擦鳴+擦鹿2

 
鳴門があの蒼翠だったなんて、思いもよらなかった。
任務失敗なんて言葉は、あの人の辞書には載ってないんだろう。
此れまでの任務は、全て成功に終わっていた。
そう、3代目に聞いた。

あの日、俺は3代目にこう言われた。

『もし、蒼翠としてのあやつに出会った時…あやつを傷付ける事だけは避けてくれぬか?
頼む、あやつがまた心を閉ざすやもしれぬ…ワシからの頼みを聞いてはくれまいか…?』

3代目にとって、あの人は余程大切な人なんだと思い知らされた。
3代目とあの人の間に、どんな絆があるのか、興味が湧いた。

あの人を傷付ける?俺が?
そんなの、出来る筈がねぇよ。

他の暗部もあの人を尊敬し、崇拝してるヤツもいる。
顔を見た事ない、声も聞いた事もない。
そんな架空人物とも言えるあの人に出会った俺は、あの人にまた会いたいと心の中で思っていた。

また会って、色んな話を聞きたい、と。

「な、ると…」

「ん?」

「どうして暗部に入ったんだ…?」

こんな形でまた会えるとも思ってもみなかったけど。

「守りたい人がいたから」

「…守りたい…」

「あの人には、本当に感謝しきれない程の愛情をもらったんだ。
実の子供でも孫でもない俺に、里の奴ら殆どから忌み嫌われてる俺を…
あの人は渦巻 鳴門として接してくれた。
ありがとう、なんてレベルじゃない。
だから、俺は其の人の為に強くなって、其の人を守れるだけの力が欲しかった…」

其れを語る鳴門の表情は凄く穏やかだった。

「木の葉にはあの人がいるから、俺も安心して帰ってこれるんだ」

「…其の人が、木の葉からいなくなったら…?」

「木の葉を抜ける」

「Σなっ!?」

「今の俺が存在する理由は、あの人が死ぬまで傍にいてやる事。
あの人が何かしらの理由で危険になった時、守る側に回る事。
あの人が一生懸命に守ってる木の葉を、俺も一緒に守りたい」

其れだけ其の人を思ってるのか…。

「…」

「恥ずかしくて、あんまそんな態度とか言葉なんかは言ってねぇけどな」

そんな瞬間こなければいいのに、そう思った。
折角、本当の鳴門に会えたのに。

















「待ってたぜ?翔赫」

昼間の任務で言われた通り、俺は夜、執務室に足を運んだ。
既に其処には鳴門がいた。

「…」

20代前半で170cmあるかないかくらい。
腰まである金髪を一つに結んだ、蒼い瞳、細いく幼なさを残した体。

あの日は仮面で顔までは見えなかったけど…何となく鳴門っぽい感じがした。

「さて、と。
昼間、俺は何処にも所属してないとは言ったが一応部隊はある。
暗憔部隊って言って、まぁ今後誰かを入れる予定はないからあまり名乗ってはいなかったけどな。
で、返事聞かせてもらってもいい?
暗憔部隊にこねぇか?」

組む、って此の事だったのか…。
しかし、三代目が言うには鳴門は五大国最強の忍。
そんな手の届かないような人と俺が組んでもいいのか?

「俺でいいのか?」

「だから言ったろ?欲しいって思っちまったんだ、お前を」

妖艶な笑みを浮かべる鳴門に俺は胸が高鳴った。

「翔赫よ、蒼翠がこう言うのは本当に珍しい事なんじゃ。
蒼翠がお主を認めておるって理解してもよい。
認める事自体が珍しいからの」

鳴門が俺を認めた…?

「一緒に天辺行かねぇか?」

天辺…。
もう、事実上鳴門は天辺取ってる気もするけどな。

「俺でよければ…よろしくお願いします!」

滅多とないチャンスだと思い、鳴門と一緒に組む事を決意した俺。

「よし決まりだな」

「移動って事でよいか?」

「嗚呼」

此処で1つ疑問が浮かぶ。

「あの…」

「何じゃ?」

「総隊長への顔見せは…」

移動や部隊を作る際に、総隊長へ報告と顔見せがあった筈…。
其れも実名と顔を見せなきゃいけない。

「そんなの必要ねぇよ」

「どうゆう…」

必要ないって、そうゆう決まりじゃなかったか…?
其れをあっさり却下するとか…。

「総隊長が俺だから」

「…」

サラッと言った事実に俺は頭を抱えた。

俺が総隊長だから…?

「え、総隊長って郡何とかって言う人だったんじゃ…」

「何年前の話してんの?」

「え?」

「俺と変わってもう7年くらいになるぜ?」

7年!?
ちょ、7年前って言ったら俺らまだ3、4歳だぞ!?

「蒼翠はな、3歳の頃から暗部におるぞ。ま、鳴門も今の今まで一匹狼じゃったけどな」

「初めて聞く…」

「其れはお主も一匹狼だったからじゃよ」

そうか、俺他の奴らなんて興味なかったからな…。

「そーゆー事だから、此れからよろしくな?翔赫」

「こちらこそっ、よろしくお願いします!」

勢いよく頭を下げた。
すると、ポン、と肩に手が置かれた。

「堅くるしーっての、普通でいこーぜ、な?」

「いえ、其れをすれば私は甘えてしまいそうなので此れでいかせて頂きます」

「…やれやれ」

苦笑を零す鳴門がいた。

此れから恥じる事のないよう、精進したい。
此の方が安心して背中を任せてもらえるように…。

「さて、任務に行くか」

「御意」

何れは、あなたの隣に…。



End…

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