擦鹿鳴+桜佐←アンチ案山子

 
「なぁ爺…」

「どうした?蒼翠よ」

今は夜の執務室の中。
暗部としての仕事を終えて、報告書を渡しにきていた。
俺1人じゃない、部下である翔赫こと奈良シカマル、戒俚こと団扇サスケ、神楽こと春野サクラも同席している。

「カカシ、どうにかなんねぇの?マジウザいんだけど…」

下忍の顔の渦巻ナルトの担任上忍な、彼奴。

「ウザい、とな?」

「彼奴、任務中ずっと総隊長に殺気向けてんだよ…」

「そうなの。私も戒俚もカカシ先生が総隊長に殺気向ける度ヒヤヒヤしてるってのに…」

何時キレるか、俺だって分かんねぇ。
彼奴次第だよな。

「大概、我慢も限界ですよね…」

「翔赫、やっぱそう思うだろ?何時キレても可笑しくねぇよな」

「うむ。困ったものじゃな…」

爺が嘆くのも分かる。
彼奴は元暗部。
其れに、現総隊長である俺を慕っているからだ。
でもそんなの、俺から言わせりゃ関係ねぇよ。

「何が起こっても、俺は知らねぇぜ?」

「俺は蒼翠さまに言われるまで、何もしませんが…」

「私も」

「俺もだ」

あっちから喧嘩売ってきた場合、何と言われようが俺は買うぜ?

「其の時がくれば、じゃが。
其れは蒼翠に任せる。ただし、殺生はいかんぞ」

「御意」

よし、此れで彼奴をギャフンと言わせてやるよ。

散々好きにやらせてやったんだから、覚悟はしねぇとな。
なぁ、カカシ…?














次の日。
彼奴は凝りもせず、俺を視界に入れた途端に殺気を向けてきた。

あー腹立つ。
殺気を向けてくる此奴に、苛立つ俺。

「な、先生!今日の任務は何だってば?」

「今日はね任務はないのよ。ちょっと面白い事考えててね…」

意味深な笑いを零して、また俺に向ける殺気。

本当にウザいんだけど…。
いや、マジで。

いっその事、殺してしまいたいよ此奴の事。

だけどなぁ爺が殺すなって言ったし…。
本当、我慢ばっかしてるとよくない事が起こるぜ?














連れて来られた場所は初めての演習場所。

サクラ、サスケの3人で案山子の腰にある鈴2つをカカシから奪うあの。
あの時もかなり殺気立ってウザかったけど。

「先生ぇ、此処で何するんですか?」

「ん?今日はね、1vs1の演習だよv」

「よっしゃあー!サスケ、勝負だ!絶対、お前にぁ負けねぇっ!!」

普段の俺らしく、佐助を指指しながらそう言うが…

「コラ、お前の相手は俺だよv」

始めっから其れが狙いか。

昨日今日でこんな状況になるとはまたついてんだかついてないんだか…。

可笑しいとは思ってたけど、ま、取り敢えずは様子見かな。

「よし、カカシ先生…俺が勝っても知らないからな!」

「はいはい。サクラとサスケもペアで演習始めてね?」

「(気を付けてね鳴門…)」

「(わぁってるよ。じゃまた後でな)」

「(あぁ)」

サクラとサスケ2人と目で会話をし、カカシの後を追った。

さて…カカシの野郎はどう出るかな?











畑カカシ。
写輪眼使いで、四代目火影である波風ミナトの教え子。

其の四代目の息子が俺だって知ってる筈で、木の葉を守る為に九尾を俺の臍に封印した親父が術のリスクで死した事を、俺の所為だと恨むのは筋違いってヤツだよ。

此奴、絶対頭可笑しい。

俺は俺だし。
親父が勝手に九尾を俺の体内に封印したのに、自分が使った術で死んだのに、俺の所為にするなよ。

だから、更に腹が立つんだ。




サクラやサスケから離れ、森の中へ進むカカシを3歩下がって追っていた。
其の間も殺気は出たまんま。

ねぇ、マジでいい加減にしろよなテメェって言いたいけど、此処は穏便に。

「なぁ先生…」

「どうした?ナルト」

「其の殺気閉まってくれってばよ?」

「狽チ…」

勢いよく振り返ったカカシは目を見開いて、さっきよりも数倍殺気を倍増させて睨んできた。

今日の演習も、テメェと俺で組んだのも、2人きりになる為なんだろ?
サクラとサスケが見てない所で、俺に何する気だろうね、此奴。

「そんなに殺気立つなってば、カカシ先生」

「ナルト、お前…何とも思わないのか…?」

「何とも?何が?」

「殺気には気付くし、其れに…」

にっこり笑っていると、カカシの顔はみるみるうちに歪み始めた。

そうだよね、俺の事憎いもんね?
気付いてた事じゃない、カカシは殺気を送られてるのにケロリとしてる俺に腹を立ててるんだ。

「此の程度の殺気で、怖がるとでも思ってた?馬鹿だね先生…俺はね、」

にっこりと笑った侭、カカシを見ながらそう言い、そして、すぅと笑いを消してカカシを見つめた。
殺気はなしで。こんな所で殺気出してカカシが失神したら面白くねぇじゃん。

「善人面するテメェに飽き飽きしてんだよ。
毎日毎日飽きもせず殺気向けてくるし…
そんなに俺が憎い?そうだよね、先生の大事な大事な、四代目が死んじゃったんだもんね…」

「言うな…」

「でもさ、自分の父親けなすのもどうかと思うけど、親父も馬鹿だよね。
たかが術1つで死ぬなんて、どうかしてるよマジで」

「煩いっ!」

「俺だったら、普通に殺すけど」

「…お前に何が分かる…
お前にミナト先生の何が分かるって言うんだっ!!」

カカシは怒りを露にした。

「会って話した事ねぇのに分かる訳ねぇじゃん。
でも1つ言えるのは、親父はまだ考えが甘い事だな」

「……っ」

「ねぇ、先生…俺を殺したい程憎んでる?」

「あぁ、憎んでるよ。此の手で殺したい程、お前が憎い。
お前がミナト先生の息子であっても…先生の仇なんだ」

此奴もどうかしてる。
俺が仇?
何言ってんだよ。
俺は無抵抗の侭、臍に九尾を封印されたんだぜ?
抵抗する力も考えも喋る事も全く出来ない赤ん坊だった俺に、親父は九尾を封印した。

其れなのに、仇だの、化け狐だの。
本当、いい加減にしてくれよ。

「仇だか何だか知らねぇが、俺も言わせてよ先生。
くだらねぇ…マジくだらねぇ」

そうゆうの、もう聞き飽きたんだよ。

「殺したかったら殺せば?
丁度いいじゃん。誰も見てないし…
でも、テメェが俺より強かったら、の話だけど」

「っ…強かったら、だと?」

いいねぇ、其の顔。
恨みが籠った顔して、本当に俺の事嫌いなんだな。

お互い様だよ。

俺も、テメェが殺したい程大嫌いだからよ。

「何、俺に勝つ自信ないんだ?」

「何言ってるのナルト。お前は下忍で俺は上忍だよ?
勝負は目に見えてるだろ」

勝ち誇った顔をしてカカシは上から俺を見下した。

馬鹿だな此奴も、俺を其処らへんの下忍だと勘違いしてやがる。
あ、其れは違うか…

「そうだよな…知らないで当たり前だよな。俺の事極秘だし、知ってたら逆にビックリだけど…
表向きの俺は渦巻ナルトはドジで間抜けで忍者のセンスがないただの下忍としか、知らされてないからね」

ずっと仮面付けてたのも気付かないお馬鹿さんたちだらけだもんな木の葉は。

「知らされて、ない…?」

「俺かなり強いよ?」

そう言う俺をカカシは鼻で笑った。

有り得ない、そんな意味も含まれていた笑い。

「ナルトが強かったら今まで俺は苦労してないよ」

「信じないなら其れでもいいけど、死なない程度にしてやるよ」

ポーチの中から巻き物を取り出して、カリと親指を噛む。
流れ出る血を、開いた巻き物に線を引く

―ポンッ

煙とともに出てきた刀を手にした。

「来ないならこっちから出向いてやるよ」

瞬時にカカシの目の前に移動して、刀を振り下ろす。

―キィィイン…

カカシは其れをクナイで咄嗟に防いだ。

「知らないよナルト…」

「何が?」

「本当に殺しても…」

「だから言ったろ?
俺より強かったらの話だ、って。」

弱いのは目に見えてるけどな。
俺がカカシなんかに負けるかよ。







攻防を繰り返す。

俺の攻撃を防ぐだけのカカシ。
其れが続いていた。

「先生、守ってばっかりじゃ殺せないだろ?」

「煩いっ!」

つまんねぇな此奴。

有り難く思って欲しいよね。
だって、俺本気出してないもん。
本気だしたら10秒かからないだろうし。

「あ、そう言えば先生…」

腹が立っててすっかり忘れてたよ。

「暗部の総隊長の事、尊敬してるんだってな?」

「何で、そんな事…」

「知ってるのかって?其れはね…」

そう、暗部の総隊長が俺だとも知らないで…。
此奴は知らない侭、尊敬する蒼翠に慕い、ナルトには殺気を送る。

此処数年、トップを張ってきた此の俺に、勝とうなんて1億年早いよ。
つーかカカシなんて目じゃねぇけど。弱いもん此奴。

「蒼翠は此の俺だからだよ」

「狽」、嘘だっ!お前が蒼翠さまな筈がないっ!!」

「じゃあ、証拠を見せてやるよ。其処にいるんだろ?出てこいよ翔赫、戒俚、神楽」

そう言うと、サッと俺の後ろに立ち片膝を地面へ付けて頭を下げた。
すると、カカシはシカマルたちが現れた事に驚き、目を見開いていた。

「何で、貴方たちが…」

暗憔部隊メンバー、全員集合だな。
其れにしても此奴ら…。
何で暗部の格好してんだよ。
其れに、どうしてシカマルまでいんの?

「お前らなぁ…」

「だって、カカシ先生ってばナルトに何かするんじゃないかって思って!」

「其の声は、サクラ…?」

「桜だけじゃないぜ?カカシ」

「さ、サスケ…?」

「ったく、めんどくせぇな」

「シカマルまで…?!」

其の後、変化を解いて、3人はカカシを睨んだ。

サクラは曲刀、月下桜を
サスケは構え
シカマルは朱羅時雨を

其々、カカシへ向けた。

「先生、ナルトに手を出さないでくれますか?」

「何言ってるんだサクラ…此奴は九尾なんだぞ!」

「ナルトは九尾じゃねぇよ」

「サスケも目を冷ませっ!此奴は化け物なんだよ!化け狐なんだよ!」

「テメェの方だぜ、畑カカシ。其れ以上、蒼翠さまへの侮辱は許さねぇ」

「狽チ…」

ん、俺ってかなり愛されてるね。←
いい部下を持って俺は幸せだよ。

「先生…」

「…」

「最後に、いいモノ見せてあげようか?」

そう言って俺は印を結んだ。

口寄せの術…

ポフン、と煙とともに現れたものにカカシは目を見開いた。

「其、れは…」

「…こんな時間に妾に何か用か?蒼翠よ。
おや、そちは何時ぞやの暗部ではないか久しいの」

白蘭を見てカカシは固まった。
俺が蒼翠だと言う決定的な証拠だからだ。
此の白蘭は俺だけが口寄せ出来る妖狐。

昔、カカシと組んだ時に白蘭を見せた事があるからな。
其の時に契約は俺だけ、ってのも言った。

「………白蘭とか言ったかな…」

「そうじゃ」

「ナルトは、本当に蒼翠さまなの………」

「知らなかったのか?昔からそちは蒼翠と任務をしておろう?」

「………………………」

カカシは黙り込んだ。
黙り込んで、放心状態になり動かなくなった。

「ナルトよ、妾は何か悪い事でも言うたのか…?」

「いや、言ってねぇよ。白蘭が来てくれて助かったよ」

「?」

「蒼翠さま、畑カカシはどうなさいますか?」

「病院にでも連れて行け」

「御意…」

シカマルは暗部へ変化し、カカシと一緒に姿を消した。

「あ、白蘭、呼び出したんだけどもう帰っていいよ。悪いな?今夜、呼ぶから」

「楽しみにしておる」











「宜しくお願いします」

あれから、数日後。
俺たち7班の元に新しい担任上忍がやってきた。

「そんな畏まるなよ」

「え、あ…はい」

大和班として、第7班は活動する事になった。

「今は下忍だから、敬語はなしよ大和隊長?」

「普通に話してくれて構わない」

「破ったら、俺らがする任務1人でやってもらうからな」

「其れは、勘弁して…欲しい…です…(汗)」

カカシはあの後、俺たちの担任を降ろされた。
爺も水晶で見ていたから、爺なりに考えた結果だろう。

そして、新しく暗部にから俺たちの担任上忍として、此の大和が任命された。

「ま、宜しくな天蔵」

「大和です」



End...

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