皇帝ルル←ナナ

 
どうして分からなかったのでしょうか。
お兄様の計画を。

私は、私の大切なモノが何か忘れていたのですね…。
























ブリタニア反逆者として捕えられた、黒の騎士団と私。
報道者の目の前で処刑される当日。

お兄様の下に、私はいた。

お兄様のやり方に反対した私。
お兄様の生き方に反対した私。

作られたお兄様なのに、何故気付かなかったのでしょう。

ごめんなさいお兄様。
私はやってはならない事をしてしまったのですね。

時間があるなら…。












「誰だっ!?」

誰かがそう叫んだんです。
私はチラリと前の方に目を向けると、其処にはテロリストであるゼロがいた。

ゼロは、お兄様ではなかったのですか…?
でもお兄様は此処に…。
では、アレは…?

銃弾も軽々と華麗に避け、ゼロは兵士たちの横を通り過ぎ、お兄様の前に降り立った。

そして、剣を構えたゼロ。
そして、微笑むように笑ったお兄様…。

「…………」

どうしてですか…?
何故、其のように笑っておられるのですか…?

剣がどんどんとお兄様に近付くにつれ、私は目を大きく開いていた。

「狽ワ、待って下さい!!」

ピタリ、と止まった剣。

声を上げたのはもちろん私。
上半身を起き上がらせ、上にいるお兄様とゼロを見上げる私の表情は今にも泣きそうな程に眉が下がっているのでしょう。
ですが、今はそうも言ってられません。

「お兄様と、お話をさせて下さいっ…」

「いいだろう」

ゼロはお兄様の首に剣を突き付けながら、私のいる場所へお兄様ともども、飛び降りた。

「…………」

目の前にいるお兄様の顔は、私には堪え難いものがあります。
先程の微笑む顔は何処へやら、今は私を冷たい目で見下ろしていました。

「お兄様、私は今までお兄様に酷い事ばかり言ってしまって…
私にはお兄様だけなのに…
お兄様は、私のたった1人のお兄様なのに…」

「ナ、ナリー……」

お兄様の目が揺らいだ。

「一番傍にいた私がお兄様を否定するなんて…」

其の時、首に突き付けられた剣が離れていき、お兄様は私を抱き締めて下さいました。

涙がとめどなく流れる。

本当に愚かだった私を許して下さい。

「ゼロ、お願いですっ…
お兄様を…私のたった1人のお兄様を殺さないで…」

「ナナリー……………




俺もナナリーに嘘ばっかり言って…すまなかった…」

「…お兄様っ」

あぁ、何時ものお兄様だ。
優しい声で、私にそう告げるのは紛れもなくお兄様だった。

「よかったじゃないルルーシュ。此れで仲直り出来たね」

パチパチと拍手するゼロ。
そして、カチャカチャと音をさせて、ゼロは仮面を取った。

「…スザク、さん?」

周りは騒がしくなり、ゼロに注目した。

―あれは、皇帝の騎士じゃないか!
―何故、彼がゼロなの?

「僕はゼロじゃない」

―え…?

スザクさんの口からとんでもない言葉が出、周りにいた者たちは驚きを隠せないでいた。

スザクさんがゼロじゃないなら、じゃあ一体誰がゼロなんだ、と。

「ね、ルルーシュ。そうでしょ?」

「な…何を言ってるんだスザク…貴様が、ゼロなのだろう…?(スザク、ちゃんと計画通りにしろ!)」

お兄様、声を抑えているのでしょうが聞こえてますよ?

「だから、僕じゃないってば。ルルーシュ、君がゼロだっただろ?」

―嘘だろ!?
―皇帝がゼロ!?

「ナナリー、今の君のように、ルルーシュも必死だったんだ」

「…え?」

「ブラックリベリオンの時、ナナリーがV.V.にさらわれた時、ルルーシュはナナリーだけの事を思って必死に探しにきた場所でルルーシュは僕に捕まった。
僕はね、ルルーシュを元皇帝に差し出しても、ルルーシュが処刑されないと確信してたからこそ、ルルーシュを元皇帝に差し出したんだ。
案の定、ルルーシュは元皇帝にゼロとしての記憶を消され、普通の生活に戻った。
けど、ナナリーがルルーシュを人質にされて皇族として、ブリタニアに戻らされた事を知って、またブリタニアに怒りを覚えたんだ。
君たち兄弟にとって、ブリタニアがどんなに大嫌いか、そんなブリタニアに戻るって事は、其れ程君はルルーシュが大事なんだ、ルルーシュもナナリーが大事だろ?
其れをルルーシュは必死で君をブリタニアから取り戻そうとしてたんだ、必死で。
僕が邪魔した時もあったんだけど…ルルーシュにとってナナリーが一番なんだ」

「狽チ…」

一番、其の言葉が私の胸に突き刺さる。

ゼロを否定し、お兄様を否定した私。
そんな私をお兄様は一番に考えていて…。

「…お兄様、本当にごめんなさいっ…
何度謝っても許して下さらないかもしれませんが…どんなにゼロとしてのお兄様のやり方が違うと思っても、お兄様を否定するような事をして、本当にごめんなさい…っ」

「…ナナリー…」

「お兄様は私のたった1人のお兄様なのに、其のお兄様を否定するなんてっ…
ごめんなさい…ごめんなさい…」

涙が止まらない。
お兄様は必死で私を取り戻そうとして下さっていたと言うのに、私は…。
そんなお兄様を否定するだなんて…!

「ルルーシュはね、君と幸せに暮らす為にブリタニアを潰そうとしてたんだ。
ブリタニアがなくなれば、ルルーシュもナナリーもブリタニアの人間に見つからないようビクビクしないで済む、そう考えての黒の騎士団にゼロとして、ブリタニアに刃向かうテロリストとして、君と早く幸せ暮らせるようにって…」

お兄様が、そんな事を…。

「何で僕がルルーシュの騎士になったか、教えてあげるよナナリー」

「スザクっ!」

突然お兄様は立ち上がり、スザクさんの襟を掴んだ。

「ルルーシュはね、君の為に死ぬつもりだったんだ」

其の言葉を聞いた私はお兄様を見上げた。

「ゼロレクイエム…
ルルーシュが皇帝になり、僕が騎士になる。
牙を剥く奴には容赦なく殺して誰も刃向かう事がない世界を作った。
案の定、世界中の人がルルーシュをよく思わないようになった。
独裁者な皇帝なんて誰もいらない。
だから、僕がゼロにふんしてルルーシュを殺す役目…あの時、ナナリーが声をかけてくれなかったら、僕はルルーシュを殺す所だった…。
ゼロがルルーシュを殺して、ナナリーたちは助けられ、世界は平和になるだろって、此れもみんな嘘のルルーシュなんだよ。
其れはナナリーが一番よく知ってるでしょ?ルルーシュは本当は凄く優しくて超鈍感で女王さまだけどドジっ子で初くて演技が物凄く下手で…
自分を犠牲にしか出来ないバカだって事をね」

お兄様は後ろにいるスザクさんを振り返り、睨んだ。

「バカとは何だバカとは!」

「其のまんまだよ。ルルーシュは本当、バカなんだから…」

優しく囁かれ、お兄様はスザクさんに抱き締められた。

「本当は反対してたんだ…僕もジェレミアやロイドさんやセシルさんも…ギアスをかけられてる兵士たちもそうでない人も。
君が死ぬなんて、反対だった…
君が死ぬシナリオの為に動くのが、辛かったんだ…
君は何時も誰かの為に自分を犠牲にして…今回だって、君は自分を犠牲にしようとした…そんなのやっぱり可笑しいよ」

「スザク…」

「ねぇ、僕やナナリーが傍にいるだけじゃダメなの?
ルルーシュは死ぬ事が幸せ?」

お兄様の顔が曇る。

「元はと言えば、皆黒の騎士団が悪いんだよ」

「いきなり話を変えましたねスザクさん、今凄くシリアスな感じでいい雰囲気だったのに…」

「だってナナリー、僕は許せないんだよ、黒の騎士団が…
あんなにルルーシュを頼りまくってたのに、簡単に裏切った奴らがね」
 
―黒の騎士団が…?
―皇帝を裏切った?

またザワザワと騒ぎ出し、黒の騎士団が注目された。

「戦術にしても何もかも、ゼロがいなかったら何も出来なかった集まりの能無しが、ゼロが皇族だってギアスの持ち主だって言うのを敵であるシュナイゼルの言葉を信じるなんて…ね。
其れにギアスがかかってるのはカレンとヴィレッタとか言う奴だけなのにね…何を勘違いしたのか自分もギアスにかかってるんじゃないかとか思い込んでルルーシュ殺そうとしたし、ルルーシュを裏切ったのがキッカケじゃないか。
ゼロを追い出して黒の騎士団はシュナイゼルと手を組んで…
自分勝手にも程があるよね…」

―酷いっ
―最低だな彼奴ら…
―何が黒の騎士団よ!

「裏切った奴を処刑すれば簡単だけど。
前にルルーシュがされた事を彼奴らにやり返すだけだけど、どうする?ルルーシュ」

「…………」

お兄様は黒の騎士団の方を見るとバツが悪そうに、皆目を背けた。

「………はぁ。スザク、お前の所為で計画がかなり狂った事…分かっているんだろうな?」

「もちろんだよv」

「貴様、何だ其の笑みは…」
お兄様の額に青筋が出来たのにも関わらずスザクさんはニコニコと笑っていた。

「ん?いや、ルルーシュが死なないでよかったなってv」

私からもお礼を言いますスザクさん。
お兄様を殺さないで下さって、本当に有り難う御座います…。

「スザクさんだからこそ、寸前で止められた事を本当に感謝してます」

ブリタニアに反逆した事で私たちが公開処刑される日。

其れは全く違う方に向かってしまいました。

お兄様の本当の目的、私を思って下さった事。
私の知らない所でお兄様は一生懸命頑張っていらしたのに。

そんなお兄様を知らずに、否定するだなんて…。

「で?ルルーシュ、どうするの?」

「どうするって、もしかして俺に聞いているのか?」

「…は?何言ってるの?ルルーシュ」

「何って、ゼロレクイエムは失敗に終わっただろ?
本当は俺が死んで、ナナリーたちは死なずに済む手筈だろう。
何だ、もしかして俺は此の侭皇帝を続けなきゃならないのか?」

「「え?!」」

此の場にいた全ての人の声が重なった。
もちろん私も。

そんな声に驚いたお兄様が、首を傾げたのです。

「…え?」

「え?じゃないでしょルルーシュ、皇帝辞めるって事?」

「だって、なりたくてなった訳じゃないし…
つか、ゼロレクイエムを成功させる為にやってた事だし…
大体、俺は人の上に立つより、頭を使った方が合ってると言うか…」

此れで悪名高いブリタニア皇帝の印象が全て吹き飛ぶように、周りはまた騒がしくなった。

「ルルーシュさまぁ!何と言う事をっ!!
此のジェレミア、ルルーシュさまとナナリーさま以外の下で働くなどとっ…!!」

「そうですよ陛下」

「僕も〜」

「「私たちも同じです!!」」

「ジェレミア、セシル、ロイド…お前たちまで」

「此の侭お兄様が皇帝を続けになってもいいのでは?」

「…え?」

悪名として名が通っていた筈のブリタニア皇帝、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだった筈が…。

「僕もルルーシュじゃなきゃ嫌」

「私も右に同じです」
「で、でも…」

が、今は逆に悪名高いと不評だったの時のお兄様ではない。

「お兄様、ナナリーのお願いは聞いてくれないのですか?」

「…ナナリー?」

「私は、お兄様と一緒に過ごせる優しい世界が欲しいです」

にっこりと微笑み、お兄様の手を握った。

「ナナリー…」
「お兄様にならきっと出来ます。
此の世界を戦争をなくし、平和を作る事は、お兄様が命じれば、人はきちんとお兄様について行って下さいます。
私もお兄様を支えます、スザクさんはお兄様の騎士ですし、ジェレミアさんだって、セシルさんだって、ロイドさんだって、ちゃんとお兄様の背中を支えて下さいますよ」

明日の為に。

お兄様のいない明日はいりません。

お兄様がいてこそ、明日が成り立つのです。










End...
何だ此れ(¬з¬)
何だかスランプを抜けきれてないような…(汗)
ギアス最終回、本当に泣けた。
大声で泣き叫びたいぐらい、悲しかった。

つか主人公を死なせちゃダメだろっ(ノ△T)

同じネタ書いた西都さまがいらっしゃるかもしれません。
こんなちっぽけな頭を持ってる私でも思い付いたんだし…。
他西都さまで見かけ、同じような台詞があった時はお知らせ下さいっ!
直ちに瞬時に直しますのでーー!ε=ε=┏( ・_・)┛

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