新たな事実

 
其れは夜の10時を過ぎた頃だった…。

木の葉の火影邸に、杖を突いた一人の老人が尋ねて来た。

「もし、此処は火影様のお宅かの?」

「誰だお前は?」

火影邸の門番は老人の前に立ち、冷たい目付きで見下ろす。

「ワシは此の近くに在る小さな村の者じゃが、火影様に会いたくてのぉ…大事な話があるんじゃ」

「駄目だ駄目だ!お前みたいな爺が火影様に直接会おうとは馴々しい!」

そう言って、門番は老人を追い返したのだった…。

「「…」」

「可哀想な事するね…あの人…」

其れを一部始終見ていた鳴門と鹿丸と聯。
鹿丸は鳴門を見ると、

「爺に知らせるか?」

そう言った。

「…別にほっといていいだろ。大事な話って言ったって、くだらねー事だって」

此の老人が木の葉にやって来た事で、あんな事になってしまうとは、誰も思ってもみなかった…。

そう、鳴門でさえも……。





次の日。

毎日行かなければならないアカデミー。
最近は同じような内容の授業ばっかりで少し不満気味。
たまにはちょっとしたスリルを味わいたい…、そう心から思っている鳴門と鹿丸。
聯は一人、教室での授業は楽しいらしく笑顔で聞いている。

「お前も飽きねーなぁ…」

「…何が?」

「つまんねー授業をよくニコニコして聞いてられるなって事だよ」

席に着いていた鳴門達は、最近担任が来るまでは授業の話ばっかり。

つまんねー…だの
楽しくねー…だの

そんな事ばっかり。

「聞いておいた方が何か得でしょ?折角来てるんだから!」

「「…そうか…?」」

楽しくないばっかりに、声まで揃う一方。
何か楽しい事がないか、と思っていると教室の扉が開き、担任の海豚が姿を現した。

「さぁ、授業始めるぞ!皆演習場に集まるんだ」

そう言って海豚は教室を出て行った…。

「何だよ…」

「また手裏剣投げか…?」

「ほら、鳴君も鹿君もグダグダ言ってないで早く行くよ!」

「わぁーったよ…」

「楽だわ…此れ。聯、其の侭演習場まで押して」

「狽ヲ゛!?」

聯に背中を押され…押させながら、三人は演習場へと向かった。

演習場へ到着。
海豚の前に皆が集まり、腰を落とすと海豚は口を開いた。

「今日はちょっとした演習をするぞ!」

すると、生徒達はブーイングを漏らした。

「「え゛〜!?」」

「え゛〜じゃない!授業だ授業!」

そんな中、鳴門と鹿丸は其の演習とやらに興味津々。

「面白そうじゃん なぁ?」

「嗚呼。教室で授業聞くよりマシだな」

「先生ぇー!何するんですか?」

其れを言ったのは聯だった。
彼もまた演習と言うモノに興味を湧かせていた。

「先ず三人一組になってくれ」

生徒達はゾロゾロと動き出し、三人ずつに別れた。
もちろん、鳴門は鹿丸と聯。

「次に分身を作るから、其れをやっつけると言う演習だ。少しは抵抗もあるが、其れを食らうばっかじゃ駄目だぞ?ちょっとでも攻撃を体に当てさえすれば終了だ」

其の説明を聞いた鳴門は…

怪しい笑みを浮かべていた。

「いい事思い付いた…v」

くすり、と笑うと鳴門はすぅ…と手を上げた。

「先生」

「何だ?」

「俺達の時に分身10人位にしてもらえませんか?」

「君達の実力なら大丈夫だろう。よし分かった」

「其れと、此の演習。三人でしても面白くないんで、一人ずつでお願いします」

其れを聞いた海豚や生徒達は驚きに目を見開いた。

「一人、ずつか…?」

「駄目ですか?」

「いや、いいだろう」

「有り難う御座います」

そして、演習は始まった。

他の生徒が演習をする中、鳴門達は面白くなさそうに見物していた。

「鳴君、僕達がする時のアレ。修行か何か…?」

「よくあるゲームのタイムアタックだよ。より早く倒した奴の勝ちってな」

「ように鳴は遊びたいだけだって事だよ」

くすくすと笑いながら、鹿丸がそう言うと、

「狽サうなの!?
てっきり修行かとワクワクしていたのに…」

「当たり前だぜ聯」

しょんぼりする聯を横目に、鹿丸はある人物に目を向けた。

「鳴…見てみろよ」

いきなり声を掛けられた鳴門は、鹿丸が目を向けている先に視線を移す。

「彼奴は…」

「前に言ったろ。団扇 佐助だよ…見てても損にはなんねーとは思うから」

「奴がね…此りゃ見物か」

丁度今から始まる所で、海豚が腕をあげる。

「始め!」

笛が鳴ると同時に走り出す佐助と他二人。
他の二人はてこずっていて、フォローしながら体術をメインに、佐助は確実に倒して行った。

「まぁまぁ、こん中よか強いんじゃねー?」

今のアカデミー生徒の中には滅多とない実力者。
だからと言って鳴門達に敵うと言う訳ではないが。

「幻滅したか?」

「少しな。でも…」

佐助を見つめ、鳴門は口の端を持ち上げ笑っていた。

そして、鳴門達の番が周って来た。

「さて、楽しもうぜ?」

「誰からやる?」

「僕行く!」

「タイム計っとくからな」

聯は前に進むと、海豚は分身作った。
目の前にずらりと並ぶ分身。

「始め!」

ピィー!と笛の音と共に聯は分身に向かって走り出した。

一体ずつ、確実に仕留めてゆく。
一体が消えると同時に次の一体へ攻撃する。
あっと言う間に全ての分身は消えた。

「しゅっ、終了!」

笛の音が響く。

「早ぇ…」

「此奴すげぇな…」

「ニコニコしてるだけな奴かと思ってたけど…」

「聯くん、凄…」

「…うん」

聯の速さに生徒達も目が点になっていた。
聯の実力を見るのは此れが初めてだからして、驚くのも無理はなかった。

「タイムは?」

「9秒」

「遅せぇ…」

鳴門の溜息混じりに吐かれた其れに、聯は頬を膨らました。

「むぅ…」

「次は俺だ」

次は鹿丸が一歩前に出ると、海豚は分身を作る。

「始め!」

笛が鳴ると同時に鹿丸の姿は消えた…

海豚の分身が次々に消えていく中、鹿丸は元いた場所に姿を現した。

「……終了っ!」

終わりを知らせる笛が鳴り響く。
そして、演習場にいた生徒達はざわめき始めた。
其れもそう…あれ程の力を見せられたのだから。

「タイムは?」

「6秒だよ!」

「まぁまぁか…」

残るは只一人。
鳴門も鹿丸同様注目を浴びる。
彼もかなりの実力の持ち主だから、海豚も生徒達も一層緊張を増した。

ゴクリ、と喉を鳴らし海豚は笛を咥えた。

「始め!」

ピィー!と笛の音と同時に鳴門の姿が消え、直ぐに向こう側に現れると、海豚の分身は次々に消えていった…。

「手応え全然なし…」

海豚に聞こえないように小さく呟くと、海豚は終了の笛を吹いた。

「しゅ…終、了…」

あまりの速さに、驚きに目が点になってしまう。
鹿丸や聯とは比べられないくらいの速さで…。
瞬時に演習場はシーン、と静まり返った…。

「タイムは?」

「凄いよ鳴くん!5秒だよ!」

「我れながら上出来だ」

うんうん、と腕を組みながら鳴門は頷いた。

「此のゲーム、鳴の勝ちだな?ビリケツは聯」

「狽゛ー!そうだった…」

「罰ゲーム決定!」

「狽ヲ゛ー!?聞いてないよ鳴君(泣)」

「勝負に罰ゲームは当たり前だろ?」

くすくすと笑う鳴門と鹿丸。

「そうだな…一週間、任務の報告書を書くってのはどうだ?」

「いいな其れ」

「狽ヲー!?一週間!?」

「罰ゲームだぜ聯」

「そうそう。負けたんだから」

そんな和やかな場面を見つめている海豚と生徒達…。

「やっぱ凄いわーあの二人…」

「聯くんもね…相当鳴門達に鍛えられたのかしら…?」

「だとしか思えないってー…此の年であんなに凄いんだもん…」




其の日の授業はお昼迄だった。
家に帰ったのはいいが暇で仕方なかった三人…。
取り敢えず、暗部任務が始まるまで時間を潰そうと三人は街へ出掛けたのだった。

「つまんねーな…」

「嗚呼…」

「何か面白い事ないかなぁ〜?」

そう言って街を歩いていると、目の前に佐助の姿を見付けた。

「お…いい事思い付いたv」

そう鳴門が言い、鹿丸と聯は鳴門が見ている方に目をやる。
其処には佐助がいて、何やら一人で買い物か何かをし歩いていた。
店をキョロキョロと見て回っているのが後ろからでもちゃんと分かる。

「いい事…?」

「あ!佐す…狽ぅっ!?」

話し掛けようとした聯の口を鳴門は後ろから手で塞ぎ、見つからないように屋根の上へと上った。

「話し掛けてどうすんだよ馬鹿!」

「え〜、だって…御免なさい…」

しゅん…となる聯を横目に、印を組む鳴門。

「よく見てろ。変化!」

そして鳴門は25 26の青年男性へと変化した。
頭には暈を被り、何処から見ても不審者のよう。

「後から付いて来いよ?」

言って鳴門は佐助の元へ…。

「遊ぶつもりだな…彼奴」

「佐助君で?」

鹿丸は今から何が起こるか、何となく予想は付く。

「嗚呼…」

鳴門がやりそうな事と言ったら、アレしかない…。

「しょーがねー。行くぞ聯」

「ぅ、うん…大丈夫かな?」

理解してない聯は取り敢えず頷き、鹿丸と一緒に鳴門の後を追う事に。

鳴門はと言うと…

「団扇 佐助」

「…誰だ?」

後ろを振り返った佐助は警戒したように鳴門を睨んだ。

「ふふ…怪しい者ではない。ただ、お前の兄貴の事でちょっと話がしたくってな…」

其の言葉を聞いた佐助は、目付きが変わった。

「彼奴を知ってるのか…?」

相当、団扇 鼬を憎んでいるのだろう。
怒りや憎しみが籠っているのが嫌と言う程分かる、そんな瞳だった。

「嗚呼、よく知ってる」

聞きたいか…?そう言うと佐助は真剣な表情になり、其れを見た鳴門は…

「ついて来い」

口の端を吊り上げ笑っていた…。




着いた所は、人気のない場所。
佐助と対面し、鳴門が口を吊り上げているのが気に食わないのか佐助はずっと鳴門を睨み続けていた。

「彼奴の何を知ってる…!」

「殆ど全て…と言った方が正しいか?昔はよく一緒に任務してたしなぁ」

「…団扇の人間じゃあ、なさそうだな…」

「団扇じゃねーよ。俺は普通の木の葉の忍だ」

一族壊滅さられた恨みってのは結構なこった…。
だが、何も知らないで鼬を恨むとはな…。
 

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