合い言葉とマラソン

 
試験会場へとやってきた。

キリコ父は迷う事なく、とある定食屋に入って行った。
其れに続く俺たち。

「親父、ステーキ定食、弱火でじっくり」

が合い言葉だそうだ。
毎年違う其れと場所は、ハンター試験を目指す者にとっては探すのも一苦労なのだろう。

「落ちたらまた来年も連れてきてあげるよ」

「縁起でもねぇ事を…」

「つか、落ちないって」

「俺も諦めないし!」

「私も」

「俺もな!」

「ふっ…受け取りな」

投げられたプレートには数字が書いてあった。

「406?」

「俺407」

ゴンは405番、クラピカは404番、レオリオは403番だった。

「受験番号さ。お前ら、頑張れよ」

そして、其のプレートを服の何処かに着けなければならないらしく、俺と鹿は肋らへんに。

キリコに見送られ、俺たちは部屋へ入っていくと、部屋の中は何もない空間だった。

キリコがドアを閉めた瞬間、部屋自体が動き始めた。

「なる程」

「ハンター試験は何時も何処て開催されるか分からない。
合い言葉も毎年違ってくるんだろうな」

「しかし、こんな大掛かりな仕掛けだと一年で作るとは驚きだな」

「使い回しとかしねぇのか?」

「さぁ」

「分からないな、もしかしたら合い言葉だけ違うと言う場合もあるかも知れない」

そして、部屋が止まり、扉を開けると大勢の受験者たちの姿があった。

中に入るや否や、受験者たちの視線が一斉にこちらへ向いた。

そして、

「俺はトンパ、よろしくな!新人」

声をかけてきたのは、鼻が四角という何とも特徴的な顔の男だった。

声をかけてきた男に興味もなく、俺は当たりをキョロキョロと目線だけ動かし見渡してみる。
すると、ハンター試験会場となる此の地下に悲鳴が響き渡った。

顔を見ただけでも分かる。
此奴、結構ヤバいな。

「気をつけようね?人にぶつかった時は謝らなきゃ…☆」

言葉ではなく、声に棘が含まれている。

愉快犯だな。
どちらかと言えば、俺に近い臭い。
人を欺き、騙されてる奴を心の中で蔑む。
あまり関わりたくはないけど。

「チッ…今年も危ない奴が出てきたか…」

先程話しかけてきた四角の鼻は彼奴、44番を要注意だと。

44のプレートのヒソカというピエロモドキは前の試験で気に入らない試験官を半殺しにし、失格となったらしい。

すぐに視線をヒソカから外すと、トンパとかいう男は俺たち全員に缶ジュースを手渡してきた。

「お近付きの印だよ、飲みなよ!」

「悪いが俺は知らない人間から物をもらわない主義なんだ。
毒でも入ってたりしたらかなわねぇからな」

「そうゆう事だ、俺も遠慮する」

「そ、そうか…?」

残りの3人はジュースをもらっていて、ゴンが其れに口を付け足した瞬間…

「うぇえ…」

「Σ!?」

「「ゴン!?」」

いきなり、口に含んだ其れを吐き出したんだ。

「トンパさん、此のジュース古くなってるよ?味が変…」

「Σえ!?」

此の焦りよう…。
間違いなく俺たちを潰しにきたな…。

「だから言わんこっちゃねぇ。
ほいほいと知らねぇ奴からモノを素直に受け取るな、馬鹿」

「そうだ。お近付きの印?アホ、新人相手に気さくに声かけて油断さるのがお得意なんだろうよ」

ワザとらしく言えば、トンパは冷や汗をダラダラと流していた。

でも、流石と言った所かな。
口に含んだだけで味を見分ける其の味覚もずば抜けてるのは、ゴン特有。
あの森で相当鍛えられたか。

「あっれー…?おっかしいなぁ…?」

トンパはクラピカ、レオリオにも渡した其れを回収し逃げるように去っていった。

「気を抜くな」

「ごめん…」

ージリリリリ

目覚まし時計を思わせる大きな音が地下に響く。

受付時間を知らせるベルのようで、其れが鳴り終わると、1人の男の存在に気付く。

「では、此れよりハンター試験を開始致します」

試験官のご登場。
細身で、何処となく掴めないそんな男。

「私に付いてきて下さい」

サトツと名乗った男は軸を返し、ゆっくりと歩き出した。

「試験会場に行くのかな…?」

そんな事を言うゴンをスルーしつつ、俺たちはサトツの後を追う。

段々とスピードを上げていく試験官に多くの受験者たちが漸く其の趣旨を理解する。

すると、1人細い板のような物にちっこい車輪のついた乗り物に乗ってスイスイと行く少年がいた。

何此の乗り物…初めて見た。

「うわっ!カッコイー!」

「きったねぇぞ!反則じゃねぇかよ!」

「君だれ?年いくつ?」

「此れの何処が反則だ?」

「此れは持久力のテストだぞ?」

「違うよ。試験官は付いてこいっていっただけだもんね」

「どっちの仲間だ!」

「…仲間?」

「怒鳴るな!体力を消耗するぞ!」

そんなやり取りを横目で見ながら、俺と鹿丸はゆっくりすぎるスピードに物足りなさを感じていた。

「さっき、名前聞いたな?」

少年がゴンに興味を持ったようだ。

「答えたくなかったらいいよ。俺はゴン、12歳」

「12、ねぇ」

そう呟いた少年は其の変な乗り物から飛び降り、其れを脇に抱え走り出した。

「そっちのアンタたちは?」

「鳴門、同じく12」

「鹿丸、以下同文」

「ふぅん…オッサン、年いくつ?」

「オッサン!?此れでもお前らと同じ10代なんだぞ!?」

「うっそー!?」

俺は鹿丸の顔を見た…。

「見えないよな」

「…20後半かと思ってた」

「あ〜…鳴門たちまでひっでぇなぁ!
もう絶交だ!!」

クスクス笑って先へ進むと、サトツがまたスピードをあげた。

「俺キルアよろしく」

漸く名前を言った少年事、キルア。
其奴から、微かに血の臭いがした。

色んな世界行っても、こうゆう奴はやっぱりいるもんだな。

「じゃあ、俺ら先行ってるから」

「お先」

ゴンはキルアに任せて大丈夫そうだと判断し、俺と鹿丸は最前列を目指すように、スピードを上げた。

「早…何者だよ」

「ねぇキルア、競争しない?」

「乗った!負けた奴は…」






サトツの後ろに付くのに数秒とかからなかった。

「早いですね」

今年の受験者は少し骨がありそうです、とサトツの言葉にクスリと笑った。

「なぁ、先行ってもいいか?」

「…」

「体力温存したいし」

「構いませんよ」

驚いたように一瞬目を見開いた。

「じゃあ、待ってるぜ?」

「…」

そして、俺たちは本来のスピードで頂上を目指した。

数秒。
木の葉から砂まで3日かかるのを俺たちは1日とかからず到着する。
其れに比べれば、こんな距離散歩みたいなものだ。

「レオリオ大丈夫だといいけど」

「彼奴が一番体力なさそうだしな」

其れから10分くらい。
サトツと同時にゴール。

「俺の勝ち」

「いいや、俺!」

「昼飯奢れよ?」

「ねぇねぇサトツさん!どっちが早かった!?」

「私には同時に見えましたが」

「ちぇ、同時かよ」

「じゃあ俺負けてないんだね!」

もう子供の会話でしかなかった。
ハンター試験真っ只中だって言うのに。
緊張感なさすぎる。
…って言う俺も鹿丸も緊張なんて此れっぽっちもしてないけど。

しかし、随分仲良くなったな。

「つーかアンタたち早すぎ…此のオッサンより先にゴールしてるのとかマジ有り得ないんだけど」

「お前らが遅いんだよ」

「む…何かムカつく」

「まさか、本気出してなかったの…?」

「当たり前な事を言うなっての」

クラピカとレオリオも無事ゴール。
レオリオは上半身裸で汗ダクダクでギリギリだったけど。

ゴールした途端、地面に崩れるように座り込んでいた。

一方、次の会場は先程の地下道と打って変わって湿地帯だった。

次は一体何するんだろうな…。
 

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