「さて」

「ひっ」

其の8人の内の1人の首に刀を突き付けた。

「お前はまだ生かしといてやるよ」

「ホラ、さっさと歩く」

「部下も部下なら親玉も親玉、ってな…」

「任務選びに失敗したかも…」

息のない亡骸を無にして、2人は残った1人を連れ元きた道を帰っていった…。

「Aランクはつまんねぇから、今度の任務はSランクなんてどうだ?」

「いいな其れ」

楽しそうに話しながら、依頼者がいる街に鳴門たちが着いたのは、数分後の事。




「鳴くんお帰り。早かったね?」

迎えてくれた湊はにっこりと笑っていた。
そして、聨も。

「其の人は…?」

「生き残りだよ。何か役に立つかと思って」

其奴を湊へと渡した。
上忍が縄抜けの術でも解けない程の頑丈な結び方でグルグル巻きにしていた。

「そっちは?」

「あの付き人さ、鳴くんの言う通りだった」

「2人が出て行ってからソワソワし出して、部屋に籠っちゃったんだ…」

「気配消して部屋の中を覗いたら、あのクソガキって呟いてたから間違いないね」

「そう、じゃあもう確定だな。大名と付き人を呼んでくれよ。
親父は其奴とどっかに隠れてて」

鳴門の言葉に頷いた恍曜は男を連れて何処かへ行き、そして聨は2人を呼びに行った。

部屋へやってきた大名と付き人。

「お怪我がなくて何よりです」

「貴方も無事で何よりですよ。アジトにいた奴らは殺しておきましたから大丈夫でしょう」

鳴門がそう言うと、其の場に居合わせた大名は安心したのか、ふぅ、と溜息を付いた。

「貴方たちのお陰で、此れから安心して生活が出来ます…」

「其の事なんですが…ちょっと気になる事があって…」

そう言い出したのは鳴門だった。

「気になる事とは?」

「アンタの事だよ」

付き人へ視線を向ける。

「ゎ、私ですか…?」

「アンタが何でアジトの場所を知ってたのかなぁ、なんてちょっと疑問に思ってさ…」

「狽チ…」

「其れは彼が私の命を狙っていた奴らを尾行してくれて、居場所を突き止めたからだよ」

大名の言葉。
鳴門は其の言葉を聞いて、クスリ、と笑った。

「可っ笑しいなぁ…」

「…え?」

「アンタのような一般市民が、尾行出来る訳がねぇだろ?」

「相手は忍だぜ?」

「其れが何か…?」

鳴門と鹿丸の言葉に付き人は段々と眉間に紫波を寄せていた。

「忍者は人の気配を察知出来るんだよ」

「其れに、アンタが忍の足に追い付ける筈もねぇし、撒かれるのがオチだ」

「もし尾行してたのが本当の話なら、アンタは奴らに殺されてて既に此の世に存在してない」

「何でそう言い切れるんだよ?!」

少しずつ、少しずつ付き人の口調が荒くなってきた。

「奴らはアンタが此の大名の付き人だって知ってる筈だ。尾行されてるのを気付かない訳がないし?
其れに、居場所がバレて応援呼ばれちゃ勝ち目なんてねぇもんな…
俺だったら口封じの為にアンタを殺るな」

「っ…だが奴らはそうしなかった!」

「そうしなかったんじゃないんだよ、する必要がなかったんだ。
アンタは少なくとも、奴らと関わりを持ってると考えられる」

もう少し。
後少しで此の付き人は本性を表す…と心の中で呟いた鳴門と鹿丸は最後の追い込みに。

「奴らのアジトへ行く前、アンタ、俺の言葉に動揺してただろ?」

「動揺…?」

「ほんの少しだが、アンタは眉を動かした」

「何を証拠にっ?」

中々本性を表さない此の付き人に、鳴門は深い溜息を付いた。

「しぶといねアンタも…」

「身に覚えがない事を言われても知らないものは知らないんだよ!」

付き人の言葉を聞いた鳴門は最終段階へ。

「親父〜」

と、隠れさせていた湊を呼ぶ。
そして、

「待ちくたびれたよ鳴くん」

「煤I!」

恍曜と一緒に現れた男に付き人は目を見開いていた。

「君は此の人知ってる?」

「俺たちは岩の国の抜け忍で、其の人はリーダー的な存在です。
此の人が大名の話を持ち出しんですよ、金欲しさに…
自分が忍者だって言わなきゃバレやしないからって言って…」

「へぇ」

「親方、もう無理ですよ…貴方では此の人たちに敵いっこない…」

縛られている男は諦めが早いようだ。
先程の鳴門たちの戦闘で実感した。もう逃げられない、と。敵う筈がない、と。

「俺はお前など知らない!嘘を言うんじゃない!!」

「あ〜ぁ、裏切りかよ…可哀想に」

クスクスと笑って鳴門は大名へと視線を移す。

「君は…騙していたのか…?」

「ええ、此の男に騙されてたんですよ貴方は。
此の男は此奴らの親玉で、貴方の地位や金を横取りしようとして、善人面して貴方に近付いた。
其れがバレそうだからって知らんプリして…」

「アンタも可哀想な奴だ。俺たちを敵に回しちまったのが運の尽き、そうゆう所か」

クスリ、と鼻で笑い、鳴門は聨に付き人を拘束するよう、命じた。

「なっ、何をする?!」

「諦めろってどうせアンタは此の家にはもういられねぇんだから」

「っ…くそっ!こんなガキに…」

「忍は見た目じゃないよ?」

「そうそう。僕はこう見えても木の葉の火影だからね?」

にっこり笑って言う恍曜に、付き人は顔を歪ませた。

任務が終わり大名の家を去る時。

「彼が奴らの手先だったとは…」

「今度からは気を付けて下さいね?金で雇うなら木の葉に頼べば、定期的に忍を送らせますよ」

「其れは心強いですな。では、今度からそうさせて頂きます」



こうして下忍初の任務は無事終了した。

「意外と早く終わったな」

「嗚呼」

時刻は夜の8時過ぎ。

「何だか推理小説を読んでるみたいで格好良かったよ鳴くん!」

「うんうん!鳴くんって凄いなぁv」

「あのなぁ…」

「先が思いやられるな、此りゃ…」

クスクスと笑う鹿丸を横目に鳴門は頭を抱えた。

「人事だと思って…鹿の問題でもあるんだぜ?」

「まぁ…其れもそうなんだげどな…」





帰りは急いで帰った為、木の葉へ着いた時は11時だった。

「報告書」

執務室にいる猿飛へと巻物を渡した。

「ワシは代理じゃないからの…」

「じっちゃん。僕とじっちゃんの仲でしょ?」

「お主とワシの仲でも、じゃ。昼まではワシが代理をしてやるが、鳴門たち暗部の報告書やらの書類は湊が処理するんじゃぞ」

「え〜?!じっちゃんそんな事言わないでよ〜っ!」

旧火影と現火影の会話をスルーしつつ、鳴門たち3人は変化して暗部装束へ着替えた。

「で今日の任務は、っと…」

机の上にある任務表を勝手に取り、物色。

「此れなんか面白そうだよ?」

「暗殺か…昨日やったしなぁ」

「此れは?」

「機密文書の強奪…
雲隠れの里から持ち出された巻物を取り返す、ねぇ。面白そうじゃん此れにしよ」

手に持っていた任務表を机の上に戻し、未だ終わりの見えない会話の猿飛と恍曜の会話に割り込む。

「行ってくるからな」

「其れまでには終わらせていて下さいよ?」

「じゃあねお爺ちゃんとパパv」

そう言って3人は其の場から消え去った。

「「…」」

見つめ合う2人。

「分かったよ。夜は僕が鳴くんたちの帰りを待ってる」

「急に考えを変えるとは…」

「じっちゃんも年だからね。少しは労ってあげないといけないなぁ、って思って」

「年寄り扱いするでない」

「実際年じゃん」

「まだ70にもなってないわ!」

「まだ、じゃなくてもうね?」

夜遅く、明かりの付いた執務室には2つの声が響いていた。



「さて、今日も楽しくやろうぜ」

「そうですね」

「早く帰って隊長の手作りご飯食べたい…」

森の中を駆ける3人は、月の明かりに照らされながら目的地へと向かっていた。

「あ、飯食ってなかったな…そう言えば」

「すっかり忘れていましたね…」

「今日もそんなに難しくないし、早く終わりそうだね」

金髪と黒髪と赤髪、此の3人の武勇伝は日々塗り替えられる…。




終わりのない武勇伝。


ずっと、一緒に居れると


此の仲間と過ごせると


そう信じていた……。


 

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