擦鳴(幼)←三代目
どうか… どうか…
此の老いぼれた爺の話を聞いて下され…
何処をどう間違ったのか…
「爺ちゃん」
何故此のように育ったのか…
「無視するなよ、ハゲ」
教えて下され!!←
「言葉使いがなっとらんぞ鳴門…誰がハゲじゃ!」
「爺ちゃんに決まってんじゃん。実際ハゲてっし」
渦巻鳴門、ただ今5歳。
遊び盛り食べ盛り悪戯盛り…。
だけならまだよかった。
「つーか、爺ちゃん俺早く忍者になる為のアカデミー行きたいんだけど」
神の悪戯か、5歳という子供に…いや、此の子が目覚めたのは3歳の時だ。
突然の暗部宣言。
《俺、蒼翠って名前で暗部してるんだ!》
にっこり笑った顔を見て、心臓が止まるかと思ったわい…。
しかも、其の蒼翠と言う名の暗部は一匹狼で群を嫌っていた。
1人でSランクの任務をこなして、何事もなかったかのように成功させて帰ってくる。
そんな人物が鳴門とはつい知らず、Sランクの任務を出していたとは…。
何とも愚かな行為をしていたのかと、頭を悩ませた。
《暗部を辞めろ?イヤだよ楽しいのに》
物心付く前に、あの子は其の手を血で染めていた。
其れなのに其れを楽しいと…。
涙が出た…。
《心配しないでよ爺ちゃん》
あの子は1人で生きていくと言った。
誰の力も借りず、己のみの力で這い上がると。
《俺、弱くないから》
真っ直ぐな瞳に、冷たさを感じた。
まるであらゆるモノ全てを拒否するかのように、其の瞳に、恐怖すらも感じた…。
そして、火影邸の敷地内に鳴門を住まわせておいた家から鳴門の気配が消えた…。
《ちゃんと寝てるし、食べてるから》
鳴門に会えるのは蒼翠としての任務の時。
今、何処に住んでるのかさえ知らないワシは情けなくて仕方がない…。
「聞いてんのか?爺ちゃん」
「聞いておるぞ。しかし、アカデミーに通うにはちと早くはないか?」
「だって、何もする事なくてつまんないんだもん」
「…困ったのぉ」
何もする事ないと言われてものぉ…。
「あ」
「ん?」
「古い研究室とかねーの?」
「研究室、とな?」
「術開発したり出来るかなって」
「大蛇丸が使っておったばしょでよいならあるが…他は今でも使っておるし」
群を嫌がる此の子の事じゃ、きっと…
「大蛇丸?薄気味悪い奴のオサガリなんて嫌…ましてや知らねー奴と一緒にいるのも癪に触る。
仕方ねーか…」
ほれ、みてみろ。
断ると思ったわい。
「自分で作るか」
「Σお主!?」
「何?どーしたんだ?」
自分で作るとは何じゃ!?
研究室は自分で作れるようなモノなのか!?
ましてや5歳の子供に其れが可能と!?
「どうやって作るんじゃよ…」
「まずは木遁で土台作って…」
「ちょ、ちょっと待て!木遁を扱えるのか!?」
「使えるけど」
アッサリ簡単に言うでない!!
木遁を使えるのは今や1人だけしかおらぬ!!
「何処でどうやって手に入れたかは企業秘密だけど。
見せてやろうか?」
そう言うて鳴門は印を組む。
ニョキニョキと掌から生えてくる其れは間違いなく木遁の術…。
「お主は何処まで行くつもりなんじゃ…」
「もちろん、天辺でしょ?」
どうか… どうか…
此の先…
此の子に
手を差し伸べてくれる人が現れますよう
願っています。
end…
[ 33/33 ]
[
*prev] [次へ*]
[
しおりを挟む]