何故に鼬が罪人と化しても自分の一族を滅ぼしたのか…。
前向きには、器を計る為…なんて言ってっけどな。

本当は…………。

『御免…鼬っ…俺の所為で!』

『鳴門。君が謝る事ではない…俺がやった事だ』

『でもっ…俺の為なんかに…!』

『本望だよ?君の役に立つなら、俺は鬼にでもなる』

『だからって!…お前とずっと一緒にいたかったのにっ』

『…御免。君を一緒に連れて行けない事は本当残念だが、また…何処かで会おう鳴門』

懐かしいの、思い出しちまった…。
そう、鼬は俺の為に…。

其れを此奴は知らない。
鼬が独自で滅ぼしたとしか、思ってないんだ。
理由はどうあれ、殺った事には変わりない。
だが、此奴は…

「知ってるか?彼奴が一族を滅ぼした理由」

「そんなの!自分の器を計る為だって吐かしてたぜ…」

やっぱり…此奴にはそう言ったのか。

「…本当の理由を教えてやろうか?」

「本当の理由だと…?」

「嗚呼。彼奴が一族を滅ぼした本当の理由は…」

此からだと言う時だった。
ピィー…と鳥の声が辺りに鳴り響く。

…っち 邪魔しやがって。
頭上で飛び回る一匹の鳥。

「団扇 佐助…悪いが任務が入ったようだ…此の話はまた今度だな」

そう言って鳴門は音もなく其の場から消えた。

「何だったんだ?本当の事って…」





「ったく…。もうちょっとで面白い事になってたかもしんねーってのに…」

「そう言うなって…」

「任務だしね」

傍に隠れて見ていた鹿丸と聯も鳴門と合流し、三人を呼び出した張本人・三代目火影の元へと急いだ。

「でも任務って何だろうね?こんな昼間から…」

「さぁな」





「入ってよいぞ」

声を発すると、三代目の目の前に現れた鳴門達。

「こんな昼間っから…何の用だ爺」

「任務じゃよ。此の木の葉の近くにある村に行って来て欲しいんじゃ」

任務内容が記された巻物を受け取る鳴門。

「…村?」

「何か聞いた事在るような…ん〜、何だったっけ?」

「爺…何だ此の任務は」

巻物を開いたのはいい。
内容はこうだ。

木の葉の近くに在る村に行き、捜査をしろ…との事。
よくある潜入捜査と言うヤツだ。

「何の捜査だよ」

「いやの、最近何かしら変な老人がワシに会いたいと…」

「狽ー!!」

三代目の言葉を邪魔したのは大きな声を上げ、何か思い出した聯だった。

「あれだよ鳴くん!」

「何だよ…」

「ほら!前にお爺ちゃんのお家の前で見たあのお爺ちゃんの事だよきっと!」

「…あ〜…追い返された奴か」

「…そう言えば来てたな」

何日前に見た老人の事を思い出した三人はあの日、丁度任務から帰って来た時の事だった。

「何じゃ…知っておったのか?」

「嗚呼、大した事はねーと思って報告してなかったけど…」

「其の老人がどうかしたのか…?」

「見張りの奴がしつこいと愚痴を零してきてな。どんな奴か分からんからのぉ、お主等に行って来てもらいたいんじゃ」

「分かった。行くぞお前等」

「御意」

「はぁいv」

三人は執務室を出て行った。
そして、

「四代目よ…鳴門はもうこんなにも大きくなったぞ」

部屋に飾られてある四代目の写真を見上げる三代目。

「懐かしいのぉ…」

『此の子が大きくなったら、僕ずっと此の子と一緒にいたいんだ爺ちゃん』

『お主は火影じゃぞ?どうやって…』

『火影は火影だけど、もし此の子が忍者になったら…僕は迷う事なく此の子の先生になるよ。自分の子供のチームの先生になるの、子供の頃からの夢だったんだv』

『…では火影は辞める、とな?』

『ううん!辞める訳ないじゃん?もし先生になったらディスクワーク、頼むね爺ちゃんv』

『…はぁ』

「何処行ったんじゃ…四代目よ」

四代目火影…。
十年前、里を襲撃した九尾を鳴門の臍へと封印した。
四代目が使用した術、其れはかなりのリスクを伴うもの。
其のリスクとは、使用した者の命と引き換えと言う条件。

『封印術・屍鬼封尽』
    (しきふうじん)

其れを使用した四代目は、そう命と引き換えに九尾を封印し、死んだ筈…。

だが、四代目の屍は必死に何処を探しても見つからなかった…。
其れを知る者は極僅かな人間だけ。鳴門さえも此の事は知らない事。

あの事件から10年。
四代目が生きている事を願い、今も尚探し回っている。
四代目が生きているとならば木の葉の民は泣いて喜ぶだろう…。

其の息子、鳴門も…。






取り敢えず、忍とバレないように額当ては外し普通の格好で行く事になった。

木の葉の門の前。
三人は今から行く其の村を地図で確認した。

「此の距離なら、20分其処らで行けそうだな」

「で、…何かあると思う…?」

「んなもん行ってみなきゃ分かんねーだろ?」

「其れもそうだな」

「よし、出発だ」

何も知らない鳴門が、今、新しい扉を開く…。
其処に何が待ち受けているとも、分からずに。

予定した時間より少し早めに着いた三人。
村全体を見下ろせる崖の上に立ち、其の村を物色する。

「普通の村…だね?」

「嗚呼」

「一体、此処に何が…」

見下ろして分かる事。
人口の少ない小さな村。
何もない平和其のものと言った感じだった。

「下りるか」

「うん」

其処を後にし、三人は村へと下りた。

村の中へ入ると、村の民達の視線が痛い。

「どちら様ですかの…?」

何処からともなく現れたのは、火影の家の前で見たあの老人だった。

『ねぇ!此のお爺ちゃん!』

『嗚呼。此の前の…』

『忍だって事、バラ…!』

−シュッ!

いきなり三人目掛けてクナイが飛んで来た。
其れを難なく避ければ、村の民達は騒がしくなった。

「此の村に何の用だ!」

「出てゆけ!」

「そうだそうだ!出てゆけ!」

と、罵声を浴びせられる中、鳴門はクナイを取り出し

「隠れてねーで出て来いよ」

其のクナイを数m離れた木に投げた。
すると…

「よく分かったね。何処の忍者だい?」

下りて来た其の人物…

「煤cっ…!?」

「狽ネ!?」

「…ぇ?」

金髪に 蒼い瞳…。
木の葉の四代目火影にそっくりな人物だった…。

「ぉ…親父…?」

鳴門は驚愕した。

三代目から何時も聞かされていただけの、自分の父親が目の前にいるのだから…。

「親父…?僕に息子はいないよ?」

にっこりと、鳴門に微笑んだ。
だが、鳴門にはそんな声は届いてなかった。
吃驚し過ぎて何が何だか訳が分からず…。

「…親父…」

鳴門は無意識の内に変化を解いてしまった。
放心状態の鳴門…其れを見た鹿丸と聯は、慌てて鳴門に駆け寄った。

「鳴!?しっかりしろ鳴門!」

「鳴くん!どうしたの!?」

二人がそう叫ぶと、其の四代目のそっくりな人物に異変が起きた。

「…な、る…と?」

地に両膝を付き、頭を押さえている。

「あ…頭が…痛いっ…!」

「もし!どうした?記憶が戻ったのか!?」

「…記憶?」




鳴門達が木の葉の忍である事を伝えると、老人は家に案内してくれた。

「木の葉の忍だと知らず、本当に申し訳ない」

「いえ、我々も任務みたいな物で来た故…」

「でも、記憶って何?鳴くんのお父さんは記憶喪失って事?」

三人にお茶を出すと、老人は詳しく説明してくれた。

「あの方を見つけたのは今から10年前の事でした」

「狽チ…!?」

話を聞く内に、そっくりな人物は本物へと段々近付いてゆく…。

「森に倒れていたのを村の民が見つけ、此の村に連れ帰って来たのです。其の時体は既にボロボロで…」

小鳥達と戯れる人物が、段々と四代目へと近付いてくる…。
本物へと……。

「あの方が目を覚ますまで、目を覚まして欲しいと言う一心で看病を続けました…。
其のかいあってか、4年が過ぎた頃、やっと目を覚ましたのです。
でも…目を覚ましたのはよいのですが、あの方は自分の名前はおろか何処で何をしたのかさえ…」

「始めっから…」

「あの方の額宛てが木の葉の物であった為、其れから木の葉に出向いて此の方の事を知らせようとしたのですが、聞いてはくれず…」

「其れは悪かった。里に帰ったらキツく言っておく」

鳴門は其の話を聞きながらも、ずっと視線は四代目の方へと向いていた。

鳴門と少し距離を取った所に座っていた鹿丸と聯。

「…鳴」

「ショック、だろうね…。折角お父さんに会えたってのに、記憶がないなんて…」

普通なら、こんな会話は鳴門には丸聞こえだろう…。
だが今は違う。

鳴門は自分の父親が目の前に現れた事に動転し、気の迷いが生じている…。

自分の父親は、10年前に死んだのだ…と聞かされていたのだから。

突然、鳴門は立ち上がった。
そして、何の迷いもなく四代目の傍へと近寄った。

「…此処、いいか?」

「うん。どうぞv」

隣に座った鳴門を四代目は直視する。

「僕達、何処となく似てるね?ほら髪の毛も瞳の色も一緒だv」

「そう、だな…」

もう会う事さえ出来ないと思っていた父親にこんな場所で会えるなんて思いもよらなかった。
記憶はなくとも、鳴門は父親が生きていてくれた事を本当に嬉しく思った。

「僕はね、記憶がないんだ」

「嗚呼…其処の老人から聞いたよ」

「でもね。今日、君達が来た時…あの二人が君の名前叫んだでしょ?其の時、頭の中で…小さな赤ん坊を抱いた僕が立っていた映像が、流れ込んで来たんだ…」

「…」

「九つの尾を持った化け物が目の前にいて…僕は赤ちゃんの事を鳴くんって呼んでた」

そして、四代目はゆっくりと鳴門の顔を見つめる。

「ねぇ、僕は誰…?
何処で生まれて何処で育って何をしてたの?
其れに、君は…僕の子供なの…?」

其の問いに鳴門はゆっくりと深呼吸をした。
そして、四代目の顔を見つめる鳴門は真剣な顔付きとなった。

「今から言う事は、全て事実だ。
…嘘なんかじゃない…」

「…うん」

「貴方の名前は湊。木の葉の里の黄色い閃光と呼ばれ、四代目火影を努めていたお方で、私の父親である人です。
貴方は10年前、木の葉を襲撃して来た九尾と戦い、赤ん坊だった私に九尾を封印して死んだ筈だった…」

そう、あの術を使う者は命を落とす…。
なのに、四代目はこうやって生きてる…。

昔、時々…此の父親を憎んだりもした。
何故、俺に九尾を封印したんだ…と納得がいかなくてずっと胸に秘め、父親を憎んだ。
全部自分の父親の所為だと理由を付けて…。

「でも…実際こうやって今生きてる」

今はそんな風には思っていない。
寧ろ、九尾を封印してくれた事に感謝…とまではいかないが、其れなりに有り難く思っている。

こうやって力が付いたのも
民が信用してくれるのも
皆が傍にいてくれるのも

四代目が九尾を封印してくれたお陰…。

九尾がいなかったら、里の民も何も言わずに…鳴門にも力は付かなかっただろう。
自分が力を付け、里へ誠意を向けていた事に民達も理解し、今や信頼してくれている。
全ての始まりは、此の目の前の父親なんだ。

「俺に九尾を封印してくれて有り難う…ってずっと言いたかったんだ。色々あったが、今、俺は最高に幸せなんだ」

にっこりと微笑む鳴門。
其の顔を見た瞬間、時を逆上るように…

『お主は今日から四代目火影となる。心してかかれ』

『精一杯、頑張ります』

『本当じゃな…?』

『あはは…嫌だなじぃちゃん本当頑張るって!』

「じぃちゃん…」



『お前が四代目だって…?』

『な…何だよ…』

『…大丈夫かのぉ』

『自来也!』

「…自来也」



『先生、頑張れよ…』

『へ〜 案山子寂しいのか?』

『べっ…別に…』

『素直じゃないんだからv』

『ぅ…煩いな!』

「…案山子…リン…オビト…」

顔と名前…。

懐かしい顔が…全てが一致する…。
 

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