攻略と近道

 
「服役中の犯罪者?」

「嗚呼」

なる程。
此の72時間の間、時間で刑が減る仕組みか。
其れなら相手がマジになって足止めするのも無理はないな。

「まぁでも、アンタは直ぐ負けを認めて正解だったかもな。
最初に喉潰されて参ったと言わせないようにしただろうし」

「嗚呼、其れからじっくり死なない程度に拷問やらして時間を稼ぐつもりだったのだろう」

「オッサン、顔色悪いぜ?」

「あ、いや…!」

此れもまた少しは脅しくらいにはなっただろ。

2人目は片目が髪で隠れた陰気臭い奴だった。
そして、ゴンが相手となる。

男は蝋燭を取り出した。
ルールは至って簡単。
同時に火を付けて先に消えた方が負け。

肉体派じゃないあの男。
頭脳戦で来たか…ゴンには不利か…?

「どっちがいい?」

男が手にしてる2本の蝋燭は、長さが異なったモノ。
どっちがいい?だと。
どっちかに何か仕掛けてるのは目に見えてる。

「ゴン、お前が決めろ」

「え?じゃあ長い方ね!」

野生の感を頼ろうと思ってた俺たちは、

「だって長い方が長い時間火が消えないからに決まってるじゃん!」

其のコトバ聞いて頭を抱えた…。

単純馬鹿…。

「野生の感は何処いったんだよ…」

「…知らん」

蝋燭を受け取り、同時に火を付けた。

「…」

下から吹き上げる風が強く、油断してたら消えてしまう恐れがある。
だからか、ゴンも慎重になり火を守っていた。

「うわっ!?」

ゴンが持っていた蝋燭の火が格段に大きくなり、溶けるスピードが早まった。

「初めからこうなってたな」

「鳴門の言う通り。例え、短い方を選んでも奴は火薬が入った蝋燭をごに渡していただろう」

溶け出した蝋で触るのも危うくなってきた。

さぁ、どうする?ゴン…。

そして、持てなくなった蝋燭を下へ落としてしまう。
すると…

「火の勢いが大きいって事は、ちょっとの風じゃ消えないって事だよね!」

行動あるのみ。
ゴンはすかさず相手へ詰め寄り、フゥと息を吹きかけ、蝋燭の火を消した。

ゴンの蝋燭は付いた侭。

漸く1勝だな。

「よし、私が行こう」

クラピカの相手は左胸に今まて殺してきた人数分のハートマークの記を付けていた。
其れをクラピカで20人目にしてゴロをよくする?

「たかが19人で…」

「鳴門?」

「彼奴、馬鹿か何かなのか…?」

「連続殺人魔だぞ?」

「俺、確か初めて殺った時、20人は超えてたけど…」

「Σな!?お前、キルアと同業か!」

「ちょっと違うんだな此れが。
あっちは殺し屋、俺は任務」

「違いが全く理解不能だ…!」

賞金首狩り(ブラックリストハンター)みたいなもんだよ、と説明しても理解はしてもらえなくて。

「で、何が馬鹿何だ…」

「今まで殺してきた人数分、だろ?
連続殺人魔とか言いながら全然大した事ねーのに、自慢してるんだぞ…
頭可笑しくねぇか…?」

大真面目だった。
たかだか20人未満で…。

「お前も大概可笑しいから…」

「な、彼奴と一緒にするなよレオリオ。
俺は19人殺したとしてもあんな自慢気に言ったりしない!」

「…鳴門、分かった。分かったからもうクラピカの試合に集中してくれ…」

泣きそうなレオリオがいた。

「鳴門って少し天然入ってるよね?」

お前にだけは言われたくないよゴン…。

「…」

負けを認めるか死ぬかするまでのデスマッチがルールとなった。
クラピカも其れに頷き、始まった。

高くジャンプした連続殺人魔はクラピカ目掛けて勢いよく拳を振り下ろす。
軽く避け、激突した地面は少し穴が開いた程度。

だが、連続殺人魔の男がニヤリと笑い背中を向ける。

「12本足の蜘蛛…?」

「あれは…!」

右肩に蜘蛛の刺青があり、其れを見たクラピカの様子が変化していた。

「幻影旅団のメンバーだって証だっ」

え、幻影旅団…?
クラピカの一族を皆殺しにしたって言う…。

しかし解せない。
確か、賞金首狩りのランクでもトップクラスの幻影旅団だった筈が、こんな所でハンター試験の手伝い?

「クラピカが怒ってる…」

ゴンの言葉は正しかった。
ゆっくり立ち上がるクラピカの目は赤く色が変化して、まるで炎のようだった。

連続殺人魔の顎を捉え、其の侭高く飛び地面へ殴りつける。

「3つ忠告しよう。
1つ、幻影旅団のメンバーは蜘蛛の刺青の中に団員ナンバーが刻まれている。
2つ、奴らは殺した数を一々数えない。
3つ、二度と旅団の名前を語らない事だ。さもないもお前を殺す…」

そして、クラピカはこちらへ戻ってきた。
取り乱した事を謝り、地面へ座り込んだ。

普通の蜘蛛を見ただけで性格変わるのも可笑しいよな…。

そして、

「其奴をどけてくれ!」

レオリオがそう言えば、一番最初の男が其れを拒んだ。

負けを認めるか死ぬかするまでのデスマッチだったな…。

そして、生きてるか死んでるか、時間をかけて勝負する事になった。

レオリオは生きてる方に10時間。

彼奴は生きてる。
間違いない。だって、心臓の音丸聞こえだから。

ステージへ向かい、脈を取るレオリオの姿を見ていたクラピカがボソリと…

「マズいな…」

そう言った。

気絶してる振りをしてる可能性がある。
恐らく、時間稼ぎで此の侭目覚めないかも。

「だから中じゃなくて外通ればよかったんだよ」

「鳴門や鹿丸はいいだろうが、私たちでは無理だった」

こんな塔攻略にあんまり時間をかけるのは性格的にも、限界がある。

仕方ないか…。

片手で印を組んだ。








「本当に気絶してるか、はたまた起きてるか…其れを確かめるなんざ簡単じゃねぇか」

ガシッと連続殺人魔の首を持ち、レオリオはステージの端へ。
そして、其の連続殺人魔の体をステージから落とすよう、腕を伸ばす。

「此れで本当に気絶してた場合、俺たちの時間全部くれてやる。
もし、起きてた場合クラピカの勝負が確定+持ち時間20時間もらう。
どうだ?」

「(其の侭下へ真っ逆さまになっちまいな)いいだろう」

「じゃあ行くぜ?」

手を離そうとした瞬間、連続殺人魔が命乞いをし、レオリオはニヤリと笑った。






「…鳴門」

「バレてねぇから心配するなって」

こっそり話しかけてきたレオリオ。

俺はあの時、結界を張った。
そしてレオリオと入れ替わり、振りをしたのは俺。

レオリオはクラピカたちの後ろに連れて行き、作り出してた分身により姿を隠させていた。

「此れで2勝目だな」

さっさと3勝して次へ行こう。

俺が行く、そう言った俺。

「アンタたちの中で一番強いの出してよ」

「…」

其の男の名前はばらし屋ジョネス。

スピーカーから其の言葉が流れてきて、クラピカとレオリオの顔が一変した。

「140人以上の犠牲者が出た…
其の犠牲者が50のパーツに引き裂かれた状態で…」

「ふぅん」

「鳴門、俺たちの負けでいい。
彼奴とは戦うな…」

「私も同感だレオリオ…また来年があ…」

「心配ないって。
あの男が死ぬのは確実だからさ」

ステージへ向かい、対立。

「久々にシャバの肉が掴める…」

「どうかな。で、勝負の方法は?」

「勝負…?俺は試験も御社関係ない。
俺は此の手で肉を掴みたい、其れだけだ」

「じゃあどっちかが死ぬまでって事、でいいよね」

ニヤリと笑う男の手が俺に近付いてくる。

「おじさん、アンタもう死んでんぜ?」

「何を訳のわから…」

ーゴト、ゴトゴト…!

男の体が地面へバラバラに落ちて散る。

「はい、俺たちの3勝」

「何時、斬りつけた…?」

「あの短時間で刃物を取り出し全身斬りつけ、おまけに繋がった所が一切ない…」

「何て奴だ…」

3勝した俺たちは、ステージから向こう側の出っ張りへ移動。

「鳴門、今のもにんじゅつなの?」

「…いや、使ってないよ」

次の部屋からまた多数決のクイズだった。

巨大な岩が転がってきたり色んなトラップくぐり抜けたり。

攻略とは乏しいものばっか。

「最後の部屋か…」

5人で行ける長い道、3人で行ける近い道。

どちらか。

「ねぇ、此れって選ぶ必要あるの?」

「ないだろ」

トンパが変な気を起こさない限りな。

「じゃあ、押すか」

チラリとトンパを見ると、罰が悪そうな顔して目を反らされた。

全員一致の5人で行ける方を選んだ。

長いって何時間かかるんだ…。

扉が開く。
すると、ゴンが壁を見つめていた。

「どうした?」

「ねぇ?此れってさ壁に穴開けたら反則かな?」

中々突発的に面白い考えを言うなゴンも…。
流石に其処まで俺も考えつかなかったよ。

「反則も何もないだろ。
攻略するのに多数決取って道進んで下まで下りるだけだしな」

「じゃあ…!」

「いいのか…?そんな事して…」

「鳴門が言うのも一理あるし、反則なら試験官が何か言ってくるだろ」

ゴンは元の部屋に戻り、壁に吊してあった武器を持ってきた。

「皆で掘ろう!」

「そんなちまちました作業は面倒くさいから」

そう言って俺は壁を蹴った。
一瞬にして大穴が開き、隣の道が見える。

「…とんでもねぇバカ力だな、おい…」

「本当に心強いな、鳴門は」

「皆、行こう!」

隣の道へ移動し、俺たちは走りだした。
 

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