擦鳴+下忍

 
爺からの命令で、下忍から優秀な忍を連れてこいとの事だった。
其れは所謂俺の部下となる奴だ。

イコール、俺の事をバラす前提で話が進む。
もし見つかったとして、其奴を俺が鍛えなきゃならないって事にも。
別に鍛えるどうこうの問題ではなく、下忍に見込みがある奴がいるかどうかだ。

「火影さまもどうして急にそんな事言い出したんだろうね…」

「俺が知るかよ」

こっそりと俺と会話してるのは上忍の畑 案山子。
此奴は本当の俺の事を知っている。
暗部任務も一緒になった事もあり、爺の計らいか俺の担任上忍となった。

まぁ、案山子が担任でよかったとはほんの少しだけ思ってたり。
敵が現れたって多少動きやすくはなるかな?
1人だけ違えばな…。

「で、話が上手く進み過ぎてねぇか?」

「此れも火影さまの好意だと思えば?」

「…思えるかっての」

下忍の中から厳選しろとは言われたが、よりによって今日、下忍任務でルーキー全員が目の前にいた。

桜、佐助。
猪、鹿丸、蝶辞。
牙、雛多、滋乃。

連れて来いって言った次の日だぞ?
偶然過ぎる気もしない事もないが。

まさか、って事も有り得る。

「ねぇ?鳴門」

「何だ」

「人数の指定はなかったの?」

「ねぇよ、んなもん」

1人でもいいし、2人でも3人でも。
爺にしてみれば俺の部下になる奴は誰だっていいんだ。
ただ、俺が1人じゃなければ其れでいいって思ってるからこそ、部下を作れだの煩く言うだけの事。

「じゃあさ、手っ取り早く桜と佐助でいいんじゃない?」

「適当な事を言うなっての…育てるの俺だぞ?」

桜はまだしも佐助は絶対無理だろうなぁ。
彼奴、ちょっと下忍ではずば抜けてるからって天狗になつてる所あるしな。

ましてや、俺の下にすんなり付くとは思えねぇもん。

「鳴門ならどんな子でもちゃんと育てるでしょ?」

「…はぁ」

其れは否定しない。
俺が選んだ奴を、俺の部下として傍に置く以上、徹底的に鍛え上げるのには変わらない。
だけど…

「俺の考えてるのは其処じゃねぇの」

「??」

「見込みがあるかないか」

俺は下忍たちを眺めていた。

「俺の下に付くって事は強くて当たり前、頭の回転早くて当たり前だろ?
全てにおいて当たり前にこなさないと俺は絶対認めないから」

「そうなんだけどね、次元がね、うん、違うからね」

「だから根性ねぇと無理だって話。
強くなりたいってのは誰だって思ってんだろ。
でもしがみつくくらいの根性あるかないか、其れを俺に見せるかどうか」

桜と猪は佐助を取り合い
牙は赤丸と一緒に遊んでるし
滋乃は1人虫を見つけてるし
鹿丸は木に寄りかかって寝てるし
雛多は紅の所にべったり

見た目で判断するのはどうかと思うが、誰1人として見込みがない気がする。

「此の中から選べって言う爺も爺だな…」

「ねぇ、なら初めからバラしちゃったらどう?」

「…どうゆう意味だ?」

「いいからいいから、鳴門は状況に合わせて動くだけでいいし!」

「…テメェの指示で動くのは癪だが、まぁいいだろう」

















やっと始まった下忍任務。
ルーキー全員集合で、何をするかと思いきや…

「「草毟りって…」」

「もっとすげー任務なかったのかよ!」
「アンアン!」

「無理を言うな牙。何故なら、俺たちは下忍だからだ」

「でも草毟りって…」

広大な敷地面積で、1班だけじゃ何日あっても足りないな。

「ほら、無駄口叩く前に早く取りかかるぞ」

案山子の奴、何をする気だ…?
状況に合わせて動けだの言ってたが。
取り敢えず我慢して草毟るか。

「…」

何時もと変わらない光景。
下忍らしいのんびりほわわんとした、任務。

其れが、一瞬にして変わった。

「渦巻 鳴門だな」

現れたのは他国の忍。
どうゆう事だ。

チラリと案山子を見るとニコリと笑っていた。

演出、は演出か。

「誰だってばよ…」

「我らの恨みを晴らさせてもらう」

「恨みって何だってば?」

演出とは言え、どう動くべきか。

「そうよ!鳴門が何したって言うのよ!」

「てゆーかアンタたち何処の国の忍者よ!」

「お前たちは下がれ!」

ササ、と上忍たちが俺たちの前に。

「大人しく渦巻 鳴門を差し出してもらおう」

「さすれば、命までは取らない」

「さぁ、どうする?」

少し疑問に思った。

此奴ら、分身なんかじゃねぇな。
生きた人間であるのは確かだった。
1人1人チャクラの大きさ、臭い、心臓の音もズレている。

ついさっき、急遽案山子の提案に乗ってはみたがあまりに不自然だ。

「(案山子、此奴ら誰だ)」

「(え?俺が作った分身だよ?)」

「(アホ。よく見ろ、此奴ら生きた人間だ)」

「(え?……………あ、本当だ)」

もう何でこう案山子って奴はバカなんだ。

「(じゃ、もう此奴らでいいんじゃない?)」

軽く言うんじゃねぇよ、バカ。
またどやされる俺の身になってみろ。
耳にタコが出来るっての。

「(じゃあ鳴門、ファイト!)」

「(テメェ後でぶっ殺す!)」

「(ふふv)」

どうしたもんかなぁ。
変化した所で雛多の白眼があるし、匂いに敏感な牙もいる。

「さぁ、どうする?」

しょーがねーか。

「先生?」

「どしたの?鳴門?」

振り向いた顔がニコリと笑っていて、ちょっとイラっとした。

「どいててくんない?面倒だからぶっ殺す」

「やる気満々だね(笑)」

「煩い、早く退け」

「はいはいv」

ちょっと待て。
爺の急な部下作り命令、案山子の協力的手助け…。

嗚呼、そーゆー事だったのかと。
自分の中で決定打が出てしまった。

「案山子、知ってただろ此の事」

「Σっ!!!おっ俺は悪くないからね?!
火影さまが手伝えって言ってきたんだから!」

やっぱ手ぇ組んでやがったか。
くっそ面倒な事しやがって…!

「案山子!何考えてるんだ!」
「鳴門!早くこっちに来なさい!」
「ちょっと案山子先生!?」
「鳴門1人に…!」
「無理だ!なぜなら俺たちはまだ下忍で、戦闘経験も…」
「そんな解説みたいな事いらねー!」
「鳴門を助けなきゃ!」
「そ、そうだよね!鳴門くんを助けないとっ」

此の状況を作り出す為に、爺と案山子が手を組んだんだ。
クソったれがっ
俺の情報を安々と売りやがって…!

「大丈夫だから亜須磨も紅もお前たちも、ちゃんとしっかりと鳴門を見ておくんだ」

「「…え」」

「鳴門はね、本当は強いんだよ」

目の前には他国の忍が10人そこら。
刀が多いな…。
まぁ、俺の敵ではないが。

どうやって殺すかな。
下忍たちもいるし、あんまグロそーなのは避けた方がよさそうだなぁ。 

「あっさり裏切られたな、渦巻 鳴門」

「は?意味不明なんだけど」

此奴ら何アホな事言ってんの?

「我々に恐れをなしたか…無理もない」

「さぁ、渦巻 鳴門貴様の命も今日までだ!」

此奴ら馬鹿じゃねー?
どんだけ自信満々なのw
ちょーウケる!

「お前ら如きで此の俺に助けなんてマジで有り得ねぇー。
裏切られたんじゃない、俺だから必要ねぇの。
其れにね、俺の首がそう簡単に取れると思うなよ?」

言いながらゆっくりと右手にチャクラを集め出す。
其れが刀の形を留めれば、戦闘の合図となった。

「俺に喧嘩売った事を後悔させてやる」

ちゃんと仕事はこなすさ。
彼奴らが肉眼でも見えるスピードで見せて、頭で考えさす時間も与えてやる。
其れでちゃんと考えた上での答えを聞いてやる。
受け入れるか受け入れないか。

受け入れるのであれば、其の中から決めたっていいよな?
無理強いはしたくないし、本人の意志を尊重してやろうじゃないか。

なぁ?案山子。

術と言う術も使わず、チャクラ刀のみで終わったチャンバラごっこ。
彼奴らの見えるスピードで戦った所為か、思いの外時間がかかってしまった。

俺に喧嘩売ってきた奴らは血を流ながら地面へ倒れている。
もう息はない、確実に急所を狙ったからな。

「………」

「「…………」」

さて、どうなるかな。
クルリと振り向いて見渡してみれば何、つーか全員が固まっていた。

まぁ、当たり前か。
雛多に至っては目を背けてるし。

「案山子せーんせ?」

「え、ちょっ、やだ鳴門どーしちゃったの!?
気持ち悪っ」

「おいコラテメェ、何失礼な事言ってんだよ」

「だって鳴門が俺の事普通に先生とか!」

「大体テメェが易々と爺の企てにノるからこんな面倒な事しなきゃなんねぇんだろーが!
彼奴ら見てみろ!固まってんじゃねぇか!
どーしてくれんだよバ案山子!」

「いやいや、俺が火影さまの言う事拒否れる筈ないでしょ!」

苛々しつつ案山子とこんな言い合いをしていると、

「案山子…」

「??」

亜須磨が割り込んできた。

「本当に、鳴門なのか?夢じゃなく現実??」

「そうだよ。現実。此処にいる鳴門は本当の鳴門の姿で、まぁ極秘だったから一部の人間しか知らなかったんだ」

「何故なんだ…何故、極秘なんだ…?」

事の重大さを亜須磨は分かってないみたいだ。

「俺が、あの渦巻 鳴門が暗部に所属、ましてやトップに君臨してるって知ったらどうなる?
クーデターじゃすまねぇだろ。
だから極秘なんだ。其れに、俺は今までずっとソロでやってきてなんら不満もなかったのに、爺が部下を作れだの煩いんだよ」

「ちょっと待って鳴門…部下ってなによ…」

「其のまんまの意味だが?」

「まさか!此の子たちの中から部下にする子を選ぶって言うの!?」

「文句があるなら爺に言えば?そう言ってきたのは爺だぞ?」

子供だからって理由は通用しない。
忍になっておきながら、遅い早いなんて関係ねぇだろ?

「誰も強制なんてしねぇから安心しろ。
俺は部下にする限り、其れ相応のレベルになるまでは面倒見てやる。
ただ、途中で諦めるようなら容赦なく切り捨てる。記憶も消す、其れまでやってきた全てを奪う。
其れを踏まえての覚悟があるかないかを問うんだけど、おまえらどうしたい?」

暗部ともなれば日常茶飯事に人の死に触れる。
平気な奴とか多分、此の中にはいないだろうけど、其れでも強くなりたいって気持ちが強いかどうか。

「拒否権はいくらでもくれてやる。
だが、やるからには徹底的にやるから興味本位とかな生半可な覚悟で決めるなよ?」

「因みに、鳴門と暗部での任務で何回か組んだ事あるけど俺手も足も出なかったからね♪」

にっこり笑って爆弾落とすなアホ…。

「そんなに、凄いんですか…?」

「凄いも何も。鳴門は五大国最強の忍と言ってもいいくらいじゃないかな?」

「五大国、最強…」

「まぁ俺の下に付きたいなら俺は拒まない。
本気で強くなりたいヤツだけ、言いにこい。
甘えや優しさはないに等しいと思ってくれて構わない。遊びじゃねぇから自分の命かかってるからな。
最終的にいてもいなくても極秘だから、一応此処にいる奴の俺に関しての記憶は消させてもらうから其のつもりで」

此のくらい脅してれば大丈夫だろ。
そして俺は瞬身で近づき亜須磨と紅の額を小突けば、ドサリ、と仲良く地面へと倒れた。

「お前らには考える時間をくれてやる。其の覚悟があるなら今日の夜執務室までくる事だ。
他言無用なのを忘れんじゃねぇぞ?
案山子、此奴ら頼むな」

「はいはい」

彼奴らも今必死に頭の中で整理しながら考えてるんだろう。
其れでいい。自分で考えて自分で決める。
其れに意味があると俺は思う。

「って事で、ちまちますんのは性に合わないからさっさと終わらす」

印を組み、風遁でだだっ広い草原の草を綺麗に刈り取った。







待つとは言ったが実際の所、俺は誰も来ないと思っていた。

「来ないのぉ」

「…来て欲しいのかよ」

強い忍が増える事はなんら問題ない。
俺の寝る時間が増えてさえくれたら、其れでいい。
ただ、下忍なりたての彼奴らの中で暗部に興味が湧くのかって所だな。

「選んで来なかったのが驚いておる」

「強制的なのはしねぇよ。本人のやる気がねぇなら選んだ所で無意味だろ」

ーコンコン…

「Σ!!!」

ーガチャリ…

「此れはなんとも…」

「おまえら…」

扉を開けて中に入ってきたヤツらは誰1人として迷いのない眼をしてた。

「決定、かの?」

「まぁ仮決定くらいかな」

決定は何ヶ月何年先か。

あーまた忙しくなるな…。

俺、ちゃんと寝れるかな…。



End…

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