マラソンと騙し合い

 
「では、私に付いてきて下さい。油断してると死にますよ?」

サトツの言葉に割り込んだ1人の男。
其奴はサトツを偽者と叫んだ。

受験者たちが一斉に其の男を視界に入れる。
其の男が持ってたのは布に入った何か。

今まで走ってきた地下道の所為か、かなり動揺している。

男は其の袋をドサリと投げやった。
中から出てきたのは、猿。
細身で、白目向いて長い舌をたれ流していた。

心臓の音は聞こえるし、死んではないな。

「おい此れ…」

「試験官そっくりじゃねーか…?」

人面猿と言う生き物は言葉巧みに人間を騙し、食料とするらしい。
ゴンも臭いは感じられないらしく、お手上げ状態。
上手く化けたらしい。

「プロのハンターならライセンスカードを持ってるだろ?見せてみろ」

「彼奴に奪われたんだ!何もかもっ」

男の言葉が受験者を惑わす中、ヒソカがトランプを両者に向けて三枚ずつ放った。

「ガハッ…!」

バタンと倒れたのは偽者と叫んだ男だった。

「ふっふ〜ん…なる程なる程☆」

サトツはトランプを指で挟んでいて、男は避ける事も出来ずトランプが顔に刺さっていた。

「此れでどっちが試験官か分かったね☆」

まぁ、アレくらいの攻撃を避けられないんじゃ試験官ってのは務まらねぇだろ。
ハンターになろうって奴を見定める役柄、手練れじゃなきゃ選ばれもしねぇし。

「な、何しやがる…!」

「…こうする方が早いでしょ?」

ケロリと答えるピエロモドキにサトツは忠告するよう言葉を放つ。

「此れで決定。こっちが本物だね?試験官さん。
僕たちが目指すハンターとあろう者があの程度の攻撃を避けられない筈がないもの…」

「誉め言葉として取っておきましょう。
しかし、次からは試験官への暴行は如何なる理由があろうと反逆行為とみなし失格とします。
宜しいですね?」

「…はいはい☆」

楽しんでやがる。
愉快犯め。

「鳴門はどっちが本物か分かってた?」

「プロのハンターってのは、たかだか魔獣にライセンスカードを奪われる程弱い訳ないだろ」

「奪われたって人面猿が言った時に理解するべきだったな」

本当は臭いなんだけど。
あの魔獣と袋の中にいた魔獣の臭いが微かに一緒だった。

「(き、気づかなかったー…!)」
↑レオリオ

またサトツについてくレースが始まった。
ぬかるみの所為か足取りが遅く感じる。
其れに、少しずつ霧が立ち込めてきた。

ピエロモドキは顔が既にヤバかった。
誰かを殺したくてウズウズしてる顔…。

「鹿…」

「嗚呼…」

ゴンとキルアに前の方に来るよう伝えた。
そして、ゴンはクラピカとレオリオに大きな声で。

「アホー!行けるならとっくに行っとるわい!!」

「全くだ…」

完全にバテてんな…。

霧も濃く、視界を奪う。

変な蛾が飛んでくる。
此れも人を食うのか?
触れないよう走っていると、其の蛾に触れた受験者たちは膜のようなモノが全身に回り、固まっていた。

「あーっ」

「此の声は?」

「騙されたんだろ?」

俺たちの近くにいるゴンとキルアはいいとして、クラピカとレオリオがまだ後ろにいる…。

「…此の臭い…」

「血、だな…」

彼奴か…。
ピエロモドキめ、早速やりやがった…。

「鹿、俺見てくるからゴンたち頼む」

「嗚呼」

「鳴門!?何処行くの!?」

「クラピカたちの所」

「えっ!?」

ピエロモドキに捕まったら最後、命はないだろう。
人を殺すのに手慣れてるピエロモドキとそうでないクラピカとレオリオ。

ゴンの為にも助けるしかねぇだろ?





【鹿丸side】

「クラピカとレオリオ大丈夫かな…」

「今鳴門が連れてくる」

「…どーやって?」

忍術だとか言ったらまた顔を輝かせて見せて、とせがむとわかってた。
鳴門の真似して、敢えてスルー。

「気にすんな。つーか、早く着かねぇかな…走り続けるのもメンドクセェ…」

「呑気だな、アンタ…」

俺と鳴門がゴンに一線引くように、キルアも俺たちに一線置いていた。
まだ警戒を解いてないらしい。

ゴンの事は名前で呼んでるのにも関わらず、俺たちはアンタだからな。

警戒させるような事したっけか…?





【鳴門side】

レオリオたちの所へ到着すると、殺気立ったピエロモドキが不気味に笑っていた。

「テメェ、何しやがる…!」

ピエロモドキの投げたトランプがレオリオの右肩に刺さっていた。

「試験官ごっこ。二次試験までは大人しくしていようと思ったけれど、あまりに退屈なんでね…☆
審査委員会の仕事を手伝ってあげようかなって思って…。
僕が判定してあげるよ。君たちがハンターに相応しいかどうか…」

ただ殺したいだけだろ…。

ピエロモドキはトランプ一枚で次々と受験者たちを斬り倒していった。

そして、クラピカとレオリオ、其れともう1人ニット帽を被った3人が残り、一斉に散って行った。

「…」

と思ったのに、レオリオはピエロモドキの前へ戻ってきた。

やられっぱなしは性に合わない、と…。
そう言ってレオリオが勝ち目のない相手へと向かって行った。

全く歯が立たないピエロモドキに殴られてるレオリオを、そろそろ助けてやらねばと…。

「レオリオ、嫌いじゃないよ其の性格」

「鳴門!?」

「(此の僕が気配に気付かなかったなんて…)」

ピエロモドキの前に立ち、チャクラ刀を突き出す俺。
ピエロモドキは俺のチャクラ刀を隅から隅までじっくり観察していた。

「(此れは一体…)」

「男って感じだね、レオリオ」

「み、見てたのか…?」

「うん。44番と接触した所から全部」

「バッキャロー!ならもっと早く助けろよ!」

声が途端に震えるレオリオをクスクスと笑った。

「レオリオたちがどうするか、見たかったんだ」

「何だそりゃっ!!」

「なぁアンタ。此奴に死なれたら悲しむ奴がいるんだ、だからさ?見逃してやってよ」

「君、強いでしょ…☆」

向けられたら目線に、俺は悪寒を感じた…。
あー、目ぇ付けられたっぽいな…。

「…まぁ、其れなりには?」

「じゃあ、今度手合わせしてくれる?」

「…仕方ないか。今度、機会があったらな」

本当はやりたくないけど。

「楽しみにしてるよ☆
其処の君はごーかく☆いいハンターになりなよ」

去って行くピエロモドキに、俺は片手で印を組み、分身を2体作り出した。

「な、何じゃそらっ」

「いいから、そんな体力で走り切れるとでも思ってんの?」

受験者のよう胸にプレートを付けて装い見せてる分身は、レオリオを軽々と肩に担いだ。




途中、クラピカも見つけて分身に担がせ鹿丸の所まで猛スピードで戻る。

「鳴門、一体此れは何だ…!」

「連れてきてもらった事に対しては有り難いが、いいのだろうか…?」

「あんま遅いとまたピエロにやられっぞ」

「ピエロ…?」

「ヒソカだよ」

「あー、彼奴はヤバそうだもんな」

キルアの乗り物も反則ではないのなら、此れも反則ではないと勝手に解釈し抱えさせた侭走る事にした。

「なぁこんな奴、アンタの仲間にいたっけ?」

キルアが俺の分身に目を向けた。

「…」

ゴンがクラピカとレオリオの傍にいるのを確認して…

「手品だよ、ゴンには内緒な?見つかったら煩いし」

「へぇ…アンタ、鳴門って言ったっけ?」

自分から近付いてくるとは思ってなかったな…。
何がきっかけなんだ…。

「其れと鹿丸だったっけ?」

「…?」

「俺と同じ臭いがプンプンするんだけど…v」

俺と同じ臭いがプンプン?

「キルアの臭いは殆ど血だけど…」

「やっぱり気付いてたんじゃん。
日頃から嗅いでなきゃ区別出来ねーもんな」

其れは言えてる。
体に染み付いた血の臭い程、分かり難いものはない。

「ゴンは気付いてないみたいだけど」

もちろんだ。
極限までに臭いは消してある。
そうそう気付かれる筈がなかったんだ。

なのに、其れを言い当てた此のキルアって奴も日頃から大量の血を嫌って程見てきたんだろうな。
でなきゃ、此のほんの微かな臭いに気付く筈がねぇ。

「まさか気付かれるなんてな?鹿…」

「嗚呼、メンドクセェなぁ」

久しぶりに見込みのある奴に出会えた。
暗憔に欲しいくらいだ。

「同業者同士、仲良くしよーぜ」

まぁいいか。
ゴンが気に入ってるみたいだし、ハンター試験が終わるまでゴンはキルアの傍にいると思うし。

「適度にな」

いや、もうお友だち確定、かな?

「キルアー!スケボー貸してー!」

「じゃあ、お前の釣り竿貸してよ」

あの変な板の乗り物はスケボーって言うのか…。
 

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