ボール遊びと殺意

 
キルアの暴露から話が膨らんだ。
1日何人殺した事あるかと聞かれ普通に答えてしまったのが運の尽きか、ゴンやキルアに色々質問されまくりだった。

「お、お主は崖を歩いとった少年」

ネテロ会長がこちらへ歩いてきた。

「ヒマか?」

何処かで聞いたような台詞に、ヒマ!とゴンとキルアは即答した。

遊ばれるな。
そう思いながら4人ともネテロ会長の後を追った。

十分に広い空間にやってきたと思えば、ネテロ会長は何処からかボールを取り出し、クルクルと回し弄んでいる。

「ゲームじゃ。お前さんらが此のボールを取れば勝ち、簡単なゲームじゃろ?」

「勝ったら、どうすんの?」

「ん〜…そうじゃなぁ…
ボールを取った者に褒美をくれてやろう」

ハンターの資格をくれてやるって。
そんなに自信があるんだな、此の爺さん。

「はいはい!俺から行く!」

元気よく手を挙げながら、ゴンは上着を脱いだ。

ボールを必死に追うゴンだが、ネテロ会長は最早ゴンをも弄んでいた。
流石、と言った所だな。
会長ともなる人物が、遊びだとしても子供相手に負ける訳がない。

其れはキルアも同じ事だった。

「くっそー!悔しー!!」

「お前さんらはどうする?」

「ハンターは自力でなれそうだからさ、どんな願いも叶えてくれるってのはどう?」

「………ボールが取れたらの」

何叶えてもらおう。
取り敢えず、ボールを奪うか…。

そんな事を考えながら、すぅ、と目を細め、俺はネテロ会長を見つめていた。

ボールを取るのは容易い。
だけど、其れをどう人間らしくするか…。
忍者相手ならまだ、爺さん普通の人間だし…。

「(空気が変わった…)」
「(何だ、此れ…見てるだけなのに、目が合ってもないのに…動けねぇ…!)」

「中々とは思ってたんじゃがの…
(此れは予想以上やもしれん…)」

ゆっくりとネテロ会長へと歩み寄る俺に対し、ネテロ会長はジリジリと後退りして距離を取る。

ま、俺のスピードには付いてこれないだろうから、其れで行くか。

そして…

「Σ消えた!?」

「何処!?鳴門の奴何処いきやがったんだ…!」

「Σ!?」

気付いた時にはもう遅い。

「してやられたのぉ…」

ネテロ会長の後ろに立つ俺の手には、ボール。

「俺の勝ち、だよね?」

「どんな仕掛け!?」

「有り得ねーっつーの…」

そして、鹿丸もネテロ会長から軽くボールを奪い取った。

「今年の受験生は末恐ろしいわい」

「誉め言葉としてもらっとくよ」

「同じく」

さて、何してもらおうかな…。
とは言っても、此の世界についてあんま詳しくないし…。

「ハンター試験が終わるまでには決めておく」

俺と鹿丸は其の侭部屋を出る。
ゴンとキルアはまだネテロ会長とのゲームを楽しむそうで、頑張れと言葉を送った。

部屋に戻ったのはいいが、レオリオの強烈な鼾に耐えられず俺と鹿丸はまた部屋を出た。

夜空を眺めていると、何処からともなく殺気が漂い始めた。

「…」

そして、次に血の匂い…。

こんな所で…。

「場所を考えろよ」

言葉を向けた相手、其れはキルアだった。

転がった死体を見て溜息をつく。

印を組み、術を発動させると俺乃掌から一つの青い炎がボッ、と着火。
其れを其の死体へ投げれば…

「…どうして、燃えないんだ…」

「此れは血と生きてない肉体や骨しか燃やさない炎だ」

「…何も言わないのか…?」

「何か言った所で変わったりしないだろ…ったく、メンドクセェ」

ネテロ会長との遊びに火がついたとか?
押さえられなくなった感情と行動の末、かな。

「感情1つで我を忘れるのんてまだまだ。
ちゃんと冷静に判断出来るようになるまで大きくなれ」

「…鳴門」


















翌朝。
トリックタワーと呼ばれる建物に付いた。
入り口のない塔の屋上に降り立つ受験生。
今から何が始まるのか、理解が出来なかった。

「三次試験、トリックタワー攻略?」

七十二時間以内に塔の下に降りる事が課題だと。

「なる程。どっからか中に入る入り口を探して下まで降りればいいのか」

「思ったけど、別に外でもよくない?」

「壁伝いに降りれば早いよな」

俺と鹿丸の意見が合致。
イコール、ちまちま中を通ってくのが面倒なだけで…。

そして、鳴門たちの会話を聞いていたロッククライマーが得意な男が、我先にと壁を伝って降り始めると、何処からともなく羽以外の全身禿鷲のような怪鳥に盛大に突つかれてる。
しまいにはエサと化した。

「彼処、通るのか…?」

「別に大した事じゃないだろ…」

チャクラ刀あるし、ましてや誰も見てなかったら術とかぶっ放つし?

「駄目駄目、鳴門はゴンのお守りしてもらわないと困るっての」

「キルア、俺、お守りされる程子供じゃないんだけど!」

言っとくが俺ら同じ12だからな?

呆れていた時、クラピカの呼ぶ声。
何だ何だと近付いて行けば、地面のコンクリートに仕掛けを見つけたらしい。

「先ほど、一瞬で受験生が消えた。
と思ったんだが、此の仕掛けに落ちた可能性が高い」

人数分の仕掛けを見つけ、一斉に中へ。

スタ、と綺麗に着地すると…

「…」

「あんまり意味なかったね…?」

「でも、2人いないな」

「心配はないだろう。彼を心配する必要もないだろ?なぁ?鳴門」

見知った顔が3つ。
ゴンとクラピカとレオリオ。
鹿丸とキルアだけが別の道に進んだようで、あまり変わりのないメンバーに少しは安心感を覚える。
此処で知らない奴が殆どの今の鹿丸の状況で、俺が我慢出来るかどうかが…。

しかし、鹿丸と離れるなんて…。
しかも、72時間の時間制限だし早くて1日、遅くて3日鹿丸に会えないとか…。

「鹿は大丈夫。彼奴は俺が認めた唯一の男だもん」

「(アレ?鳴門…何か怒ってる…?)」

「5人揃わないと行けないらしい」

「もう1人下りてこないと俺たち此の侭失格…?」

「其のようだな…」

半ば諦めてた最中、上から降ってくる男。

「…」

俺たちを潰そうとした、トンパって奴だった。

一番最初、時計みたいなのを腕に付けると、扉が開いた。
其の時計には○と×のボタンが。

「開けるなら○、開けないなら×…」

ーピッ

○4、×1。

「え…?」

「誰だよ、×なんか押したの…」

「…ハハ、悪い間違えたみたいだ」

「何処をどうやって間違えんだよ!」

「レオリオ、どうせ多数決なんだし。
俺らがちやんとしたらいいだけの話」

此奴がちやんとしないってのは分かり切ってる。

「でもさ、あまりおふざけが過ぎると…俺、短気だからうっかり殺しちゃうかもよ?」

少し脅しをかければ、冷や汗をかきながらトンパは首を縦に振った。

「悪かった、よ…」

次の問題は、○右に行くか、×左に行くか。
どっちに転ぶか分からないけど、またボタンを押す。

「右か」

「俺は左のほうがよかったぜ…」

「文句を言わずに行くぞレオリオ」

次へ進むと、出っ張りとステージ。
其の出っ張りに、俺たちは立ち止まる。

「…見ろ」

反対側の出っ張りに同じく5人、フード付きの布を被った奴らの姿。

そして、うちの1人の手枷が外れ、フードを脱ぎ捨てた。

「我々は貴様らテスト生を試す為に雇われた者だ」

此処ではあの5人と戦って勝つしか道はない。
多数決、3勝すれば次に進める。

「此の勝負を受けるや否や、多数決してもらう」

レオリオがトンパに対して釘を刺すような言葉を放ったお陰か、全員一致の○が5。

一番手はフードを脱ぎ捨てた男。

「どうする?誰が行く?」

話し合いか行われ、そんな中トンパが身を乗り出した。

短歌切ったんだからちゃんとやってくれるだろうと、期待していたのに。

自動で出てきた道を行き、中央のステージへ。
勝負の方法やルールを決め、いざ始まった瞬間、彼奴は直ぐに土下座をし負けを認めた…。

そして、のこのこ帰ってきた奴は

「いやぁ、面目ない…」

苦笑いを零してそう言った。

「テメェなんて様だ!」

レオリオが掴みかかり、怒鳴る。

「レオリオ」

「鳴門…?」

レオリオの手を放し、俺はトンパに近付いた。

「な、何だよ…」

ーガシッ

奴の首を掴み、持ち上げる。

「グ、ァ…!
(此奴、こんな細腕で…!)」

「「鳴門!」」

「さっき言ったばっかりだろ?
其れとも、そんなに死にたかったのか?」

掴んだ侭、出っ張りの端まで行く。

「本当にいい加減にしろよ…テメェのケツを俺らに拭わせる気か?」

「鳴門、もうやめてあげて?」

興が失せた俺はトンパを後ろに放り投げた。

「ゴホッ、ゴホッ…!」

「ありがとう、怒ってくれて」

「ゴン…」

「トンパさんももうこんな真似はしないよね…」

「…」

「…ね?」

「悪、かった…」

次したら殺す。絶対殺す。
骨が残るなんて思うなよ…。
 

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