こそこそと店員に耳打ちをした鳴門。
聞き終わると店員は、

「ちょっと待ってて、直ぐ持って来るから」

そう言って店の奥へと姿を消した。

「鹿、聯を店の中案内してやれよ」

「嗚呼」

鹿丸は聯を連れ、店の中の品物を眺め始めた。

「鳴門君」

店の奥から出て来た店員。

「此れよ…」

「此れと別に、鹿に内緒で俺ん家に送ってくれ…」

「了解v」

請求書はまたも三代目の所に回すように言い、鳴門達は店を出た。

「さて」

「次は何処行くの?」

「あ、今から食料の買い出しだよ。材料なかったからな」

「(此ればっかは自費だろうな…)」

其の後、食料の調達をし終えた三人は鳴門の家に帰って来た。

其の日は修行はなし。
買った物が其の日に届き、聯専用の部屋を作り家具等を部屋の中に設置したり掃除したりしていたら何時の間にか夕方になっていたからだ。

食事が終わり、片付けも終わると毎日の日課の晩酌が始まった。

「ほら、聯も飲もうぜ?」

如何にも何時も付き合ってる、と言う感じのノリで鹿丸は聯に言う。

「うん」

「毎日飲み続けたら強くなるさ」

「今日のは違うね?」

テーブルの上に置いてあるは昨日のお酒とは違う物だった。

「昨日飲んだのは日本酒だよ。此はブランデーだ」

「ブランデー…」

水割りを3人分作り、其れぞれグラスを手に持った。

「「乾杯」」

グイッ、と一口飲んでみる聯。

「昨日よりは変な味が強くないから、飲み易い事は…飲み易い…かな?」

「水で割ってるからだよ」

「意外にイケる口持ってんな聯?」

其れから1時間くらい飲み続け、聯は飲み潰れてしまった。

其の聯を部屋に連れて行きベッドに寝かせてやり、鳴門達は暗部の任務へと出掛けて行ったのだった…。




カーテンの隙間から太陽の光が差込み、外からは小鳥の囀(さえず)りが聞こえて来ていた。

「ん…ぅ〜?」

ゆっくりと開かれた瞼。
朝日の光が眩しく、目を細めなから上半身を起こす。

「ぁ〜…っんー!」

腕を延ばし、伸びをした。
躰に被せられている布団を剥ぎ聯はベッドから抜け出した。

「お早う聯」

部屋のドアを開けると、既に鳴門がキッチンに立っていた。

「お早う鳴君…。今日は早いね…?」

「さっき帰って来たばっかで寝てないだけだ」

「…鹿君は?」

「彼奴なら寝室で寝てる」

昨日、あまりに多い任務をやらされ朝方に帰って来て疲れて今、お休み中らしい。

「鳴君は寝なくて大丈夫なの?」

「俺は慣れてっから大丈夫だよ。聯、早く顔洗って来いよ?飯出来てっからさ」

「はぁい!」

戻って来ると、テーブルの上にはもう朝食が並べられていた。
鳴門と並び、朝食を頂く。
メニューは白いご飯に、ハムエッグと炒めたウインナー、飲み物は何故か牛乳だった。

「ご飯に牛乳…は合わないよ鳴くん…」

「食べたくねーなら食べなくていいぞ」

「たっ、食べる!」

いただきます、と手を合わせ朝食を食べ始めた。

「今日は俺が修行に付き合ってやるから」

「本当に?やったv」

「言っておくが、俺は鹿と違って甘くはないぜ?」

「…え〜?」

何とも不服そうな表情の聯。

「何でも厳しくしねーと意味がない。修行の間は鬼と化す覚悟してろ」




「飯も食ったし、朝方の修行に行くぞ聯!」

「はいv」

鹿丸は其の侭家に残しておく事となり、鳴門と聯は出掛けて行った…。

連れて来られたのは森の中。

「さて、一応はチャクラも練って変化の術もやったし。チャクラコントロールと行こうか」

「チャクラコントロールって言うと…?」

「先ずは見てろ」

そう鳴門は言って、木を垂直に歩いて行った。

「チャクラを足の裏に集めて木の幹に吸着させる。今から此れをやる」

「木登りするって事…?」

「嗚呼」

「木登りする為に必要なチャクラの量は微量だ。コツを掴めれば、簡単だ」

俺のいる所まで来いよ?そう言って鳴門はゆっくりとした足取りで上へと登っていった…。

「簡単って、説明くらいしてくれたっていいのに…鹿くんの方が優しいかも…」

はぁ…と溜息を付き、

「…修行修行!」

聯は気合いを入れ、チャクラを練り 足へ。

「微量って言ってたしね…。吸着…吸着…」

此のくらいでいいかな…?と適当な量の極僅かなチャクラの量を足へと集中させる。

片足を木の幹に乗せ、深呼吸をしもう片方の足を浮かせ、幹に乗せた…。

「っ…あれ…?」

始めだからして、バタンッ!!と落ちる覚悟はしていたのに…。

「垂直に立ててる、ね僕…」

何だか、呆気もなく出来てしまったチャクラ吸着…。

「鳴くん…驚くかなv」

段々と嬉しく成り、聯は鳴門のいる場所へ一っ走り。

「な〜る〜く〜ん〜♪」

走って頂上を目指していると、金髪が目に入って来た。
嬉しさに名前を呼んでしまうのは仕方ない。
だって、チャクラ吸着は簡単だったのだから。

「早かったな?」

「うん。凄く簡単だったの!一回も落ちなかったよv」

聯の言葉に、そうか…と呟く鳴門は下ろしていた腰を上げた。

「じゃ、ニ段目突入だ。移動するぞ!」

「何処に?」

「昨日いた海辺だ。自力で来い」

そう言うと、鳴門は音もなく消えた。

「…此れも修行だよ」

よしっ!と声を上げ、聯は海辺へと向かったのだった。



海辺へと着くと息は上がり、かなりの体力を消耗していた。

「遅いぞ聯!」

「だって、鳴く…早いもん…」

聯の乱れも何の其の。
気にする様子もなく、鳴門は次のステップを始めた。

「次は水の上を歩く」

「水の上を…?」

「嗚呼。木登りは吸着だが、此れはある程度のチャクラを放出する」

またも鳴門は見本を見せる為、海の上を歩いてやる。

「木登りとは違うぜ?」

「が、頑張る!」

先ずは足にチャクラを集中させ、海へ。

「放出しながら…」

波が押し寄せる中、聯は一歩を踏み出した。

ピチャッ…。

「…冷たっ!!」

流石に此ばかりは上手くいかない様子だ。
放出していても、腓(ふくらはぎ)の所まで沈んでしまっている。

「コツは掴んだ事は褒めてやる。だが、コントロールがなってねー。自分の体重を浮かせる分のチャクラを放出してねーから沈むんだよ」

傍にいた鳴門はそう言った。

「躰で覚えろ」

「うん…」

「1人でやってろな?ちょっと行って来る」

そう言って鳴門は其の場から消え去った。

フラフラしながらも、聯は少しずつ…少しずつ放出するチャクラを分かったようで、漸く水の上を歩けるようになった。



お昼になり修行は一時中断。

「聯!」

「鳴くんv鹿くん!」

帰って来た鳴門は荷物を片手に。其れと鹿丸も一緒だった。

「腹減ったろ?」

「ペコペコだよ…」

「飯持って来たから食おうぜ?」

「わーい♪」

シートを広げ、まるでピクニックに来たみたいで、瞬間に聯は修行と言うニ文字が頭から消えていた。

「凄〜いv」

五段の重箱、見た目もとても美味しそうで更に食欲をそそると言っても等しい。
卵焼きにウインナー、ポテトサラダ、春雨等がぎっしり詰まっていた。

「どんどん食べろ」

「いただきまーすv」

本当にお腹が空いていたようで聯はバクバクとお弁当を食べている。

「そんなにガッツくなよ」

そんな聯に鹿丸と鳴門はくすくすと笑っていた。

「そうだ。出来たか?」

「ん?何が?」

「水の上を歩く修行」

「ちょっと難しかったけど出来たよ!」

其の日は夕方まで修行は続けられた…。








家に帰り、食事を終えると、鳴門は一人、早々と寝室に入っていった。

「聯はまだ寝ねーだろ?」

「うん、付き合うよ?」

ニ人で話をしよう…、そうなった。
そして、口を開いたのは鹿丸。

「俺達が聯と初めて会った日、覚えてるだろ?」

カラン、と氷がグラスを鳴らす。

「うん」

「聯は其の日、化け物だから殺される…僕が死んだって悲しんでくれる人なんていない…って言ってたよな。
鳴はな、人の痛みってのに凄く敏感なんだ。
彼奴も一時期、化け物呼ばわりされてたから…余計、聯を見捨てられなかったんだと思う」

「ぇ…鳴くんが…?」

聯の瞳が大きく開かれた。

「木の葉を襲った九尾を、鳴は腹に飼ってる。生まれたばかりに実の親の手で封印されたんだ…」

「…」

鳴門について、全てを鹿丸から聞かされた聯。

「多分、自分と同じに化け物と呼ばれてた聯を…ほっとけなかったんだよ鳴は」

彼奴は優しいから…と鹿丸は言うと酒をグイッ、と飲む。

「だったら、鳴くんと鹿くんへの感謝の気持ちは返せない程、大きいよ…。
見ず知らずの僕を助けてくれて…
行く所もない僕を拾ってくれて…
僕はね、鳴くんと鹿くんが大好きだよ?
だからね、ずっと付いてくの。
今は弱いけど、今からずっともっと頑張って強くなる。
其れでね鳴くんと鹿くんに恩返ししたいんだ…僕にしか出来ないようなそんな恩返しをしたい…」

言い終わると鹿丸は、ふふっと笑い何も言わず聯の頭に手を乗せた。

「…v」

聯も釣られ、笑みが零れていた…。

「お前がそう思ってんなら其れでいいんじゃねー?恩返しとか、鳴はするなって言いそうだけど」



来る日も来る日も。
聯の修行は行われた。


鹿丸から聞かされた事実に、聯は駆り立てた。


早く強くなりたい…。


そんな思いが強く、弱音を言わずに少しずつ…力をものにしていった。

木の葉の街中を陽が暮れるまで走ったり…

擦り切れる程に巻物を何回も何回も読み返したり…


実践では、鳴門と鹿丸の分身と戦ったり…
日が経つにつれ、数はどんどん増えていった…。








鳴門と鹿丸との修行を始めて…どれだけの時間が流れたのだろうか…。
 

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