「次は準決勝ですな。先程よりもっと面白い戦いが見られると思いますぞ」

「楽しみにしております」

そうだ。
次 初戦は俺と鹿丸の試合だったな。

「鳴門、そろそろ行った方が良いのでは無いか?」

「そうだな…」

「気を付けての」

「嗚呼」

其処から一気に下へと降りた。

― シュタッ… ―

俺が降りると同時に鹿丸も会場席から下へと降りて来て…

「…」

「…」

無言の侭 向かい合わせで中央へと立ち止まった。

「準決勝 第一試合。

渦巻 鳴門 対 奈良 鹿丸

始めっ!!」

試合が始まった。
二人共 見つめ合うだけで、ピクリとも動かなかった。

「…」

「…」





沈黙の侭、三分位が経った後、沈黙を破ったのは鹿丸の方…。

「大分前の、あの約束…覚えてくれてたんだな」

本当の話…

「…覚えてたさ。
中忍試験迄、我慢出来ずに話し掛けたり見てたりしたら条件呑んでやらねーって思ってたのに…」

少し位、チラ見したりとか

話し掛けたりするかと思ってたんだがな…。

「言ったろ?俺は本気で鳴門の事が知りたいって…だからずっと我慢して、分からない在る日を楽しみにしてたんだよ…」

本気…か…。

「分かったよ。隠さずに全部話す…」

そして、俺は鹿丸へ今迄在った事全てを話し出した…。

「俺の親父は此の里の四代目火影だったらしい。三代目の爺が何時も
『お前の父は此の里を守り死んで行った立派な忍者だったぞ』ってのが口癖で、写真以外見た事ない親父の話を何時も聞かされてた。
俺が生まれた時、里は九尾に襲われてる最中で…臍の尾を切ったばっかの俺の腹に、命を対価とする禁術を使って九尾を封印し、死んだ」

「封印…?そんな事、俺は知らないぜ…」

「当たり前だ。其の当時、九尾と戦った忍や里の親達しか知らない。
俺に九尾が封印されてるって事実を爺は里の子供達に漏れねーように掟を作ったんだから知る訳ねーよ」

「そんな…」

「まぁ、親父は…九尾を封印する為の器となった俺を、英雄と見て欲しい…そう思って死んで行ったって爺に聞かされたよ」

「…英雄?」

「…九尾から里を守って、其の九尾を生まれたてに封印させられたんだし、封印した親父が息子にそう願うのは当然だって。

でもお前はどう思う?
九尾を封印して無かったら今頃木の葉なんて存在し無かったかもしれねーって思うと」

「…俺は、やっぱり鳴門に感謝すると思う…」

素でこんな答えが出て来るなんて、思いもしなかったけど…。

「………だろ?
『救われた!』とか『有り難う!』とかそう思うのが普通な訳だよ。
でも、木の葉の大人達はそうじゃ無かった…」

「……え?」

「四代目火影の命を奪った化け狐…子供を殺した化け狐…
夫や妻を殺した化け狐…親を殺した化け狐…

俺を化け狐としか見て無かったんだよ。そんな理由で俺は化け狐扱い。
石は投げられるは爺の見て無い所で殴られ蹴られしててよ…其の頃小さかった俺は凄くショックでさ、何で俺は嫌われてんだ、ってずっと思ってて…九尾の封印の事知ったのは三つの時だった…
(※前編中に…





【鹿丸Side...】

「と、こんな感じかな」

と、こんな感じかなって…
そんなあっけらかんとしてて良いのかよっ!?

俺達の知らない所で…。

「…」

あまりに酷い内容に驚愕過ぎて言葉を失ってる俺…。

「だから言ったろ。ちょっとした興味範囲で…」

「違うっ!!」

「…何泣いてんだよ」

俺の頬に伝う涙…。

こんな辛い思いをしてたなんて…。

何でっ…分かってやれなかったんだ…
身勝手な親の所為で封印された鳴門を化け狐扱いしなきゃなんねーんだ!?

そう思うと、抑えきれなかった。

「…分かってやれなくてゴメン…分かってやれなかった悔しさと里の奴等への怒りで…」

「誰も同情なんて求めてねーし。
自分で付けた力で俺は俺の大切な人を守るだけ。
他の奴等なんか知ったこっちゃねーよ。
其処等辺、のたうち回っときゃ良い」

「…本気で、そう思ってんのか?」

鳴門がそんな風に思ってるなんて、俺は予想もしてなかったから余計に…。

「嗚呼思ってる。俺にとって必要じゃ無い奴等なんか死のうが生きようが関係無いし、木の葉にだって、爺が居るから残ってる様なもん…爺が居無かったら、当の昔に抜け忍に成ってるよ」

「でもっ…まだ鳴門は下忍だろ!?」

「其れがどうした?下忍だろうと中忍だろうと力が在る俺には全然関係無いし」

「…鳴門…」

鳴門をこんな風にさせたのは全部、此の里の奴等なんだ…。

奴等が鳴門を狂わせたんだ…。

「…鳴門が…」

さっきよりも怒りが高まって来た…。
木の葉に、こんな事が在ってたなんて知らない俺達は、幸せに生きてた…。

其の裏で鳴門がどんなに苦しんでるなんて、此っぽっちも知らないで…。

「…何?」

「此の里を出る時、俺も手伝ってやるよ…」

「…お前も犯罪者に成るんだぞ?良いのか?」

「嗚呼、構わねー…」

「そうか。分かった 考えておく…だが……」

言い終わると鳴門の表情は段々と冷たくなり、瞳は鋭くなった…。
背筋が…凍る…そんな感じ。

「…っ!!」

只、目が合ってるだけなのに……。
尋常じゃない此の緊張感に包まれる…。

今度は汗が頬に伝う…。

「もう此の話は終わりだ。
次はお前の番…見せてもらおうか、お前の力をさ…」

そう言って鳴門は俺の前から風のようにスッと消えた…。

「狽チ…」

流れる涙と汗を拭い、戦闘となった雰囲気にゴクリと喉を鳴らした。










【鳴門side…】










俺の話を聞いて、涙を流したのは此で二人目…。
って、そうは言っても話したのも二人なんだけどな。





交換条件として呑んだ俺も俺だが、まさか泣かれるなんて思わねーよ 普通。
思ってもなかったし…。

只、曇り顔して同情とか言われんだろうな…って思ってたから、カウンターパンチ食らった気分だった…。










でも今はそんな長々話してる状況でもない。










其れから始まった戦闘。

先ずは移動し乍色んな角度からクナイを投げてどれだけの力量か調べてみる。

もちろん、簡単に避けられても面白くねーだろ?
だから上忍がギリギリで避けられる速度で投げてやると…




カッ カッ カッ…
カッ カッ カッ…




其れを軽々とバクテンで避け、クナイは石壁へ突き刺さった。

此の速度…あの案山子でも避けるのやっとなんだけどな…。

此は楽しめそうだ…。
くすり、と鼻で笑い口の端を持ち上げた。

「…言っておくが、俺は鳴門ん所の担任よか強いぜ」

自信が在る様な言い方に、俺は目を細めた。

「タダ者じゃねーとは思ってたが…」

― スゥッ… ―

「…クス…」

瞬身の術で、鹿丸の目の前に移動すると鹿丸の頬に手を添えた…。

「狽チ…!?」

楽しめそうだよ…。 

「気に入ったよお前…でも、負ける気更々ねーから」

「上等…」

くすり、と二人同時に笑い、同時に距離を取る。

俺は右手にチャクラを集め始め、其れは刀の形と成った…。

鹿丸はポーチから巻き物を取り出し、少し乱暴に開いた巻物に流れ出る血を線を書くように…
すると、其の巻物から細く赤黒い刀が煙と共に姿を現し其れを手にした。

「…良い刀じゃねーか」

「此奴の名は『妖刀・朱羅時雨(しゅらしぐれ)』。
阿修羅の如く戦いを好み 血の雨を降らせたと言われ此の名が付いたんだと。
赤黒く変色した色は今迄、何万と斬って来た者の血を吸い込んだ、と言う説だ」

「へぇ」

「そっちは?其の名前」

此奴の名前か…。

「…考えた事ねーや。思い付きだし」

まぁ、何れにせよ名前は考えるとして…

「お喋りは此処迄にしようぜ?」

「…そうだな」

そう言って両者は刀の先を相手に向けた。

「「勝負だ!」」

片足を軸に鹿丸へ切り掛かった…。


キィインッ…


刀と刀がぶつかり合う音が静かに響き渡った…。

「本気で来いよ?」

「言われなくてもそうするつもりだ。手ぇ抜いたら絶対負けっし」


ギギギギィ…


「…クス」

後ろへと距離を取り、又も切り掛かった…










カキィインッ……










キィン……










【案山子Side...】




物凄いスピードで繰り広げる此の戦い…。
やっぱり鳴門は凄いやって思い知らされた。
其れに着いて行ってる奈良くんも かなりの腕前…。

鳴門と奈良くんの動きが全然目で追えない…

今の状態で分かるのはぶつかった時の衝撃で砂埃が上がる其の場所と刀と刀が合わさった時の音だけ…。
其れも物凄いスピードで此も目で追うのが難しい位…。

鼬は追えてるんだろうけどね…。

「鹿丸…って、あんな凄い奴だった…?」

「怠け者じゃ、無かったの…?」

「…スゲ…」

「一体…どうなってるんだ…」

皆も相当吃驚してるみたいだね…。

鳴門同様 ずっと皆に隠して居たんだ、其の力を…。
在れ、ちょっとやそっとの修行じゃ身に付いたりし無いし…。

「殺気は気付くし、鳴門のスピードに着いて行ってるし 本当…奈良くんって一体何者…?」
目で追えない分、どんな状況でどっちが有利で、どっちが不利かなんて解ったもんじゃないし…。

「ぁ…先生!あそこ見て!!…血だよね?」

桜が見つけた小さな赤い染み…。
うん アレは血だね。

地面にだったり壁にだったり、血が飛び散ってる…。

「どっちが…」

奈良くんを弱いなんて決め付ける訳なんかじゃない…
鳴門を贔屓するとかそんなつもりもない…

会場の観客だってそう思ってると思う。

どっちが勝つなんて、俺達 観客してる方に分かる訳がない。


シーンと静まり返って、皆、姿が見えない鳴門と奈良くんが居るステージに釘付け。











目で見えないからこそ…










余計 気に成るんだよ。










此の血痕だってそう。










どっちのかなんて、










全然分からないよ…。










【鹿丸Side...】





スゲェよ此奴…










今迄会った中で断トツの強さ…










ヤバいな…

「…ぅっ…」

さっきから俺ばっか傷が付いて…

鳴門に傷一つも付けられない状態…。


ザザザザァ…


俺と鳴門が足を止めた…。

顔 腹 腕 足、所々に傷を付け血を流す俺と

傷一つない涼し気に笑ってる鳴門…。

「…ハァ…ハァ…ハァ…」

「…ん〜、大体分かった。お前だったら鼬と対等に戦えるとは思うが、俺には到底及ばねーな」

鼬…………?

「鼬って、団扇 鼬の事か?」

「嗚呼、そう其の鼬」

対等に戦えるって、鳴門は鼬ってのと戦った事が在るんだ…?

「お前気に入ったから、殺しはしないよ。棄権するなら、今の内だぜ?…此の侭行くと、手加減出来そうにない…」

此の侭続けると、殺してしまう…って意味か…。
参ったな…

「…ギブアップする。此処で人生終わらせたくねーし」

俺が手を挙げてギブアップを主張すると、

「っ…勝者、渦巻 鳴門!」

試験官は慌て乍そう叫び、次の瞬間、場内からは拍手が撒き起こった…。

















 

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