擦鳴+白欄

 
当時、鳴門はまだ5歳になりたての頃だった。

暗憔部隊を作り上げ、総隊長に就任した。
メンバーは未だ1人として入ってはいない。
と言うのも鳴門自身が他のメンバーがいらないと頑として譲らず、暗憔部隊は鳴門、蒼翠だけの部署になっている。

今夜も暗部としての任務の時間。
鳴門は、音のもなく三代目猿飛の前に現れた。

「今日の任務は?」

「1件だけじゃ」

「…どうして?」

昔の鳴門は現在のように怒りを露にするような事はしなかった。
逆に、拗ねる方が強いと言うか…。

「今日の任務はちと遠いからの。
蒼翠でも帰ってくる時は多分朝じゃ。だから1件にしておいた」

「分かった。明日は倍用意しといてよ…」

「うむ。約束しよう」

猿飛から渡された書類に目を通す。

「…………妖狐?」

「そうじゃ。とある森に棲む人型のな」

「其の妖狐を始末すればいいの?」

グシャリ、と書類を握り潰した後、青い炎により灰すら残らず書類は消滅した。

「風の国の領土を越えた深い森の奥に住み処があるらしい」

「了解」






















着いた其処は正しく深い森。

辺りは静かで、フクロウの鳴き声が不気味さを感じさせていた。

「妖狐か…どんな奴だろ」

そう呟きながら鳴門は奥へと進んで行った。

木々を飛び移り、池を飛び越して、更に奥へと進む。

すると、段々と感じてくる気配。

「…何かいる………v」

今日のターゲットであるのはもちろん。
だが、鳴門が今までに感じた事のない、チャクラの大きさに鳴門は自然と笑みを零していた。

そして、スピードを上げて更に奥へと進むと…

「……霧…」

漂う白い霧がゆらゆらと集まってくる。

動かしていた足を止めて、辺りを見渡すと其処はちょうど湖の辺(ほとり)だった。

今まで見えていた湖も霧で水面が見えない状態にまでになっていた。

「此の森に何の用があって来た?ソナタのような人間の子供が来るような場所ではないぞ」

そう聞こえてきて、

―スゥ…

霧の奥から姿を現したのは、腰まである真っ黒い長い髪に真っ白い肌、真っ赤なアイラインに唇も真っ赤で、雪女みたいな真っ白い着物を着崩して、胸元はばっくり開き、尻からは長い尻尾が顔を出してゆらゆらと揺れた女妖弧。

「早々に立ち去れよ」

「いやね、あんたが人間を殺し過ぎるからって、依頼がきちゃってさ」

「人間を殺すのは、妾の楽しみの1つじゃ。
愚かな人間は、無能なただの集まりに過ぎん。
でも、ソナタは他の人間とは違うのぉ…」

ゆらゆらと尻尾を揺らしながら、ゆっくりと鳴門に近付いてくる。
鳴門は其の場を動こうとはせず、妖狐がくるのを待っているだけ。

「初めて会い見えたと言うにも関わらず、ソナタには何故か興味をそそられる…。
名は何と申す?」

「渦巻 鳴門。あんたは?」

「妾は白欄じゃ。鳴門とやら、ソナタは妾を殺しにきたのであろう?」

真っ赤な唇が緩む。
釣られるように鳴門も口を緩ませた。

「妾が此の侭、生きておればまた人間を殺す。
依頼と鳴門もそう申しておったしな」

「…ねぇ」

「何じゃ?」

「俺と契約しない?」

鳴門から発せられた言葉に、白欄は目を丸くした。

「…妾とか?」

「そう。俺は此の世界で忍者ってのをしてる。
俺も白欄と同じ気持ちだよ。
人間は1番愚かで無能でヘドが出るぐらい、殺したくなる生き物だから、そう考えるのは必然的だと思うし。
白欄も人間殺したいなら、俺と契約しようよ」

「よいのか?ソナタ、妾を殺しにきたのではなかったのか?
妾がソナタと契約を結ぶであっても、妾はまた人間を殺すかもしれぬぞ?」

白欄は鳴門が不思議でしょうがなかった。

此の森に侵入してきた人間がいると思えば、まだ小さな子供で。
自分を殺しにきた、そう言った。其れなのに鳴門に興味が湧いた。

殺しにきたのであろう、と言ったら契約を結ぼうと…。

「白欄は人間を殺したい。
俺は白欄の力が欲しい。
契約結んだら、一石二鳥と思わない?」

「普通の子ではないと思っていたが、予想以上じゃよ鳴門。
分かった、其の契約とやらを結ぼうではないか」

そう言って白欄は手を差し出した。
其れに鳴門は自分の手を重ね、握った。

「契約成立だね」

「宜しく頼むの、鳴門よ」

































「…」

木の葉に帰ってきた鳴門を待ち構えていたのは、もちろん三代目火影。

「鳴門、アレはどうゆう事なんじゃ!?」

何故か怒鳴りだす三代目を見て、鳴門はピンときた。

「また水晶で覗き見してたのかよ…悪い趣味」

「覗き見ではない!心配じゃったからじゃっ!!」

「はいはい。分かった。心配してくれてサンキュー。
見てたんなら分かるだろ?
俺が初めて欲しいって思ったんだから、爺も少しぐらい見逃してもいいだろ?
ただ口寄せ契約しただけじゃん…」

鳴門にはまだ分かっていなかった。
其の契約が、ただの口寄せ契約ではない事を。

其れは何年後かに、気付くであろう。


End...

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