黒妖犬(ブラックハウンド)

 
「そーいや、名前聞いてなかったな」

「鳴門だ、渦巻 鳴門」

「俺はメリオダス、憤怒の罪(ドラゴン・シン)って呼ばれてる」

「ボクは嫉妬の罪(サーペント・シン)のディアンヌだよ」

メリオダスには左の二の腕に、ディアンヌには左太ももに。
バンは左の脇腹に、印があった。

「俺にもそんな印あるのか?」

「此ればっかは見てみんねーとなぁ」

「案外なかったりして♪」

其の後、バンに全身見てもらうと、あった。
俺には右の肩甲骨あたりに、其れが。

「ま、罪持ち印持ちならオレたちと一緒に行動したって何ら可笑しくねーな」

「じゃあ、此れからよろしく」

「よろしくね!」

「よろしくな♪」

「よろしくお願いします!」






エリザベス王女の回復を待ってから、俺たちは町を出た。

「此処がエリザベスとオレたちが出会った所」

地図を見ながら、指指していくメリオダス。
其処はケインズ集落と記されていた。

「白夢の森でディアンヌと再会…」

「そんで今はダルマリーを東に出た山道だよな?プゴッ」

「目的地は王都だろ?だったら南西の街道じゃねぇかよ〜〜〜〜〜」

「んにゃ、王国からは一旦離れる。
ソルガレス砦に続いて監獄をぶっ潰したんだ。
王国、聖騎士側は警戒を強めてる筈だ」

「今は目立つ行動を避けとくのが吉って事だな、プゴッ」

「十分目立ってんだろ〜〜〜が♪」

其れもそうだよな。
巨大な豚に巨人の娘。

「本当にごめんなさい…私の所為で結局ダルマリーに3日も足止めさせてしまって…」

「水臭いなぁ〜〜〜エリザベスってば。其れより、体の方はもう平気なの?」

「ありがとうディアンヌ…もう平気です。
ホークママもずっとお留守番させてしまってごめんなさい…
1人ぼっちで寂しかったでしょう?」

「ブゴブゴブゴォ…」

「“気にしてない”、ってさー!」

そうディアンヌが通訳してくれたのだが、其れを聞いたホーク(家畜)が勢いよく飛び出した。

「勝手に略すな!
“今度から長引きそうな時は早めに言ってくれ”って言ってんだ!!」

「てへっvごめーん」

ホークが豚の気持ちを1フィートも分かっちゃいねぇ、とかなんとか言ってる中、次の行き先に付いて話そうとした時。
いきなり、ホークママが立ち止まる。

「其処のデカ豚と巨人族の女!とまれーーい!」

「我々は王国聖騎士だ!!大人しく我々の尋問に答えてもらおう」

「報告にある“七つの大罪”のディアンヌは巨人族、家を背負った豚の目撃情報もある」

と、まぁ運がいいのか悪いのか。
下っ端だろう聖騎士と出くわした訳で。

「おーおー噂をすりゃ早速検問か」

「な〜〜〜〜にが聖騎士だっつーーーの。
此の魔力は大方見習いだな。俺がかるーく始末しとくわ」

「俺でもいいけど?」

バンと俺を止め、メリオダスが店から出て行く。

「どーもどーも。検問ごくろーさん。
オレは此の移動酒場の“豚の帽子”亭の店長だけど…何か用?」

怪しまれながら、ディアンヌとの関係を聞いていて、メリオダスは自慢の看板娘だと紹介した。
すると、何やら新しいとかかわいいとか言い出した聖騎士見習い。

「…嘘、だろ…」

「聖騎士見習い、だからじゃないのか?」

オツムが弱いんだろうな。
そう思っていたのも束の間、ディアンヌが嬉しさのあまりメリオダスを掴み頬ずりをしたんだ。

「ありがと団長ぉ〜〜〜!!!
自慢の看板娘だなんて…ボク…ボクっ!スッゴく嬉しい!!」

そんな発言するもんだから、聖騎士見習いたちが反応した。

「Σ…………団長?」

「ま、まさか!!貴様は報告にあった子供…
“七つの大罪”メリオダスか!?」

「あ」

あ、じゃねぇし。

「あーあ、うちにもバカが一匹…」

「だから始末しとけっつったんだよ〜〜〜」

「Σ…………」

何か、くる。
其れはバンも同じだったらしく、視線が同じ方向を向いていた。

物凄いスピードで走り、俺たちの周りをグルグルと回っていた。

「何、あの黒い犬みたいなの」

「お前見えんのか?」

「え、見えないの?」

別に大した速さじゃないけど。

「あ、食われた」

「え」

もう1人も其奴の餌食となり、粗食音が凄かった。
ガリゴリボリとか。

やっと立ち止まった其奴は、口から鎧だけを吐き出した。

「あ…あ…」

可笑しいな、今までいた2人の気配がピタリとなくなったし、血の匂いがしねぇ。

「あわわ…やべぇよありゃ…黒妖犬だぜ…!」

狙った相手には絶対背を向けず仕留めるか自分の命尽きるまで追い続ける、ね。

そんな事てビビってる家畜を横にバンはホークママの頭から飛び降りた。

「ったくよ〜〜〜、快適な旅の邪魔しやがって」

ゆっくりと近付いていく、バン。
そして…

「殺すぞ?」

殺気のようなモノがバンから放たれたと思うと、黒妖犬は其れを察知し、いきなり数倍のデカさになった。

「なんだ此奴?急にデカくなりやがったぜ〜〜〜」

「う…噂は本当だったのか…!!黒妖犬は相手に警戒心を抱く程に体がバカデカくなるって…………!!」

「フーーーン、興味ねぇな〜〜〜♪やっぱ殺すだけだ♪」

「待て」

「んだよ、鳴門」

ちょっと試してみたかったんだ。
家畜が言ってた事、俺は何処まで通用するか。

「まぁ見てろって」

俺はゆっくりと黒妖犬を見上げた。
其奴だけに、殺気を送ろうと視線を合わせれば…

「Σっ………………」

何かに怯えたように一目散に背を向けて去って行った。

なんだよつまんねぇな。
どんだけデカくなるのか楽しみだったのに。

「…………………」

「興味失せた…」

上に戻ると、次の目的地をメリオダスが口にした。

「次に目指すは死者の都、其処でキングを探す」

 

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