擦鹿ノマ鳴

 
「では、頼んだぞ」

「御意」

ある日から交わされた約束。

―ある人物を守ってやって欲しい…

其の日から見るようになったあんな場面。

正直、ビックリした。
こんな場面に出くわすなんて思っても見なかったからだ。

「此の化け物!」

「お前さえいなければよかったんだっ!!」

「お前なんか死ねばいいんだっ!」

大勢の大人に囲まれた其の中心にいる子供は、殴られ蹴られしているにも関わらず、一切表情を変える事はなかった。

殴られた痛みで顔を歪めたり、大声で助けを求める事もない。

まるで、早く此の行為が終わるのをただじっと待っているかのようだった…。

其の中心にいる子供は、俺のよく知る人物でもあった。

「何をしている」

殺気を送りながらそう言うと、大人たちは俺の方を振り返る。

「狽セ、誰だ!?」

「何をしていると聞いてるんだ」

「っ…み、見れば分かるだろ!?ストレス発散だよ!」

「そうだ!皆此奴に全てを奪われたんだ…!」

向けられるのは、邪な視線。
其れを気にする事もなく、其奴はただじっとしてるだけ。

「…火影の命により、貴様ら全員、今此処で死んでもらうぜ?」

腰に差してある刀を鞘から抜くと、大人たちは慌てだした。

「ちょ、ちょっと待ってくれよっ!」

「俺たちが何をしたって言うんだ!?」

「そうだよっ!此奴が全部悪いのにっ…」

そうだそうだ、と共鳴する大人たちに対して怒りが湧いてくる。

「前々から、其奴には手出しをするなと…掟があった筈だが?
其れを無視した上、火影を裏切った。そんな愚かな奴は此の里にはいらない」

そう言って、其処にいた大人たちを刀で切り付ける。

此れで何回目だ。
こうやって、殺すのは。

普通の民だったり、暗部だったり。
其れはもう数えきれない程になった。

「大丈夫か?」

「………誰…」

光のない目が俺を捕らえた。
殴られた顔は赤く腫れ上がり、口の中が切れてるのか唇から血が流れてる。
服を着てるから分からないが、多分、体中痣だらけだろう…。

「俺は、お前をよく知ってる奴だ」

「…………そう」

普段はあんなに明るく振る舞ってるのに、こんな此奴を見るのは初めてで胸が締め付けられるような思いだった。

「痛かっただろ?」

此れが普段の渦巻 鳴門…。
あの明るい鳴門の面影が全くもってない。

「別に…もう慣れたってばよ…傷も直ぐ治るし」

「慣れるな」

「…?」

赤く腫れ上がった頬に手を近付けて、医療忍術で其処を治す。

「ったく、めんどくせぇなお前は…」

「煤cぇ…鹿丸…?」

信じられないって顔して、鳴門は俺の顔に付いてる面に手を伸ばすが、

「ははっ…ダメだ。マヒしてるってばよ」

思うように動かない其の腕。
面を取りたかったのだろうと思い、自分で面を外した。

「鹿丸って、暗部だったんだな…」

「あぁ」

「何か意外だってば」

鳴門の全身の傷を治してから、鳴門を抱き上げた。

「家まで送る」

「有り難う…」

抱き上げたから分かる。
細くて軽い。

こんな小さい体で、大人たちの暴力にも耐えて、痛いとも言わずに…。

「…」

「寝ててもいいぜ?って既に寝てんな…」

安らかな寝顔を抱いて、鳴門の家に向かった。
























鳴門を部屋のベッドに寝かしてやり、毛布をかける。

「…」

呼吸をしてないみたいに静かな寝息。
ちゃんと息してるのか心配になる程に、1つも音を立てずに眠る鳴門から、何故か離れられないんだ。
どうしてこんなにも、離れたくないんだろうか。

「鳴門…」

頬にそっと触れると、ピク、と少し体が跳ね、鳴門はゆっくりと瞼を開けた。

「…しか…ま…る…?」

「悪い、起こしちまったな」

「ううん…」

上半身を起こして、俺を見る。
其の目はさっきみたいな光のない目。

「格好悪いとこ、見れちゃったな…あれは、あの人たちに対する、謝罪なんだってばよ。
其れしか出来ないから…
俺には、我慢するしかないんだってば…
あの人たちは俺以上に悲しんで、苦しんで、傷付いた…
俺の中にいる九尾が憎いんだよ」

まだ8つなのに、まだ子供なのに…。
どうしてそう冷静な考えが出来る?

俺には到底理解し難い。
九尾が何だ。
悪いのは九尾な筈。
鳴門は九尾の器になった。

器になったから、鳴門は九尾と同じ化け物になるのか?

「違うだろ」

「…ぇ?」

「さっきも言った筈だ。
慣れるなって…ましてや、そんな事を当たり前だとか思うな」

「鹿丸…でも…」

「もう…二度とそんな考え持つんじゃねぇ。
じゃないと、お前がお前でなくなる」

もう…既に遅いかもしれない。
明るく振る舞うお前は、今のお前とは全然違う。

「俺がお前を守るから…」

「え…」

瞬間、鳴門の顔が変わった。
俺の言葉が理解出来ないのか、目を見開いていた。

「此れからずっと、俺が守ってやる。傍にいてやる」























【鳴門side】

あの時のあの言葉が、物凄く嬉しかったんだってば。

俺は、親なんてモノや兄弟なんてモノを知らないし、友達もすぐ俺から離れていって、ずっと1人だった。

そんな俺に鹿丸は、あの言葉をくれた後からずっと俺の傍にいてくれてる。

「鳴門、次サボる?」

「また海豚先生に怒られるってばね」

「いいんだよ。其れより早く行こうぜ?」

「うん」

2人で教室を抜け出した。
最近、鹿丸といるのが楽しくて仕方ない。

あの日からずっと、俺の傍から離れないで守ってくれていた。
火影のじっちゃん以外初めて、俺をちゃんと見てくれてた。

九尾じゃない、渦巻 鳴門として。

アカデミーの屋上。
日陰も出来る最適な場所、其処が2人の秘密のサボり場になっていた。

日陰になってる所に2人、隣同士で寝転んで目を閉じる。

「ねぇ、鹿丸…」

「ん?」

「鹿丸が暗部にいるのは、俺以外に知ってる奴、いるの?」

「いねぇよ。火影は、俺だってバラしたから知ってるけど」

「そっか」

何だか、鹿丸の前ではおふざけする気がなくなってる。
本当の俺を見てるから。
だからこそ、無理に明るくする意味がないのかもしれない。

逆に今、無理に明るくしたら鹿丸に怒られるかもしれないし。
だから暗い俺でいるんだけど…。

其れに今更だけど、鹿丸は何も思わないんだろうか?

そう思ってじっと隣にいる鹿丸を見つめていると、

「どうした?」

目閉じてるのに、どうして見てるのが分かるんだろう…。
不思議に思ったけど、口を固く閉じた。

「な、んでもない」

「…言いたい事があるなら言ったらいい。遠慮すんなって」

本当に言ってもいいの?

「……………」

「何遠慮する事があるんだよ」

「えっと、鹿丸はどうして俺を助けたんだ?
俺は里の嫌われ者だし、昔から監視役とか付いてて…其の、関わりたくない奴なのに…」

「そうか?俺はただ、鳴門だったからだ」

「…?」

「火影さまから鳴門を守ってくれって言われたから、受けたんだよ。
其れに前の監視役は降ろして今俺がお前の監視役だ」

「鹿丸が…?どうして…」

「鳴門だからに決まってるだろ」

「…え?」

俺、だから…?

「案外鈍いんだな」


















鹿丸の言う、俺だから受けた、の意味が分からなかった。

あの後もずっと鹿丸と一緒にいた。
ずっと俺を守ってくれた。

どうしてだろうか…。

ずっと考えても考えても答えが見つからずに、4年が早くも過ぎた。

下忍になって、一番先に中忍になったのは鹿丸。
其れから後を追うように、皆中忍になった。

エロ仙人との修行で3年里を離れてたけど、帰ってきてからはまた前みたくずっと鹿丸と一緒にいる事が当たり前になってた。

俺も追い付き今は中忍で、班は解散、其々がチームの小隊長で引っ張る方になった。

俺は前より冷静に考えられるようになった。
其れも鹿丸のお陰で。

一緒にいる時間が多くて、色んな任務に付いて話したり、将棋したり。

物凄く、楽しい。
鹿丸と一緒にいる事が、本当に楽しくて仕方ない。

だけど、

「鳴門、聞いてんの?」

「え、あ…ゴメンってば…」

どうして今日、こんな会話になってるのか分からない…。

「そろそろ、答え聞いてもいいか?」

答え…?

「だから、俺、鳴門が好きなんだけど」

「………ぇ…好、き?//」

「あぁ」

「い…何時、から?//」

「もう、大分前から。アカデミーの時、からかな。
俺、ずっと鳴門に告白的な事ずっと言ってたんだけど…」

「ぇ…//」

急に、ドキドキしだした…。
何、此れ…?
どうして…?

何か、恥ずかしくて鹿丸の顔見れなくて、俯いた俺。

「あ、あの…//」

「ん?」

もしかして、俺だから監視役受けたのって俺が好きだったから…?

「……////」

余計に恥ずかしくなってきたっ!

面と向かって好きだなんて言われた事ないし…。

「告白的って、何?////」

「鳴門だから受けた」

「あ…////」

え…嘘…。
そんな…事って…。

「鳴門…」

「………////」

鹿丸に抱き締められた。

ドキドキと鼓動が速まって、煩い…。

アレ…何だってば、此れ…。
急にドキドキが止まらない…。

「鳴門…好きだよ」





End...

鳴門の返事が…。
ノマ鳴が書きたくて…。

グダグダな駄文ですいませんσ(^◇^;)

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