擦鳴+擦桜佐←アンチ案山子

 
暗部での任務の報告書を提出していた時だった。

「鳴門よ…」

「ん?」

「はぁ…」

人の顔見て溜息って…。
此のクソ爺め。

「んだよ、何かあるならはっきり言えって」

「ちょっと言い難い事なんじゃが…」

こんな歯切れの悪い爺も珍しくて、俺はそんな爺に首を傾げた。

「明日の、下忍任務の事での…」

一緒に同席していた俺の部下である、翔赫こと鹿丸、戒俚こと佐助、神楽こと桜の顔を其々見渡してみた。
そしたら、俺と同じように首を傾げていて…。

「じれってぇな!はっきり言えって!」

「……明日から、お前たちは案山子と短期滞在の任務となったんじゃ…」

「…俺たち7班だけか?」

「…」

爺は頷くだけの仕草をした。

「どうゆう魂胆でしょうか?」

「あの男のやりそうな事と言えば1つしかない」

畑 案山子。
俺の親父、四代目の教え子で火影としての親父を尊敬していた。
其の尊敬がどうゆう事か、息子である俺を四代目の死の原因、九尾との戦いでの禁術で命を落としたのは俺の所為だと思っているらしい。

ま、此の里の奴ら殆ど同じ考えを持ってるんだけど。

「彼奴がどう出るかによるだろ」

「戒俚ったら…!まだあの人が総隊長を狙って仕組んだって決まってないのよ?
決め付けはよくないわ」

「いや、決め付けていい。あの男は常にチャンスを狙ってたからな…」

そうだ。
何かしら理由を付けて俺に声をかけてきていた。
ま、其の度に鹿丸や桜たちが同席する形になってて失敗に終わっていたから。

怒りが蓄積されて、彼奴ももう余裕がないのかもな。

「じゃがの、鳴門っ」

「分かってるって。殺生は駄目なんだろ?殺しやしねーよ」

殺しはな…。










翌朝、木の葉の門での待ち合わせ時間に来てみると、遅刻魔の案山子が一等先にきていた。

「珍しいな案山子先生!今日はおばぁさんに出会わなかったのか?」

「うん、今日はすんなり来れたよ」

にっこりと笑って応える案山子から、微量な殺気を送られる。

「はぁ…何時もこうだといいんですけどね!」

「やだな桜、偶々だよ」

「どうだか!」

此奴も本当、馬鹿だよな。
殺気も何もかも俺も桜も佐助も気付いてるって言うのにさ…。

そのにっこり笑った顔が、此れからどう歪んでくか楽しみだな。

「さっさと行くぞ」

「てめぇ佐助!!
俺より目立つんじゃねーってばよ!」

「コラ鳴門ぉ!何佐助くんに突っかかってんのよっ!?」

「桜もそんなに怒らないの」

案山子を筆頭に俺たちは出発した。

ゆっくりと歩いてる間にも、殺気は出たまんま。

桜は呆れ顔で俺の顔色を伺っていた。
そして、案山子には聞こえない音量で桜が話しかけてきた。

「案山子先生も懲りないわね…」

「仕方ないだろ、馬鹿なんだから」

「だな…しかし、何時仕掛けてくるか楽しみだな?鳴門」

嗚呼、と返事をして前を歩く案山子に視線をやり、口の端を持ち上げた。

そしてちょっとしたお遊び程度の気持ちで案山子に殺気を向けてみた。
すると、案山子は勢いよく振り返って辺りを見渡していた。

「…案山子先生?」

「どーしたんだってば?」

「?」

「あ、いや…何でもないよ…」

すぐに前を向いた案山子。
うっすらと笑みを浮かべる俺たちがいた。

















滞在する町の宿に到着したのは夕方の事だった。
任務は明日の朝、とある人物と接触し暁情報をもらうとの事だった。

其れはまぁいいんだけどさ。
其の情報が本物であったとしても、偽物だったもしても。

問題は、其の人物だ。

案山子が何かを企み、此の任務を選んだのであれば其の人物が俺らの敵となる可能性が高い。
ま、弱いだろうけどな。

「うまそー!」

「ハシャぐなよドベ」

「佐助も棘のあるような言葉をいちいち言わないの」

夜中に仕掛けてくるってのはないだろう。
流石に佐助がいる所では襲ってくるような馬鹿じゃないと信じたい。

「案山子せんせー」

「明日の任務だけど、情報もってる奴ってどんな奴なんだ」

「んー、俺も其の人に会うのは初めてだからなぁ」

「会った事ないんですか?」

「極秘だからね。ましてや、暁情報なんてもってる事がバレたとしたら命が関わってくるでしょ?」

さて、案山子はどう動くのかな。
佐助と桜がいる前で、俺をどう殺す?



















翌朝。
流石の案山子も夜中は襲ってはこなかった。
俺も何かあった時の為、寝たフリはしてたんだけど。

「何処まで行くんだってばぁ…」

「文句言わずに付いてくる」

「本当にいるのかしら…」

「…」

俺たちは今、宿から出て段々と人気の少ない方へ足を進めていた。

「…」

此処に用意してたんだ。
不自然な気配が5。
木や草村に身を潜めている。

「…」

佐助と桜の顔を目だけ動かして見てみれば、肩を竦めたり溜息付いたり。

「ストップ!」

「せんせー?」

「どうかしたのか?」

「待ち合わせ場所って此処?」

3人とも気付かないフリ。

「3人とも、気を引き締めろ」

其の言葉で漸く、敵だと理解したように顔を作る。

「隠れてないで出ておいでよ」

案山子の一声により、身を潜めていた奴らが、俺たちの前へ姿を現した。

「…暗部、だと…!?」

現れた暗部の二の腕には木の葉の暗部の証が刻まれていた。

「渦巻 鳴門を渡してもらおうか」

「こちらとて手荒なマネはしたくない」

「大人しくこちらに従ってもらえれば命までは取らない」

「此れは命令ではなく、交換条件だ」

「さぁ、どうする?」

何が交換条件だよ。
一方的なお願いにしかすぎねぇし。

「…っ」

「何で鳴門なのよ!」

「ドベが何したって言うんだ!」

「案山子せんせー?」

案山子の様子が可笑しかった。
本来なら、此れが案山子の企てたモノなら…

「…手が震えてるってばよ?」

クナイを持つ手が震えるなんて筈がないだろ?
ましてや、今から俺を殺そうと思ってるなら尚更だ。

「どーしたんだってば、らしくねーよ?」

案山子を見つめる俺の顔は、笑っていた。

「鳴門…お前…」

まさか、怖じ気づいた?
今まで散々俺にちょっかい出してきておいて、今更?

「せんせーは俺らの担任上忍だろ?
あんな奴ら軽くやっつけてってば」

「っ…」

「鳴門ー?此の人たちどーすんのよ」

「案山子と遊ぶ前に早くしろ」

急かすような言葉が桜と佐助から放たれる。

遊んでたつもりはないけどな。

まぁ、俺に喧嘩を売るとどうなるか、其の目に焼き付けておけばいい。

「佐助、桜…俺が許す。殺れ」

「「リョーカイ」」

「2人とも止めるんだ!」

2人に対しては素早く移動して庇う形になった案山子。

「へぇ、庇うんだね…」

印を組み、案山子の動きを封じた。

「Σなっ…何だ此れは!」

見える事のない其の糸は特殊で、暗憔部隊にしか使えない術。

「せんせーは其処で見ときなよ」

「2人がどうなってもいいのか!?」

「じゃあ、せんせーは俺がどうなってもよかったのか?」

「っ…!」

暗部が俺を差し出せって言った時、何も言わなかったよね?目も反らしたよね?
暗部から身を守るような行動取ってたら少しは違ってたのにね。
其れが演技だとしても。

「今更いい子ぶるんじゃねぇよ」

2人に目を向けた。

桜はポーチから巻物を取り出し、月下桜を呼び出した。
桜色した細長い曲刀。

「…其の刀はっ」

「月下桜、桜にピッタリだと思わねー?案山子せんせー?
俺さ、此れ見つけた時いい土産だと思ったんだよ。
桜もかなり気に入ってるみたいで、俺としても嬉しいんだよな」

神楽としての相棒な其の刀を、案山子は見た事がある。
だからこんなに驚いているんだろうけど。

此の月下桜を桜の土産にした日、桜は上機嫌だったな。
逆に佐助は超不機嫌で、慰めるのが大変だったけど…。

「か、神楽さまの…桜が神楽さま?」

桜は月下桜を滑らかな動きで扱い、敵を切り刻む。
佐助は手にチャクラを込め、敵の内側を破壊。

佐助も桜も、暗部だけど弱過ぎる敵に30秒ともかからず勝利。
そして、俺は片手で印を結び、掌から青い炎が着火し其れをもう息のない塊に投げつけた。
草や土の色を変えず死した肉体と血にしか燃やさない其の炎は、全てをなかったかのように焼やし尽くした。

「どうして…」

俺と桜と佐助、其々を見ながら案山子は困惑していた。

「どうして?
佐助と桜が暗部を相手に出来た事?
桜が神楽だったって事?
其れと同様に佐助が強かった事?
其れを俺が知ってた事?
其れとも、俺が神楽を命令出来た事?」

全てが当て嵌まる?

「考えたらすぐ分かるだろ?子供じゃないんだから」

桜が神楽、其の神楽を俺が言葉1つで使ったとなれば答えは1つだろ。

暗憔部隊に属する奴らは、俺以外の命令は絶対聞かないってのが何故か揃いも揃って同じだからな。

「…蒼、翠さま…」

「随分早く答えが出たな」

「僅か1年で総隊長へ上り詰めた…其れが鳴門だって…?」

未だに信じられないらしい。

「お前とは前に何回か任務した事があったな…。
あの時みたく普通に接してればこんな事にはならなかったのに、本当に残念だよ」

「Σっ!?」

馬鹿にも程があるよね。
俺をただのガキだと思ってナメてっからこうゆう結末が待ってんだよ。

親父が死んでもう10年以上経つってのに、憎しみの炎は中々消えないもんなんだな。

俺悪くないけど。
勝手な憎しみとかマジ迷惑だし。

「此の際だからハッキリ言うけど…毎回毎回飽きずに誰かしら送り込んでさ、俺だって苛々する訳よ。分かる?
使わなくてもいい気を使ったり、桜や佐助に使わせたり。
貴重な睡眠時間削られて、朝からテメェの殺気を知らないフリしてんのも飽きてきたし」

「本物の鳴門を何処にやったんだ!」

「…はぁ」

もう何此奴。
マジで今イラッとしたんだけど。

「仮に鳴門が違う場所にいたとする。
お前はどう鳴門と接する?お前が企てた一部始終をあの目で見て、嗚呼、せんせーは俺の敵なんだって思い知らされた鳴門にだ。
また殺す事を企てる為に猫被って機嫌取りに徹するか?
そもそも此の事態を桜や佐助が見てるのに爺に報告するって分かってんだろ?
爺にもどう説明するつもり?」

何1つ間違った事は言ってない。

「其れ、はっ」

「俺が本物であろうがなかろうが、そんな事より自分の心配してらどう?」

「此の状況でまだ鳴門に手を出そうだなんて考えてるの?
案山子先生って、もっと利口な人だと思ってたんだけどなぁ」

「俺は最初から此奴が利口だなんて思ってなかった。
今回の事も俺は始めから案山子の仕業だって言ったじゃないか」

「何よ!私はただ決めつけるのはよくないって言っただけよ!」

「決めつけも何も、事実だった」

「佐助くんったら何っ時もそうよね!自分の考えが当たってたからって人のこ…」

「こんな所で口喧嘩するなお前ら…」

此奴らにも溜息しか出ねぇよ…。

さて、案山子をどうしようかな。
爺から殺生の禁止がなきゃ、楽に殺せてたんだけどな。

「嘘だ…」

「「??」」

「嘘だ嘘だ嘘だ!!」

急に叫ぶ案山子に視線が向く。

「鳴門が蒼翠さまだって?笑わせるな!
あの人はお前みたいな化け狐じゃない!」

出たよ…被害妄想。

「こっちこそ笑わせるなよ案山子。
鳴門は化け狐なんかじゃねぇし、九尾とは別物だ」

「往生際が悪いわよ?案山子先生」

「蒼翠さまは鳴門じゃない!
お前たちも目を覚ませ!鳴門は木の葉を壊そうとした化け物だ!」

「信じないなら其れでいい。
別に案山子に信じてもらおうなんて此れっぽっちも思ってねぇから。
其れと、俺は九尾じゃねぇし、化け狐でもねぇよ。
渦巻 鳴門だから、其処は間違えんな」

「Σっ!?」

ほんの少し殺気を案山子に向けた。

九尾だの化け物だの好きに言いやがって。

「テメェはもう終わりだよ、案山子」

爺に報告するし、俺たちの担任上忍ではなくなる。

「爺に感謝するんだな。殺生を禁じられてなかったら今頃お前を殺してた」

「っ!?」

「今後一切俺に関与するな、其れが出来なかったら次はない。
俺の手でお前を殺す」

もちろんタダで帰す訳もなく、俺は印を組み案山子の額を小突いた。

「記憶も改善させてもらうから」

カクン、と気を失うように体から力が抜けた案山子を地面へ下ろす。
口寄せして、ガマに頼み案山子を木の葉へと連れ帰ってもらった。

「さて、任務の続きと行こうか」

「暁情報持ってる奴の顔知ってるのか?」

「知らん」

「どーやって探すのよ…」

案山子しか知らなかった暁の情報を持った奴を虱潰しに探した結果、いたのはいたがただ見かけたと言うだけ。
其れも1週間前の話。

俺らをバカにしてるとしか思えなかった。
1週間も前の話を持ち出すなよ!

















木の葉へ帰り、案山子の事を爺に報告すると爺は悲しそうな表情をしていた。

「案山子は降ろすしかないの…代わりの者を用意しておく」

「くれぐれも俺に害のない奴選らんどけよ」

「分かっておる…」

じゃなきゃ、また俺に迷惑かかるから。

「で、鳴門。案山子先生の記憶は書き換えたの?」

「嗚呼」

「消したんじゃなかったのか?」

「消したらまたちょっかい出してくるだろ」

何の為にわざわざ暗部に襲われたと思ってんだ。
消すくらいなら案山子の見てない所で暗部たちを殺してた。

「総隊長さま直々のお言葉として彼奴の頭の中に残してやったよ」

「其れは一番の効果的ね」

「だな」

もし、次。
彼奴がまた何かしてくるなら、其の時は……。



end...

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