あいしてる。1(キリリク)

 
初めて会った時、其れは真っ暗な世界だった…。
三代目に報告書を届けに来ていたら、狐面を付けた人が部屋の中に入って来たんだ。

「…今帰ったぜ」

「待っておったぞ」

暗部装束を身に纏った其の人が狐の面を顔から外すと、サラサラな金色の髪に透き通った蒼い瞳が姿を現した…。

「そうじゃ。前話しておったろう」

「あー、中々やり手の新人?が、此奴?…名は何と言う」

俺の方に視線を向けた。

「鹿丸…です……」

胸が締め付けられる、そんな感覚に襲われた…。

「其れは本名だろ?俺が聞いたのはお前の暗部名だ」

「ぁ…しょ 翔赫、です」

何て綺麗な顔してるんだ…。顔だけじゃない。
身長もあまり高くないし、男だとは思えない位に華奢だし…。
肌の色も白くて綺麗で…

一瞬 女かと思ったぐらいだ…。

「翔赫って言うのか。爺にしては良い名を付けたな」

勿体ない…男じゃなく女だったらは一目惚れしそうな…。
否、女だったらの話…。

其れにしても本当に綺麗な顔してるよ 此の人。

あ、でも。
男なら可愛いとか綺麗って言われるよりか格好いいって言われた方が嬉しいよな…。

「俺は蒼翠だ。宜しくな」

「あっ、総隊長様!?よ 宜しくお願いしますっ」

差し出された手を握り、俺は勢い良く頭を下げた。
すると、此の人はクスクスと笑っていた。

「そんな堅苦しくしなくて良いって!そうだな…任務の時は『ソウ』で其れ以外は『鳴』って呼べよ」

「…は?」

意味が良く分からなかった俺は聞き返してしまった。

「呼び名だ呼び名!敬語使われるの嫌いだしタメ語で良いぜ」

「…良いんスか?」

「敬語!」

「……わ…分かった」

「良しv」























目を付けてたらしい。
下っ端だったが、ピンで受けた任務の評価が高かったんだと。

任務の成功率とか。
其処等辺の忍よりかは実力があるとか。

俺の全てを引っくるめて一目置かれてた、と三代目から聞いた。
暗部の最高地位である総隊長にそう思われてるとも全然知らなかった俺は、聞いた時はかなり驚いたぜ…。

今迄の上司は 変化してるとはいえ年下だからと威張り散らして…そんなに強い訳でもないクセして先輩面してた奴等に飽き飽きしてた所だった。


























総隊長の元に移ってからはもう気楽に任務出来て結構楽なんだな此れが。

気を使われる 敬語を使われる事が嫌いな此の総隊長様にはタメ語。任務以外でもだ。

驚いたぜ…だっていきなりタメ語で良いとか言うんだぜ!?
相手が相手だ。誰だって驚くって。



本名 渦巻 鳴門。
年は18。
現在、上忍 兼 暗部総隊長。
此の人は凄いと思う。
5歳で暗部に入隊して半年で暗部の最高地位の総隊長へ昇格したんだせ?
此れってスゲーよ!?

しかも此の顔立ちだろ。
くの一の女どもからひキャーキャー言われてんだ…

「キャーーv//」

「鳴門様ぁー!!//」

「今日も素敵だわ!!//」

ほら、此の人気っぷり。
皆 鳴にメロメロなんだ。

でも…俺って変なんだ。

「あ、鹿!」

「…//」

鳴を目の前にすると、可笑しくなっちまう…。

又、胸が締め付けられる感覚に襲われるんだ…
ギュウ、って痛てぇんだ…。
其の原因は何だか分からねー…此の人の前でだけなんだ。

「今暇か?」

「ぇ…嗚呼、まぁ//」

「じゃあ…ちょっと付き合えよ」

ガシっと手首を掴まれ、引き摺られるように其の場を後にした。

「気持ちいぃv」

「…//」

移動してきた場所は、俺ご用達のあの屋上。
日陰になっている所に腰掛けて、横になる。
ふんわりと優しい風に鳴門は気持ち良さそうに瞳を閉じた。

「えっと、何で俺を…//」

連れて来たのか?と聞きたい。
わざわざ俺を捕まえて来るような場所でもないと。

「1人よか2人の方が良いだろ?其れに鹿と一緒に居た方が静かで落ち着くし」

ニコリと笑う鳴門に、ドキンッ、と胸が高鳴った。

な、何で俺…ドキドキしてんだ、ろ…//

次第に速まる鼓動に戸惑いを見せた。

「俺、ずっと1人だったから鹿みたいな年下の奴って弟みたいで可愛いしv」

か、可愛いって言われた…//

ドキドキと速まる鼓動の意味を、理解出来ない俺がいた。
何故、上司にしかも男に対してこんなにもドキドキするのか、と言う事。

どっか可笑しいんだろうか…?












あれから鳴門に会うと、必ず鼓動は速まっていた。

「やっぱり可笑しい…」

くの一を目の前にしてみても、何の変化もない。
ドキドキもしないし、何とも思わねぇ…。

「あ、桜と猪!!」

「鹿丸…アンタね、年上に向かって呼び捨てするの止めなさいってあれ程言ったでしょ!?」

「そうよ!可愛いレディーを呼び捨てなんて10年早いわよー」

ドキドキする訳でもなく、普通だ。

色気もクソもねぇ。(桜・猪好きさんすいませんっ!汗)
鳴門の方が可愛いし…。

「何なんだよ、此れは」

「どうしたの?悩み?」

「私たちで良ければ聞いてあげるわよー?」

「ある特定の奴に会うとさ、ドキドキするって言うか…」

そう俺が言うと桜と猪はニヤリ、と笑みを雫した。

「アンタもスミに置けないわねー」

「何よ〜好きな人が出来たの〜?」

「好きな、人…?」

好きって…相手は男だぞ?
そんな恋愛感情とか有り得ねぇだろ。

「何よ其の顔」

「ドキドキするんでしょ?」

「あー…まぁ。其奴限定で…」

「やっぱりv恋よ恋!アンタは其の人に恋しちゃったのよ!」

ドキドキする筈ないもの、と言う桜の言葉に唖然。

「キャー!青春ねぇ☆」

俺が恋?…鳴門に?

「相手は誰よ〜♪」

「えっと、鳴…」

「鳴門?あ〜、まぁ其れは仕方ないわね。
悔しいけど鳴門は可愛いし、男女関係なくモテるし」

戸惑う俺。
此の気持ちが恋ならば、俺は俺と同じ男を好きになってしまったと言う事になる。

いわゆるホモと言うヤツだ。
其のホモに、なったって言うのかよ…。

「何、アンタそっち系ダメな訳?」

「否、ダメって訳じゃねぇけど…」

「男ならビシっとしなさいよ!」

考えた事がねぇだけだよ。考えた事が…。

第一、今までの理想は適当に女見つけて結婚してって考えだったのに…。

「ま、どっちにしろ好きになってしまったものは仕方ないし?
早く落とした方が良いわよ!鳴門を狙ってる奴は多いからね」

そうなんだ…。
やっぱりモテるんだ…。

最初に会った時も思ったが、男にしては綺麗な顔立ちだし、あの身長だし、あの体付きだし…。

って何俺は彼奴の事……。


























何だか分からない。
此の気持ちは猪や桜曰く、恋らしい。


鳴門が好き………好きねぇ。

「恋、か…」

恋だとして。
俺は鳴門の何処に惹かれたのだろうか…。
否、自分自身まだ実感してないから分からない、か…。

「まぁ此の気持ちは一時保留で…先ずは、好きになった理由からだな」

其れを見つけねぇとな。
俺が納得する理由を。

「お、鹿丸じゃねぇか!」

名前を呼ばれ、ふと目を開けたら其奴の顔がドアップで…。

「…」

えっと、誰だ此奴…。
否、普通に驚くけど…

「何だ其の面は…」

「アンタ誰…?」

「牙だ!犬塚 牙!」

「そう言えば、そうだったような…」

そうだ。鳴門と同い年のバカデカい忍犬連れてる上忍だったよな…。

「お前、俺の事年上だって思ってねぇだろ絶対…(汗)」

思ってるさ。実際年は上なんだし。

「どうしたんだよ牙」

「呼び捨て…(涙)」

ガクッ、と項垂れて良く見たら泣いてるし…。

「何泣いてんだ…」

「もう良い…………つーか、鹿丸こんな所で何してんの?」

「…黄昏てた」

丘になってる芝生の上で、丁度寛いでた所だった。

「…は?何だよ其れ」

「考え事だよ」

牙も俺の隣に座った。

「へぇ、何考えてたんだ?」

「…恋、かな」

「恋?お前が?」

何でだろう…今無性に此奴を殴りたい気分だ。

「俺だって恋の1つや2つ、考えるさ」

「で、相手は?」

何で此奴らは相手の名前を直ぐ聞きたがるんだろうか…。

「…鳴…」

「あ〜、鳴門か。彼奴はスゲェよな…うん、俺も分かる気ぃする」

「牙も鳴の事、好きなのか…?」


「よせよ。俺には滋乃がいるし、鳴門はダチだよ」

滋乃…あ〜

「何考えてんのか分かんねぇあのサングラス掛けた奴?」

「(汗)…まぁ当たってるけど。
其れ、俺の恋人だよ」

へぇ、そう。
趣味悪りぃ…(酷)

「牙は其の滋乃って奴前にしたら、どうなる?」

「どうって…ん〜
ドキドキしたり…
好きだから一緒に居て楽しいし…ちょっと顔とか赤くなったり、する…な。
好きだし…当たり前だろ?//」

一緒だ…。
ドキドキするし、
顔とか赤くなるし、
一緒に居て、楽しい。

桜の言う通り、俺、鳴門の事好きなんだ…。

そう思った俺は寝そべってたのを止めて、立ち上がった。

「なんだよ…ノロケやがって」

「ぅ、煩いな!お前が振ったんだろ?!//」

「ククッ。ちょっと用事思い出したから、俺行くわ」

「嗚呼、頑張れよ恋する少年!」

「何だ其れ(笑)」
























やっぱり、俺は鳴門が好きなんだ。
何時からだ?

「俺は何時から鳴門を好きになったんだよ…」
 

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