新しい家族

 
そして、鳴門の顔を見つめる四代目は

「鳴門…なんだね?
僕の、僕の子供の鳴門なんだよね…」

鳴門を引き寄せ、

「こんなに大きくなって…今まで一人ぼっちにさせて…っ御免…御免ねっ…御免ね鳴くん…!」

子供みたいに泣きじゃくる四代目の背中をポンポンと叩く鳴門は優しい微笑みの侭…。

「言ったろ?俺は今、最高に幸せなんだって…
爺も鹿も聯も俺の傍にいてくれてる…
今日からは親父も一緒だからもっと…幸せだよ」



長きに渡り記憶喪失となっていた四代目の記憶は全て元に戻った。

此の、村人とも今日でお別れ。

「じゃあ、お別れだね」

「今まで有り難うね!」

「また、何時でも遊びに来るんだよ?」

村の民達に見送られ、四人は里へと戻って行った…。






木の葉へと帰還した四人。

木の葉の民や忍達は歓声を上げ、恍曜を木の葉の四代目として就任する事となった。
三代目は四代目に心よく火影の座を渡したのだった。

鳴門の家に到着。
キョロキョロと辺りを見渡しながら、部屋の奥へと進んでゆく。

「へぇ…此処に鳴君住んでるんだ」

「嗚呼。つか、親父も此処に住むんだろ?」

「当たり前だよ!僕と鳴くんは親子なんだしv」

そして、

「えっと、此の二人も一緒に住んでるの?」

そう言って指指したのはもちろん鹿丸と聯だった。

「お帰り鳴。湊さんも」

「お帰りなさいvわぁい鳴くんのお父さんだ!」

鹿丸は夕飯作りをしていて、聯は丁度今お風呂から上がって来た所を見た四代目はそう思ってしまった。

「嗚呼」

呆気なく普通に答えた鳴門に何も言い返せなくなってしまう…。

「大丈夫ですよ?俺達の給料は全部鳴にやってますから」

「家で一緒に住んでるし、ご飯も作ってくれるから其れは当たり前ですよv」

当然と言ったら当然。
家に住ませてもらっている鳴門に対しての礼儀。
其れを聞いた四代目は…。

「そ…そんな…」

信じられない…!と言いながら、ガクンと両手両膝を床に付け思い切り悲しみに浸る父親…。

「お…親父…?」

鳴門が湊へと声を掛ける。
すると、ガッと顔を上げた四代目のウルウルと潤んだ瞳には涙が溜まっていた。

「こんなに早くっ…お嫁に行くなんてパパ許しません!
しかも…旦那さんが二人ぃ〜…僕のいない間に何て事をっ…!」

そんな四代目を前にした鳴門はヒクヒクと引き吊った笑みを漏らす。

「だぁ〜れが嫁に行ったってぇー?
何自分の息子の性別勝手に変えてんだよ!?」

「だって鳴くん可愛いじゃん!
鳴くんより可愛い子なんていないもん!!」

「狽サんなの知るかぁボケ!」

鳴門と口喧嘩した後、四代目はわんわんと泣き出してしまった。

「僕の鳴くんがぁ〜…!」

そんな四代目に鹿丸は近付いて、

「お父さん…大丈夫ですよ。きっと幸せにします!」

四代目の両手をぎゅうっと握る鹿丸…。

「鹿丸くん…」

「取り敢えず、僕も仲間に入れてv」

「聯くん…」

何故か分からない内に三人が繰り広げている此の状態を止めたくて、鳴門は怒りの籠った声を発した。

「其処ら辺で止めておけよお前ら…。俺を怒らせたくないならば、の話だが?」

仁王立ちし、人を人と思ってないような、冷たい瞳を向けなながらそう鳴門が言うと…。

「じょ、冗談だって…」

「鳴くん…怒らないでょ…」

あはは…と鹿丸と聯は引き気味に苦笑する。

「親父も親父だ。此処に住む以上、俺に対してまた変な事言ってみろ…直ぐ追い出してやるからな」

笑ってるようで笑ってない笑みを向けると、

「いやぁ〜!鳴くん僕を追い出さないでぇ〜!」

と、泣き着いて来た。

「だったら言うな」

「だってぇ…鳴くんが…」

「返事は?」

「はい…」

案外、気が弱い人なんだな…と印象が持てた。
そして、直ぐ四代目は復活(泊)した。

「鳴くん、ちょっと質問!」

疑問に思った事がある、と言う…。

「何だよ?」

「今皆忍者になる為にアカデミーに通ってるんでしょ…?」

「嗚呼」

「だったら、何でお給料貰ってるの?忍者にもなってないんだよね?」

「「…(買Mクッ)」」

そうだった…。
自分達が暗部のトップだと言う事を四代目は知らなかったんだ…と三人は冷や汗を流した。

(どうするの鳴くんっ…)

(どうするって…どうする?)

(お、俺か!?…否、此処は言ってた方が後々…楽なんじゃねー?てか何で俺が…)

(そう、だな…よしっ)

(…無視かよ)

「ねぇ、何で?」

「其れは、俺達が暗部の人間だからですよ」

鳴門達が木の葉の最強の暗部部隊である事、其れを黙っていても後々厄介な事となるだろうと察した鳴門は隠さずに告げる事にした…。

今、付いている職を。

「へ…今…何て言った?」

「だから暗部の仕事をやってっからだって。超特Sランクのヤツをな?」

「鳴は暗部の頂点に立つ、暗憔部隊の隊長。そして全暗部を取仕切る総隊長を務めています」

「鹿君は総副隊長暗憔部隊の副隊長。
で、僕は其の暗憔部隊の二人の部下だよv」

父親にとっては残酷な話だろう…。
10年振りに帰って来て、息子と『あはははは〜捕まえてごらんv』的な仲良し親子生活を想像していたと言うのに…。
自分の息子が暗部に…。
しかも、総隊長を務めている等と…思ってもあなかったからだ。

「…三人が、暗部に…?そんな…嘘言って…」

「嘘じゃねーよ」

そう、真剣な瞳で四代目を見据える鳴門。
すると、いきなりガシっと両肩を掴まれた。

「今直ぐに暗部を辞めて」

四代目も四代目で真剣其の物…

「何でだよ。つか、ぜってぇー嫌!暗部辞めたら面白くねーし」

「駄目だよ鳴くん〜!怪我して痛い痛いしちゃうじゃないかー!?そんなのパパ嫌だよぉ〜!」

真剣だった其の顔は、今や泣き臍を欠いた子供…。
わんわんと泣き散らす偉く心配性な四代目に鳴門は深〜い深い溜息を付いた。

「あのなぁ…」

「駄目ったら駄ぁ目ぇ!はーんーたーいー!」

ギャアギャアと騒ぐ所は本当に子供が拗ねた様子にそっくりだ。
大の大人が…なんて心の中で呟き、鳴門はまたも溜息を付いた。

「そんな心配する事ねーだろ…。今まで一度も怪我なんてした事ないんだし…」

ぐすん、と鼻を鳴らす四代目は鳴門を見つめる。

「…ほ…本当…?」

「…嗚呼」

「そうですよ。鳴門は木の葉に於いて…いや、五大国に於いて最強の忍と言っていいでしょう。
鳴に敵う奴なんていません…と言うより、鳴の綺麗な肌に一つでも傷を追わせた奴は俺が其の場でぶっ殺してやります」

「其の時は、僕も加勢していたぶってあげますから。
安心して下さいv」

今まで黙っていた鹿丸と聯がにっこりと笑いながら、さり気なぁく凄い事を言うと、

「鳴くん、そんなに強いの…?」

「えぇ。貴方の血をうんと引いてますからね」

「分かった…。でも、一つだけ…怪我して帰って来たら其の時は絶っ対暗部辞めてもらうからね!」

泣き臍を欠く子供の表情から、父親らしい表情に変わった。
でも、何処か頼りない感じはするが…。

「わぁ〜ったよ…。つか、其れより爺ん所に行くんだろ?俺達も呼ばれてっから飯食ったら一緒に行こうぜ?」

「うんv」

何とか、暗部を辞めずには済んだ。
自分の父親がこんなキャラだったとは知らなかった鳴門は、何やら現実逃避をしたくなった…と一瞬思ってしまった…。




夕飯を済ませた四人は執務室へとやって来た。

「待っておったぞ!」

四人が勢揃いして執務室に足を入れると…
ヅカヅカ…と中へ入って来るや否や、湊と鳴門はドカリとソファに腰を下ろし、足を組む。
やっぱり親子、やる事が同じ過ぎて笑いさえ出て来る。

「「で、何?」」

しかも…声も揃えてくれて…。

「よく似ておるわ…やはり親子じゃな…」

鳴門と四代目の後ろには鹿丸と聯が立っている。

「湊。生きておった事は何より、じゃがお主は皆に心配掛けたからのぉ…挨拶しに行って来るんじゃ!」

「いやぁ〜本当だねv」

「笑い事ではないぞ…」

あははと笑う四代目を見て、三代目は深い溜息を付いた。

「じゃっ…行って来るね!」

そう言って四代目は逃げるように執務室を後にした。

「全く…あやつは」

四代目が行った後、鹿丸と聯は、鳴門を囲うように左側に鹿丸右側に聯が腰を下ろした。

「で、俺達は何の用件で呼ばれたんだ?」

「今日の任務についてじゃ。土の国と風の国がしょうもなく戦争を始めたらしくての…風の国の戦争参加をしてもらいたい」

そう言って三代目は任務内容の書かれた巻物を渡した。
其の巻物を開き、内容を確認すると其れを燃やす。

「分かった」

「楽しそうだねv」

「出発は?」

鳴門 聯 鹿丸の順に言葉を発すと

「今から言って欲しい。他に慘憔(ざんしょう)部隊の者が数名行っておるが、手傷を負っておると報告があってな?死者も増やしたくない」

「分かった…。親父は爺に任せたからな?」

「…嗚呼」

鳴門が任務に行く…其れを聞いた四代目が絶対自分も着いて行くと言いそう、と言うか想像が付く。

「取り敢えず、風の国に行こう」

「はっ」

「了解!」

ゆっくりと立ち上がり、三人は執務室を後にした。



其れから二時間後。
風の国の手傷を負った忍達が休んでいる所。
目の前では、今も激しい戦闘が繰り広げられていた。

「木の葉の…?」

「まだ子供だぞ…」

「大丈夫なのか?」

と 砂の忍達は鳴門達に不安を覚えた。

「大丈夫ですよ」

「「…?」」

負傷していた其の忍は鳴門達が来てくれた事に感謝した。

「暗憔部隊の方達です」

「暗憔部隊…?」

「狐面の方は木の葉の暗部全体の指揮を取る総隊長、蒼翠様…
酉面の方は副隊長の翔赫様…
猿面の方は其の部下である婪孑様…
木の葉が誇る実力トップクラスの方々です。
風の国の勝利は頂いたも同然でしょう」

「此の子供達が…」

どう見たって、鳴門達は10歳位…と驚きを隠せない。

「今まで良く頑張ったな」

「後は私達がやります」

「敵の数は?」

「敵の数は、三百近い数です」

そう聞いた鳴門は、ふふっと笑った。

「今戦場にいる全ての忍を下がらせろ」

鳴門がそう指示を出し、忍達を下がらせる為の合図を出した。

「一人百人くらいか」

「蒼翠様、あまり遊ばないで下さいよ?」

「そうですよ?早く帰らないとあの人が…」

「そうだった…」

聯が言ったのは多分。
否、絶対四代目の事…其れを聞いた鳴門はぁと溜息を付いた。

「仕方ねー、早めに終わせるか…。あ〜あ折角遊べると思ったのによ…」

またも溜息を付き、行くぞ…と呟き三人はすっと姿を消した。

「目を反らさず見ていた方が良い。木の葉でも、あのお方達の戦う姿は極一部しか見た事がないと言う位の貴重なお姿ですから」

戦場に目を向け、ゴクリと喉を鳴らした。



「さて、久しぶりに暴れてやろうぜ?」

「「はっ」」

目の前には三百人近い土の国の忍達がずらりと並んでいる。

「たった三人で何が出来るのか…」

「先ずは此の餓鬼三人を殺して後の風の国の奴等を仕留めたら俺達の勝利だ!」

「「オオー!!」」

「ふふ…」

とガヤガヤと騒がしくなる中、鳴門は手にチャクラを集めチャクラ刀を。
鹿丸は巻物から、朱羅時雨を。
鞘から刀を抜いた…。

「誰が一番早いかな…♪」

「…目に見えてるでしょ?」

「そうです!」

はぁ…と 鹿丸と聯は深い溜息を付いた。

「かかれー!!」

「暴れるか」

「最善を尽くします」

「頑張って早く終わらせてやる!」

3人VS300人の戦いが始まった。
だが、3人の姿が肉眼でも見えないくらいにコンマ1秒の世界。
 

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