魔獣とナビゲーター

 
山の上にたどり着く。
ナビゲーター夫婦の家と思しき家を発見した。

「電気が付いてねぇな」

「寝てるのかな?」

いや、中に気配はある…。
3人…いや、此れは…

「誰もいねぇな…俺たち以外の受験者も見当たらねぇ」

さぁ、ゴンたちは気付くかな?

レオリオがドアをノックし、

「邪魔するぜ?」

扉を開けた瞬間、ゴン、クラピカ、レオリオの顔が強張る。

中には話に聞いた魔獣キリコがいて、其の腕には女性が捕まっていた。

「野郎!」

「彼女を離せ!」

クラピカとレオリオの2人がキリコに飛びかかる。が、其れを難なく弾き、キリコは窓ガラスを割って外へ。

「待て!!」

ゴンがキリコを追い

「レオリオ、怪我人を頼む!」

「おう、任せておけ!」

クラピカもゴンに続いた。
俺と鹿丸と言うと、旦那と思われる人物に近寄り、傷を見ていた。

「…」
「…」

「お前ら、医者になりたいのか…?」

応急処置を施してる俺たちを見て、レオリオは何回も瞬きさせて驚いてる様子だった。

「いや、別になりたいとは思った事はねぇかな」

「住んでた所で少しかじった程度だし」

暗部してれば多少の傷は出来る。
其の時に応じて出来るように覚えていただけで、術ばっかり使ってたが、こんな場所で術を使う訳にもいかないからうろ覚えだけど。

「(手際がいい。何処をどうすればってのが分かってるんだな。
ゴンと同い年なガキの割りに、2人ともいい腕してる…俺も負けてらんねえぜ!)あ、そうだアンタ…」

効果と薬草の名前をスラッと言う所、レオリオはやはり医者の卵だな。

旦那さんから聞き出した情報を元に、レオリオは薬草を取りに行った。

残された俺と鹿丸は、レオリオが出ていくのを確認して…

「なぁ、アンタ」

「な、何だい?」

「さっきの魔獣の仲間だろ?」

「Σ!?」

「同じ獣の臭いがプンプンしやがる」

「人に化けるの得意なら、ちゃんと臭いにも気を付けねぇとすぐ見抜かれちまうぜ?」

そう言えば、魔獣はクスクスと笑いながら元の姿へと戻っていく。

「凄いな其の嗅覚。私の臭いを見抜かれたのは初めてだよ」

「ナビゲーター夫婦ってのも嘘っぱちか?
船の船長同様、ハンター試験に相応しいか見定めてんだな」

「そうです」

「まぁ全員見定めなきやならねぇんだろ?レオリオの所行っておいでよ」

「アナタたちは?」

「本体なら、もうあっちについてるよ」

「本体…?」

「内緒だからな?絶対言うなよ?」

そう言って、俺たち分身はキリコの前から、ポフンと音をさせて煙りとともに消えてなくなった。

「…消え、た…?」

















暗闇の中、俺たち本体はゴンとクラピカの後を追っていた。

やはりと言うか何と言うか、ゴンの身体能力には驚かされる。

こんな暗闇であの動き。
そして、微かに動く影さえも捉える胴体視力。

「ねぇクラピカ!今、喋ったよ!」

「ゴン、私の話を聞いてなかっただろ…」

クラピカは溜息を付いた。

「もう一度言うぞ。魔獣キリコは、人間の言葉を話せる獣だ。
人間の言葉を話せる獣を魔獣と呼ぶんだ」

「そーなの!?」

ゴン、お前って奴は…。

「クラピカありがとう!」

そして、ゴンはスピードを上げてキリコの頭に釣り竿を叩き付けた。

「っと…」

キリコの腕から落ちる嫁を、クラピカが抱き止め、ゴンは逃げたキリコを追った。

クラピカは鹿丸に任せ、俺はゴンを追った。

手は出さないと決めてるから、俺は傍で見守るだけ。
ミトさんとの約束もあるから。
ゴンがもし無茶するかも知れないからストッパー役としてね。

森を抜け、水辺にやってきた。
岩から岩に飛び移りゴンは其処にいた筈のキリコの気配を探っていた。

「…」

今回は気配も匂いも遮断してるからゴンに気付かれる事はないだろう。
闇夜に紛れるのは、得意だからな。

キョロキョロと見渡すゴンの背後から、水の中から現れたキリコがゴンに襲いかかる。

其の場でジャンプして、鋭い爪を避けるとキリコはまた移動した。

「…?」

気付いたか…。





キリコの後を追うと、周りに何もない草原に出る。

「さっきはよくもやってくれたね」

「…え?」

「借りは返させてもらうよ!」

「…借り?」

キリコは戦闘態勢なのに、ゴンは全く構える事もしなかった。

鋭く尖った爪を、ゴンに向けた。
そして、キリコは一直線にゴンへ。

ーブンッ

「っ…!」

「…鳴門?」

咄嗟に瞬身の術でゴンの斜め前に行き、キリコの喉元にチャクラ刀を突き付けた。

「一応、何かあった時の場合の時の為に近くに潜んでたんだよ」

「そーなの?全然気付かなかった…
あ、そうだ。ねぇ、君誰?」

「は?」

「俺がさっき殴った奴じゃないよね?
よく見たら顔違うし、声も君の方が少し高い」

やっぱり気付いてたな。
水の中から現れたキリコは別もの。
きっとあの水の中で入れ替わったんだろう。

「臭いはどちらかと言うと、前のキリコの方が獣臭かったな。オスだからか?」

「え、オス?」

ゴンもまだまだか。

「父ちゃん出てきなよ!面白いモノが見られるよ!」

現れたもう一匹のキリコ。

「こりゃタマゲたな!」

「初めてだよ、見破られたのは」

残りの3人とも合流した。

どうやらこっちが本物の夫婦のようだ。
夫婦に化けてたのは実は娘と息子で、クラピカは娘の手首の入れ墨を見て、正体を見破ったらしい。
手首の入れ墨は生涯結婚しない誓い、なのに夫婦として現れた。
其の入れ墨を知っていた事と冷静な判断を誉めていた。

ゴンの身体能力をベタ誉めするキリコ。
其れは俺もベタ誉めする。

普通の人間が出来る技じゃない。

「俺とクラピカが殴った方が旦那さんで、声が高い方が奥さんだよ!」

ゴンの放った言葉に、皆絶句…。
まぁ何。其れをサラッと笑顔で言うもんだから余計にな。

「何処に其の違いがあるか全っ然分かんねぇ…」

「全くだ…そもそも違いがあるのか…?」

「つか、顔違うとかゴンだから出来る技だな」

「俺も鹿も顔は判別出来なかったし…
ま、キリコ自体の臭いは一人一人違うけど」

「いやいやいや、臭いが違うって其れ分かるお前らは一体何なんだ」

冷静な突っ込みを入れてくるレオリオを軽くスルーした。

いや、俺たち以上にゴンの方が有り得ないだろ。
あのキリコをどう見て、何処が違うって言うんだ。
目?鼻?口?耳?

全く同じにしか見えないって…。

「そうガッカリする事ないよ、本来見抜けなくて当たり前だからさ」

「当たり前なのか!?」

「当人たちが偶に間違えるくらいだからね」

「いや、其処はちゃんと把握しとけよ」

またも静かに突っ込みを入れてくるレオリオ。

そんな会話が続き、漸く本題に入った。
俺が言った通り魔獣キリコがナビゲーターとしてハンター協会の回し者であっていたらしい。

「こんなに笑ったのは久々だよ」

「お前たちは気に入ったから、会場まで特別案内してあげるよ」

「って事は…」

「5人とも合格だ」

ゴンとクラピカとレオリオはキリコの足に捕まり、空を飛んでいた。
俺と鹿丸は、口寄せした大鷲の背中に乗り優雅に。

レオリオはどうやら高い所が苦手らしく、情けない声を上げていた。
ゴンは何時も通り、夜の空の散歩と思ってるよえな感じで楽しんでいた。
クラピカは冷静。

そして、レオリオがやっと俺たちが乗ってる鳥の存在に気が付いた。

「お前ら何時の間にそんな鳥手懐けたんだよっ」

ギョッとした顔だった。

「レオリオ、鳴門と鹿丸は忍者で、きっとあれはにんじゅつだよ」

「何、忍者だと?」

「此の世界にも忍者いるの?」

「前に本で読んだ事がある。
ジャポンとか言う国に、其の忍者が存在するとか何とか…」

「ジャポン…?」

「シャボン玉みたいな名前だね」

どうせなら手合わせしてみたいもんだ。
 

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