嵐と試験

 
船の上から、ミトさんに別れを告げる。

ハンター試験を受けに、島を出ていく俺たちをミトさんは何も言わず見送ってくれた。

「ミトさん元気でねーーー!」

ミトさんとの約束もあるし。
暫くはゴンに付き合って此の世界で旅するのも悪くないだろ。
ゴンがどんな無茶するか、また分からないけど、鹿丸も俺についてくるし。

ハンター試験に合格したらしたで、そっからの事は其の時に考えればいい。
焦らず行こう。

「俺!必ずハンターになって戻ってくるからーーー!」

「ちゃんとご飯食べるのよー!」

「分かってるー!」

クジラ島としばしの別れ。

「鳴門くんも鹿丸くんもお願いねー!!」

「…」

ミトさんの言葉に俺たちは親指を立てて返事をした。







クジラ島を出航してから、俺と鹿丸とゴンの3人は船の上で揺られていた。

俺たち3人は船尾にいた。

「ふぁ〜…」

「一向に進まねぇな…」

波一つない穏やかな海。

「…」

ゴンは持ってきてた釣り竿で釣りをし始める始末。

そして、何やら甲板で船員と受験者の遊びが始まった。
受験者が投げたナイフを船員は軽く受け取り、遊んでやっていた。

「…」

「…」

其れを眺めていた俺と鹿は、目を合わせて同時に首を横に振った。

いいように遊ばれてる受験者。

「船を降りろ」

船長の一言により、大柄な2人の男に両脇を抱えられ、其奴は海のド真ん中に放り出された。
情けなのか小さな浮き輪が其奴に投げられる。

アホだな…。

「お、きた!!」

1人静かに釣りをしてたゴンの竿が大きくしなると同時に合わせる。
竿を立て、魚の動きに合わせて竿を左右に振り体力を消耗させていく。

そして…

「ドォリャアア!!!」

思い切り竿を引っ張り上げた。

「大物だな」

「すげーな」

激闘の末、ゴンは跳びカツオって魚を釣り上げた。
80cmはあるだろうか、ゴンはピチピチ跳ねる魚を両腕で捕まえ嬉しそうな顔だった。

「…美味いのか?」

「…さぁ」

甲板にいた船長がゴンの所へとやってきた。

「跳びカツオとは珍しいな」

「うん、クジラ島でも滅多に見れない魚だよ………」

ふと、ゴンの表情が変わった。
空を見上げていたと思えば…

「来るよ…嵐が来る…」

そう言い張った。

「よせやい。波一つ立ってねえぜ?」

黒髪短髪眼鏡のオッサンが、ふん、と鼻て笑うがゴンの表情は其の侭。

「風が湿って来た…其れに塩気が多い…
海鶴も注意しあってるしね」

「海鶴だと…?ハッハー、鳥の言葉が分かるってのか?」

「うん、全部じゃないけどね」

「俺を担ぐつもりかよ」

まだ信じられないらしい。

こっそりと片手で印を組み、術を発動させた。

《大きな嵐が来る…》

《此処にいたら巻き込まれちゃうよ》

《早く逃げよう…》

《危ない》

鳥たちの会話が耳に入る。
成る程、こんな会話がゴンには普通に理解出来るんだな。

「オッサン、ゴンの言った事は正しいよ」

「オ、オッサンだと!?」

「塩気も多いし、大概嵐の前は凪って相場が決まってんだぜ?」

「かなり強い…後2時間って所か」

「海鶴もそう言ってる」

「此の業界も長い事やって来たが、此れ言い当てたのは坊主たちで4人目だぜ」

「4人目…?」

「野郎どもー!帆を下ろせー!」











日が暮れる前、俺と鹿とゴンが言い当てた嵐がきた。
海は大シケ。白波が可愛く思える程、波は今にも船を飲み込んでしまうような勢いだった。

俺たちは船内にある部屋に全員押し込まれた状況で、嵐によりウネる海の上を浮かぶ船は右左と大きく傾くもんだから人間がコロコロと転がっていた。

俺と鹿と言えば、ハンモックと呼ばれるモノに乗り、クジラ島で手に入れた本を見ていた。
ゴンに至っては樽に乗って楽しそうに玉乗り感覚で遊んでて…。

呑気な奴だな…。

中にいた十数人の中で余裕を見せていたのは、黒髪短髪の眼鏡をかけた奴。
其奴は此の状況に何の焦りも見せず林檎を頬張っていた。
もう1人、金髪の変な服着た奴。
其奴は俺と鹿丸同様、ハンモックで横になり仮眠を取っていた。

揺れが少し収まった所で、船の船長が部屋にやってきた。

「ん?情けねぇ…こんなんでハンター試験受けようってんだから笑わせるぜ…」

「おい、鳴。此れ見てみろよ」

「何其れ、幻の珍獣…?賞金2億ジェニー!?マジか!」

間抜け面してんだけど…。
此れで2億とか楽勝じゃね?

「ねぇー、鳴門たちも手伝ってよー!」

「…生憎、他人に優しくする心は持ち合わせがなくてな」

「右に同じ」

「メンドクサイだけでしょー!?」

よく分かってるじゃないか。
こんな揺れで船酔いする馬鹿が悪いんだよ。

「もう…はい、水だよ。此の草も噛みなよ?楽になるよ」

「ふっふふーん」

「…」

「結局、此の5人だけのようだな…」

そんな声に俺は目線を船長に向けた。

名前が聞きたいと言い出し、黒髪短髪眼鏡が立ち上がる。

「名前が聞きたいだとぉ!?」

「そうだ」

「俺ゴン!」

「鳴門」

「鹿丸」

「クラピカと言う」

「っ…俺は、レオリオだ…」

名前聞かれたけらいで大声上げるなんてな。
小さい男だな…。

「お前たち、何故ハンターになりたいんだ?」

「…」

嗚呼、もう始まってるのか。
そう確信した。

出航も嵐に当たるようワザと日にちを被らせ、ハンター試験の受験者を見定める。

こんな嵐を余裕に通過出来なきゃ、ハンターにはなれないってか?
生ぬるい見定めだな…。

「俺、父さんがやってた仕事だからどんなものかやってみたくって!」

「俺は便利そうだし、何より面白そう」

「同じく」

あの2人は首を横に振った。
此の爺さんの目的も知らずに。

そして、其の爺さんがハンター協会と言う所に所属している人間だと言うのを知らせると、2人は渋々とハンター試験の目的を話した。

「私はクルタ族の生き残りで、あるグループを捕まえる事だ」

「ほう、賞金首狩り(ブラックリストハンター)か」

幻影旅団という名前で、クラピカとかいう男の一族を皆殺しにしたとか。
其の幻影旅団はランクが高い賞金首。

って事は、強いって事だよな…?
是非とも会ってみたいもんだ。

「金さ!ハンターになって稼ぎ捲るんだ!
金さえあれば何でも手に入る!」

まぁ一理あるな。
俺もハンター試験に合格したら荒稼ぎするつもりだし?
金はいくら持ってても損にはならないだろうし。














船が港へ到着した。

「あの一本杉を目指せ。試験会場への一番の近道だからな」

町の奥に見える山の天辺にある其れ。
其処に夫婦のナビゲーターがいるらしい。
そして、其の山には魔獣キリコとかいう怪物が出るから気を付けろとの事。

船長に別れを告げた俺たちは一本杉を目指すべく、山へ入る道を探す。

「其の夫婦の所に行けばいいのか」

「…魔獣キリコって知ってるか?」

「言葉を話す事が出来る獣を魔獣と呼ぶ。魔獣キリコは人に化ける事も可能だ。騙されないよう気をつけるに越したことはない」

「ま、大丈夫だろ」

「そんな呑気でいいのか…」

「鳴門と鹿丸強そうだし、きっと頼りになるよ!」

俺が言いたかったのは其れじゃなくて、何かあってもお前の鼻が効くからって意味だったんだけどな…。

ハンター試験を受けるのはいいが、俺は手を出さないと決めた。
順番が回ってくれば別だけど。
まぁ、云わば俺たちはゴンのお守りな訳だし。
ゴンを優先にしてやらないと。

途中、変な婆さんと仮面被った奴らが通せんぼし、いきなりクイズが始まったり。
余裕で理解出来たクイズもレオリオだけは頭を抱えていて、そしてゴンはクイズの意味を理解する事なく自分ならこうする、と出した答えが正解だった。

「少しは頭を使えよ…」

「…あんなひっかけ理解出来ない方が俺には分かんねぇ」

「えへへ…でも、正解したからよかったじゃん?」

苦笑いしか出来ないゴンだった。

「正解したからよかったが、冷静な判断も時に必要だぞ?レオリオ」

あー、そう言えばあの婆さんにキレそうだったなレオリオ。
もう少しで殴りかかろうともしてたし。
ハンター試験が受けられなくなる所だったよ。

ま、一応正解で山に入る道を通る事も出来たし、次は一本杉まで。

ゴンやクラピカやレオリオがいるから当然歩きなんだろうけど…。

パッと行ってサッと試験会場に行きたい。←
 

[ 2/43 ]
[*prev] [next#]
[しおりを挟む]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -