらままならない。
鳴門、鹿丸の2人からの尋常ではない程の殺気を向けられているのだから…。

「…君たち、何者…だ」

「アンタを殺す為に雇われた忍者だよ」

「僕を…殺、す?」

「嗚呼」

「ねぇねぇ。僕やっていい?」

「お、今日は何時になくやる気だな」

「偶には僕だって活躍しないとね!」

「じゃあ頼んだぜ。殺してもいいからな?」

鳴門の其の言葉に男は眉間に紫波を寄せた。

「分かった!じゃあ遊ぼっかv」

腰に挿していた刀を鞘から抜き、其の男に刀を向ける聨はにっこりと笑っていた。

「…悪いけど、僕も此処で死ねないんでね本気で行かせてもらうよ!」

「クナイは?」
 

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