擦鹿+朱羅

 
今日は朱羅を手元に置いていた。
久しぶりの休みだし話相手にでもなってやろうと思って。

もちろん鳴門も一緒にだ。

「朱羅ってさ、結構舌肥えてるよな…」

鳴門の此の一言で始まった。

「舌?刀だぞ?」

「其れでも血飲むでしょ?」

「そうだけど…」


失礼だな…


「?」


ワシは正直に言っているだけだ…


「だから肥えてるって言ってんだよ」

「血の味分かる奴なんて朱羅だけだろうがな」


血を飲むのは妖刀だけとは限らんだろう…
蚊や蛭も血をの…


「一緒にするなよ(汗)」


喋ったら同じだ…
お前がワシを幽霊と一緒にした事と同じだろう…


「何で覚えてんだよ…(汗)」


根に持つタイプだからだ…


「幽霊って?」

「初めて会った時に朱羅をそう言ったんだ」

「へぇ…ねぇ、朱羅と何処で出会ったの?」

「暗部の任務中だよ」

「詳しく聞かせてよ」

鳴門にそう言われたら断れる訳がない。

「あれは今から…」


















当時の俺はまだ6つの時だった。

其の頃にはもう既に暗部に所属していた。
何処にも属さない俺はSランク任務を1人でこなしていたんだ。

其の日も夜中に執務室を訪ねたら、

「…三代目、此れは何だ?」

「お主も部隊に入ってはくれぬか?」

渡された書類には部隊名と部隊長の名前が記されてあった。

三代目は何時も部隊への勧誘話を持ち掛けてきた。
断ると分かっていながら。

「断る」

仲間はいらない。
足手纏いになるだけ。

「1人の方が気楽でいい」

「そう言うとは思っておったが…全く、アヤツと同じ事を…」

「…彼奴?」

「いやいや、気にするでない、独り言じゃ」

まさか、此の彼奴と呼ばれていたのが鳴門だとは此の頃の俺は此れっぽっちも思っていなかったが。

「今日は2件用意しておる」

任務内容の書類に目を通す。

S級犯罪者抹殺に野党撲滅。

「野党撲滅って本当にSランク任務か?」

「左様。野党と言うても相手は忍者じゃ。
しかも抜け忍のな」

抜け忍か…。
其れなら楽しめそうだ。

「了解」






















「此処か…」

とある山奥にある洞窟のアジトに来ていた。

「抜け忍なら結界くらい張れよ」

気配を消しながら、中へ進む。
蝋燭の火が5m間隔で置かれていて、中は薄暗い。

「…」

5分程進んだ時、人の喋り声が聞こえてきた。

「昨日掻っ払ってきた刀見たか?」

「見た見た!刃が赤黒くて何か気味悪いよな」

「だろ?見た目ごっついのに切れ味最悪って言うし」

「だよなぁ…」

赤黒い刃?刀が?
どんな刀だよ其れ。

「…」

其の刀に興味は然程なかった。

話してる抜け忍2人の息の根を止めてまた進む。

洞窟の中はそう入り組んでなく、分かれ道が3ヶ所あったぐらいだった。

其の間、仲間であろう抜け忍も13人と接触し始末した。

「…」

3つ目の分かれ道を左に行った突き当たりにあった扉。

キィ…と音をさせて扉を開けると、

「誰だテメェ!」

「お前が頭か?」

「彼奴何してやがる!」

「仲間は殺した」

「狽ネっ…!?」

さて、長居も無用だ。

「悪いが死んでもらう」

「くそっ!」

背中にかけてあった刀を抜き、斬りかかってきたのをサッと避ける。

「…」

そして俺も素早く刀を鞘から抜き、心臓を1突き。
突き刺した刀の刃を伝い、其の男の血が地面に落ちる。

「あ、ぁ…っ…」

呆気ない終わり方に溜息を付いた。

「…ったく、何がSランク任務だよ。
此れじゃAランクだろ」


小僧…


「狽チ…」

聞こえてきた声。

俺が気付けない程の…!
漸く楽しめそうだ。

人の気配はない…。
何処だ…何処に潜んで…。


中々の強者よのぉ…


「誰だ…」


小僧の目の前にいる…


「…」

よく此の部屋を見てみれば、あちこちに宝。
そして、俺の目の前には赤い鞘の刀が壁にかけてあった。

「…幽霊か?」


そんなモノとワシを一緒にするな…


『刃が赤黒くて何か気味悪いよな』
『だろ?見た目ごっついのに切れ味最悪って言うし』

抜け忍の2人が話してた刀って、もしかして此れの事か?

興味がなかったのは事実。
だが、本当に刃が赤黒いのか実際に見てみたかった。

俺は刀を手に取り、ゆっくりと鞘から抜いた。

「…本当に赤黒いんだな」


此の色は嘗てワシが何万と斬ってきた奴らの血の色だ…


「…」

此の声の正体って、此の刀?
まさか、刀が喋るなんて聞いたこ…


ワシの名は朱羅時雨…
今では妖刀と呼ばれるようになったがな…


「…妖刀?」


もう随分昔の話だ…


「…」

切れ味最悪だと言っていたのを試す為に、俺はまだ処理していなかった死体の腕に刀を付ける。

サッ…

普通なら引くだけで斬れる筈が、磨ぎの悪い包丁のように皮が剥がれる程度だった。

「本当、切れ味最悪じゃねぇか…」


当たり前だ…
此の刀が造られたのはもう200年も前だからのぉ…


「そんなに…」


ワシは血を好む…
血を求める…


「血ねぇ…」


小僧、其の男の血をちょっとワシに飲ませろ…


「は?飲ませろって、どう飲ませんだよ」


簡単な事だ…
刀を体に突き刺せ…


「…よく分かんねぇけど、突き刺せばいいんだな?」

俺は朱羅時雨を横たわる男の体に勢いよく突き刺した。

ザクッ…

すると…

ゴクゴク、と飲み物を飲むような喉を鳴らす音が聞こえてきて…

「…?」

男は中肉中背の程よく筋肉の付いた人物だった。
其れが、段々と年寄りのように肌がシワシワに…。

吸血鬼みたいなモンか?

「どうゆう仕組みだよ…」


ぷはぁ…
久しぶりの血だが、不味い…


「親父くさ…
つか不味い言いながら殆ど飲んでんじゃねぇか…(汗)」


細かい事を言うな…
30年振りの血だったから歯止めがきかなかっただけだ…


「…(汗)」

つか、何俺普通に会話してんだろ…。


小僧…
もう1回其の男を斬ってみろ…


「…」

どうせ一緒だろ?とそう思いながら、さっき皮が剥がれた所の横を同じように付けて刀を引こうとしたのに…。

サクッ…

剥がれるレベルじゃない。
力も何も入れてないのに、付けようと思っただけが骨まで達していた。

「…何だ此れ…さっきと全然違う…」


30年、喋るからと気味悪がった人間どもはワシを蔵の中に閉じ込めた…
ワシの使い方もろくに知りもせずにだ…


「…」


ワシは持ち主によって左右される刀だ…
血を与えれば効力を発揮する…
其れを知らぬ人間どもは実に愉快だったぞ…
ワシを見る度、怯えた顔をしていた…


「アンタ、名前何て言ったっけ?」

興味が湧いてきた。
此の妖刀に…。


朱羅時雨と言っただろ…
1回で覚えぬか…


「朱羅時雨ね…」


小僧、お前の名は…


「奈良 鹿丸。暗部名は翔赫だ」


では翔赫…


「何?」


ワシを此処から連れ出せ…


「いいけど…」


決めた…
次の持ち主は翔赫、お前だ…


「勝手に決めんなよ」


何だ、不満か…


「朱羅が言うなって事だよ」


お前の血も飲んでみたいの…


「無視かよ…(汗)」

赤い鞘にしまい、洞窟内に起爆札を貼っていく。


何をするんだ…


「爆破させんだよ」


中にある財宝はどうする…


「誰かが掘り当てるだろ」

洞窟を出た俺は印を組んだ。
火遁の術で爆発させる。

デカい音をさせて洞窟が崩れていく。

「さて、次行くぞ」


また血を飲ませてくれるんだろうな…


「飲ませてやっから」

















S級犯罪者抹殺。

何がS級犯罪者なのかがいまいち理解出来なかった。
攻撃も防御もまともに出来やしないクソ弱ぇ奴。

最後に朱羅をぶっ刺してやればまたゴクゴクいい飲みっぷりを見せてくれた。

「美味いか?」


不味い…


「我儘だな…(汗)」


此奴が悪い…


「はぁ…」


昔はもっといい血を持った奴がいたんだがな…
最近は食生活もよくなっているんじゃないのか…
野菜不足か…


「…何処から突っ込めばいいんだよ(汗)」


普通の意見だ…





















「報告書だ」

木の葉へ戻ってくると、三代目は俺の腰に挿してある朱羅に気付いた。

「翔赫よ…其の刀…」

「嗚呼、抜け忍どもがどっからか掻っ払ってきてたらしい。
丁度いいかと思ってもらってきた」


もらってきたんではない…
契約したのだ…


「お前…変な所で拗ねんなよ…」


拗ねてなどおらん…


「ったく…」

ふぅ、と溜息を付いた後、三代目に視線を移してみたら…

「……」

固まっていた…。

「三代目?」


どうかしたのか…
動かないが…


ギャーっ
刀が喋ったぁあああ!!(汗)






















「ってな感じかな」

「んだよ、人には白欄の事ああだこうだ言ってたクセに(※長編 大切…にて)、自分も何だかんだ言って朱羅とフレンドリーに接してんじゃん」

言われてみれば…(汗)




―終われ。

[ 26/33 ]
[*prev] [next#]
[しおりを挟む]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -