擦鹿擦鳴

 
「渦巻 鳴門、悪いが死んでもらう」

何時ものように暗部の者が奇襲をかけてきた。

気配を感じると、俺はすぐ散歩に行くフリをして家を出る。
そして、暗部の者を人気のない場所まで誘導するんだ。

其れを知りもしない暗部の者はノコノコ付いてきて、俺を取り囲む。

「…」

今日は2人なんだ。
昨日は10人以上いたのに。

「今までどうやって回避してきたかは知らないが、今日で終わりだ」

「覚悟し…」

「昨日の奴と同じ台詞」

クスクスと笑ってやれば、暗部の者は俺に殺気を向けてきた。

「どうやって回避してきた?
誰かに助けてもらったかのような言い方だな?其れってば。
よく考えてみろよ。
俺は皆の大嫌いな九尾を腹ん中で飼ってる人柱力だぞ?
そんな奴に誰が助けになんか入る?」

憎んでる奴が殆どな此の里の中で、こんな厄介者を誰が好きで助けになんか入るかよ。

1人を除いて。
ま、其の1人も俺が何か言わない限りは動く事はないけど。

「今の監視役の案山子先生は1人で暗部を相手に出来る程そう強くはないし、俺を助けるなんて気は更々ねぇってばよ。
他の忍たちも同じだ。
俺を助けるような忍は木の葉で何処を探しても見つかりっこないさ」

俺がそう言えば、暗部の者も多少納得した感じだった。

目の前にいる暗部の者もきっと同じ。
他の暗部に襲われてるのを発見したとしても、俺を助けるような真似はしない。
逆に襲ってる方に加勢する筈。

「じゃあ、昨日向かわせた奴らはどうした!」

「連絡もなく消息不明になっているんだ!」

「殺したよ?」

俺がそう言えば、2人は刀を抜いて俺に向ける。

「馬鹿な事を言うな。
渦巻 鳴門がたった1人であれだけの数の暗部の者を殺した?」

「嘘を付くならもう少しマシな嘘を…」

「嘘なんかじゃないってばよ。
彼奴らは俺が殺したんだよ、こんな風に」

分身を作り、うちの1人の背後から刀で胸を一突き。

「煤cぁ…っ」

「何時の間に!?」

突き刺した刀を抜けば、其奴は前のめりで倒れる。
印を結び、其の体をもう一回刀で突き刺せば青い炎が其奴の体を焼き消した後分身を消した。

「此の術は…!?」

「此れで分かったでしょ?
暗部が何人こようと1人で勝てるから助けなんていらないんだよ」

「貴様、何者だ…!」

「…」

何者?
其れを言う?

「俺は渦巻鳴門だってばよ?」

「其の術は見た事がない…
下忍が此れ程の術を扱える訳が…!」

「此の術は俺のオリジナルだからな、知らなくて当然だってば」

「煤cオリジナル…?」

「嗚呼。
こうすれば、わざわざ死体処理に渡す手間が省けるだろ?」

「下忍が術を独自で開発したと言うのか…!馬鹿なっ」

少し喋り過ぎたようだ。
此奴も早く始末しないとな。

「誰の命令かは知らないけど、悪いが逆に死んでもらうぜ?」

「っ…」

先に動いたのはあっち。
振り下ろしてくる刀を、分身の刀で受け止めて、弾き返す。

「何時印を!?」

「だから、アンタ程度の力で俺を殺そうなんて考え自体が間違いなんだ」

「狽ネっ…ぐあっ」

両腕

「ああっ…!」

両足

クナイを刺して動きを止める。

男は腕は垂れ下がり両膝を付き、俺を見上げた。

「どう?今の気分は?」

「俺を殺したからって、お前を狙う敵はまだいる」

「だから?
向かってくるなら俺は其れを消すだけだ」





死体を処理した後、

「蒼翠さま」

「翔赫か」

姿を現した翔赫。

「三代目がお呼びです」

「…爺が?」

「例の者たちの話があるとかで…」

「分かった」

変化をした後、俺は翔赫と一緒に三代目の待つ執務室へと向かった。





















「待っておったぞ」

執務室に入り、念の為に結界を張る。

「話は翔赫から聞いておろう?」

「嗚呼。
で、例の奴らが動き出したとか?」

「其の件についてじゃが、鳴門…
もしかすると下忍の任務の時に現れる可能性が出てきた。
下忍の時のお主は今とは違う」

「んな事くらい分かってるっつーの」

「くれぐれもキレるでないぞ!?
お主は一応極秘なんじゃ」

「嗚呼」

そうは言ったものの、我慢出来たらいいけどな。

「で、其の例の奴らだけど誰かってのはもう調べてんだよな?」

俺がそう言えば、翔赫が近付いてきて耳打ちした。

「もちろんです。
主犯は貴方さまもよくご存知の、―――です」

名前を聞いた瞬間、口端を持ち上げた。

「彼奴か…」





















其れから、幾度も俺の所に暗部はやってきては死んでいった。
本当に自分たちの立場を分かっていない。
俺と鹿丸は謂わばツートップの実力を持ち、影で木の葉を守っていると言うのに…。
上のもんに歯向かったらどうなるか、其の身で分からせるしかないだろ。

「な、何よアンタたち!」

「どうして暗部が!?」

また性懲りもなくやってきた馬鹿ども。

5人の暗部が俺たちを囲んでいた。

今日は合同任務で鹿丸たちの所と里を出ていたんだ。
亜須磨は任務で出払ってて、俺たちの担任である案山子1人が付いてきていた。

ちょっと気を抜いていたな。
任務中にやってくると爺から聞いてはいたが、こんなに早く来るとはな…。
しかし、今まで任務中に襲ってくるのだけはなかったんだが、其れとも何か。
ずっと失敗に終わって苛立ってきたのか?

チラッと鹿丸を見る。

(どうする?)

(鳴に任せる)

俺に?
そんな事言うんだ?

桜たちがいるってのに…。

「お前たち暗部が何の用だ」

「畑 案山子、其処をどけ。
我々は渦巻 鳴門に用があるんだ」

「鳴門、に…?」

案山子は俺を見た。

「今度こそ、息の根を止めてやる」

1人の暗部がそう言った瞬間、此処にいる下忍の顔が一斉に俺に向いた。

「どうして鳴門を!?」

「鳴門が何したって言うのよー!」

「そうだよ!」

「暗部に狙われるような事したのか!?」

上から桜 猪、蝶辞 佐助。

「俺は何もしてないってばよ?なぁ、鹿丸」

「嗚呼、鳴門は何もしてないな。
強いて言うなら、躾だなアレは」

うん、そうそう。
アレは躾だよ。

「し、躾って…」

「何よ其れ…」

「其の言葉の通りだってば。
能無しの部下に直々に躾してやってるだけ」

クスクス笑いながらそう言った俺に、暗部たちは殺気を送ってきた。

「「狽チ!?」」

其の殺気に耐えられなくなった桜たちは地面に尻を付け、座り込んだ。

立っているのは俺と鹿丸、案山子の3人だけ。

「狽チ…何故立っていられるんだ!?」

「そんなの簡単な理由だよ。
此の俺が、そんな殺気に怖がる訳がねぇ。
殺気っつーのはこうゆうモンを殺気って言うんだ」

4割程の殺気を暗部たちだけに送った。

すると、彼奴たちは

「っ…ぅ、あ…!」

「な、ん…だ…此れはっ!?」

殺気に耐えられなくなったのか、片膝を付いた。

半分程度で此のザマ。

其れでよく俺を殺そうと考えたよね。

「貴様っ…誰だ!」

「正体を現せ!」

また同じ台詞かよ。
もう其れ聞き飽きた…。

「今まで渦巻 鳴門に成りすましてきたのか!?
だからことごとく…っ」

「だぁかぁらぁ、躾だって言ってんだろ?」

少しずつ、確実にイライラしてきた。
そんな俺を見抜いたのか、鹿丸は案山子以外を結界の中に閉じ込めた。

「鹿丸何してるのよ!?」

「怪我したくなかったら此の中で大人しくしてろ。
騒ぎ立てんなよ、死にたいのか?」

鹿丸がそう言えば、桜たちは何も言い返せずに大人しくなった。

「鳴門、桜たち取り敢えず目隠しさせるか?」

「いやしなくていいだろ」

「了解」

そんな会話の中、暗部たちに視線を向けている俺の後ろから、カチャリ、と音がした。

「…其れで俺を刺す?案山子先生」

「な、何を言ってるんだ鳴門っ」

「其の位置可笑しいよね?
普通なら、俺の目の前に来る筈でしょ?
其れなのに真後ろって…」

「な、何言ってるんだ鳴門っ
俺は今、お前たちをっ!?」

瞬身の術で案山子の後ろに回り込み、トンと背中を押した。
よろめきながらも案山子は俺を振り返る。

「何を…!」

「何って先生、そっちにいなきゃ」

「狽チ!?」

「なぁ、そうだろ?鹿」

「嗚呼」

俺の隣にやってきた鹿丸。
睨み付ける案山子と漸く立ち上がった暗部たち。

「先生なんだよね、暗部使って俺を襲わせてたの」

俺は暗部たちを裏で操ってる奴なんて本当はどうでもよかったんだ。

夜の任務とか最近少ないし苛々してたから丁度いい遊び相手になってたし。
鹿丸が独断で調べててくれてるって知ってたけどさ。

今日のは少し頂けないなぁ。

「何を証拠に!」

「証拠?証拠なら目の前にあるじゃん」

「アンタ、何で鳴門に殺気向けてんだよ」

「煤I?」

バレてないとでも思ったのか?
こんな分かりやすいモノに。

「俺を消そうとしても無駄」

「テメェらみたいなカスに俺らが負けるかよ」

「何だ…っ!?」

印を結び、術を発動させた。
特集な糸を案山子の体に巻き付けて、傍にある木に張り付ける。

「先生は其処で見てなよ。
今まで俺が何で生き残ってたかをさ…」

ゆっくりと右手にチャクラを集めていく。
長く細く、伸びた其れは刀のように…。

「其れ、は…っ」

気付いても遅い。
犯してはならない事をやってきたんだからな、お前は…。

「鹿は手を出すな」

「出さねぇっつーの」

さぁ、躾といこうか。

「俺は弱い奴が大嫌いなんだ…
ましてや、ギャンギャン吠える犬はもっと…」

瞬身を使い1人の暗部の首を跳ね、宙に舞う其の首を一刺し。

「「煤c!?」」

「俺が移動したのも分からない程度で…」

口端を持ち上げて目を細める。

「よく息の根を止めるなんて抜かしたな?え?」

片手で印を組むと、チャクラ刀の先に刺さった生首が青い炎に包まれた。

「な、何だ…此奴っ」

「此れが…渦巻 鳴門、だと言うのか!?」

「そんな…馬鹿な…」

「今までの暗部も…」

そうやっと分かってくれたんだ。

だからって見逃す事はないけどな。
此の俺に喧嘩を売ってきた事、あの世で後悔すればいい。

残りの4人に20秒とかからずただの塊と化していた。

「鹿、後片付けよろしく」

「嗚呼」

俺は案山子の体に巻き付けていた糸を解いてやる。

「さぁ、案山子残りはお前だ。
爺から殺生を多少禁じられてっからなお前は生かしておいてやる」

暗部と違って表に顔出してる奴だからな。
本当はズタズタに切り刻んでやりたいけど…。

「な、鳴門が…蒼翠さま、だなんて…」

「…」

「嘘だ…総隊長が、鳴門…」

俺の話聞いちゃいねぇな。
仕方ねぇ…。

俺は印を結び、人差し指で案山子の額を小突いた。

「鳴門?」

「案山子の記憶を消した、っつーより塗り替えた。
後々面倒だろうからな」

口寄せでガマを呼び出して案山子を木の葉へ連れ帰るよう指示を出す。

「さて、案山子も邪魔なモンもいなくなったな」

結界に閉じ込めた桜たちに目を向けると、顔が強張っていた。

「悪いな巻き込んで。
心配するな、お前たちに何かしようとは思っていないから」

優しく言ったつもりだったんだが、此奴らには其れはどうでもいい事のようだった。

桜や猪は目を見開いて怯えていて…

「鳴門、どうして…」

「アンタたち…」

実力を隠していた事や暗部に所属していた事が、同じ下忍たちにバレてしまったな。
また爺なこっぴどく怒られちまう…。

此奴らはきっと、目の前で起こった出来事をまた理解してないようにも見えた。

印を組むスピード
見た事のない術
隙のない動き

目の当たりにした桜たちは唖然としているんだろ。

「「……」」

今まで見てきた俺は真逆と言ってもいいくらいだからな。
下忍の俺は馬鹿だったし。

「な、鳴門…」

「何だ?桜」

「何で…」

「…」

言葉が浮かばない。
驚いているのは確かで、だけど其れをどう伝えたらいいのか分からない感じの桜。

すると…

「俺たちを、騙してたのか…?」

ゆっくりと佐助がそう言った。
佐助は今まで俺を鼻で笑ってきたからこそ、そう思えたのだろう。

「…騙す?」

「お前たちは確かに強い。
けど、だったら何で猫被ってまで俺たちと一緒にいたんだ!?」

そんな風に思ったのか…。

其れなら…

「今、其れを言う必要があるのか?」

「あるに決まってんだろ!」

そう叫びながら、佐助は俺に近付き、胸ぐらを掴もうとした手を鹿丸により阻止された。

「気安く触んじゃねぇよ」

「狽チ…」

「お前、何か勘違いしてんぜ?
俺と鳴門が猫被ってたのは別にお前たちを騙す為じゃねぇ。
此れは鳴門と俺に課せられた任務だからだ」

「に、任務…?」

「鹿丸…アンタ…」

そう任務だ。
任務だからこそ…

「俺たちはお前らを影で守…」

言い終わる前に鹿丸の口を俺が阻止した。

「鳴門…」

「違うだろ翔赫。
今は任務中だ」

「煤c申し訳ありませんっ
蒼翠さま…」

俺の表情が一変したのが分かったらしく、桜たちは冷や汗を流していた。
俺の刺すような目を合わすだけでジワリと汗が体から吹き出していて…。

「お前たちには悪いが、此れは一応極秘なんでな」























案山子同様に記憶を書き換え木の葉の病院に連れ込んだ。

「…鳴門」

「何だよ爺」

「案山子の事だがな」

「其の侭でいい。記憶も変えたし今日の事は俺が術を解かない限り戻る事もない」

「其れならよいのじゃが…」

また案山子が俺を殺そうとしてきたら別だけど…。
記憶を書き換えたっつっても今日の出来事だけだからな。
案山子が暗部を使って俺を殺そうとしていた事は残してある。

「心配すんなって…」

あんだけじゃ俺の怒りは収まってねぇからさ。



END...?


続くかもしれません…。

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