ゲーム開始と防御

 
「お、きたきた」

「待ちくたびれたぜ」

クタクタになりながらの、ゴンたちがマサドラへとやってきた。

「よっしゃぁ…」

「マサドラ到着ー…」

「お疲れさん、二人もと」

「お疲れ」

俺と鹿丸、プラスグラウ。
グラウを視野に入れたゴンが、首を傾げた。

「あれ、其の子…」

「まさか!」

「そう俺の能力だ、光と闇。グラウって呼んでやって」

〈よろしくお願いします!〉

同じようにグラウが念で挨拶をすると、疲れていた筈のゴンとキルアはグラウに興味津々。

「魂が定着なんて…」

「有り得ねー…マジ何なの鳴門!?」

「そんな事言われてもな…しちゃったんだからもう手遅れだろ。理由なんて俺が一番知りたいよ」

魂の定着は、誰もなし得なかった能力なのだろう。
世界初?

だから、俺は天才なんだってば。←

「またとんでもない能力だわさ…」

「誉め言葉としてもらっておくよ」

「はぁ…まぁいいわ。よーしアンタたち、また元の場所へ戻るわよ!」

「「ま、またぁ?」」











戻ってきた岩石地帯。

「今度はモンスターカードをゲットする。
此処で今まで遭った怪物を全種類。其の中でアンタたちの基礎能力で倒せない敵はいない。
もしも倒す為に足りないモノがあるとすれば、敵を観察し分析する力。
そして、敵を攻略する為の手段を戦いながら瞬時に考える力。
すなわち、戦闘考察力。
アタシは一切口出ししない。自分たちで考えて怪物を捕らえなさい」

ピンク色したウサギみたいな蛇を追いかけたり、
紫色した浮遊した幽霊みたいな奴に追いかけられたり。

そんな光景を見ていたら、ふと思った。

「其れにしても大したもんだな、此のゲーム作った奴らは」

「どうしてそう思うの?」

「ビスケみたいに順序よくゲームを進めていけば、確実に強くなれるようプログラムされてんだろ」

ま、ビスケがいなかったら、俺と鹿丸が鍛えてたけどな。
オーラ以外。

「まずは此の一帯のモンスター攻略しなきゃ、先には進めないだろうからな。
もし無理に進むようなら、其処には死が待ってるだろうから。
プレイヤー狩りなんか何時襲ってくるかも分からねぇ今、そんな状態だとライオンの巣にウサギ放り込んだようなもんだしな」

「そうね。恐らく全ては、あの子を強く育てる為でしょうね」

俺たちの見つめる先にいる、ゴン。
彼奴の親父は、ハンターでありながら、子を捨てて、ましてや其の子がハンターになったら此処に呼んで力を付けさせて、何処に行っても通用する能力を学ばす為だけのゲーム。
其れを作り上げたんだからすごい奴なんだろう。

ほんの少しの親心か。
覚えてもない、そんな親に会いたくてゴンは必死で、其れでも此のゲームを楽しんでる。

少し、羨ましい気もしない訳でもない。















「捕まえた!バブルホースゲットー!やったー!」

ほぼ1ヶ月。
何がって、此の辺りのモンスターカードゲットの期間。

「(予定通りだわね)」

其の間、俺と鹿丸は己の念能力の磨きをかけていた。
グラウだけでは物足りず、俺専用の能力の開発。
とは言っても、ちょっとしたお遊び程度だけど、ま、其れは何れ分かるとして。

鹿丸もあの狼の改良を続けていた。
移動するのに巨大化してみたり、ネズミ程の大きさにしてみたり。

「コホン、では此れより防御の修行に入る!」

「「お、オス!」」

ビスケが前にいて、俺らは対面で横一列に並んで。

「…」

ビスケの体全体がオーラに包まれた。
そして、其のオーラが右手に集中する。

「其れは…」

「そうよ、ゴン。貴方が使ってる技だわさ。
纏、絶、練、発、凝を全て合わせた応用技、硬(こう)」

「「硬…」」

「体中のオーラを全て体の一部に集め、攻撃する。
其れ故に、通常の攻撃を遥かに上回る威力がある。
アタシが硬を込めた拳で攻撃する。
アンタたちは此れを全て防ぐ事、避けてはいけない」

キルアの顔付きが変わったのを、ビスケは見逃さなかった。

「顔色を見ると察したようね。問題は硬での攻撃
どう防ぐか」

「こっちも硬を使う!」

「んー、半分正解。硬に対して硬、念レベルが同じであれば無傷で済む。けど、もし硬でガードした所以外に攻撃がヒットすれば即、破壊だわよ」

「全身を硬にする。矛盾してるけど、そんな意味だろ?」

「正解。纏と練の応用技、堅(けん)。
全身を通常よりも多いオーラでガードする。
ゴン、纏をやってみて。其の状態をずっと維持するのが堅」

硬の拳が、ゴンに向かう。

「いくわよ」

「(…お、遅い…)」

拳が当たった瞬間、鈍い音をさせてゴンは勢いよく吹き飛んだ。

「へぇ」

「あれで、あの威力か」

スローモーションみたくゆっくり近付いた拳に、スピードもなくあれだけの力があるなんてな。
此れはまた、マスターしなきゃな。

「ゆっくりだから体の力を抜いたのね。
堅まで解けてたら顔潰れてたわよ?
今のは硬のみの力。此の威力に拳本来のスピードと破壊力を乗せれば、攻撃力は数十倍にもなる。
出来る限り耐えてみなさいな」

「うん」

堅の状態を維持しつつ、ビスケの攻撃を待つゴンが突然、両膝をついた。

「おい、ゴン!」

「堅を維持するのがこんなに大変だなんて…」

「其れなりの実力者と戦うには最低でも30分、堅を維持しなきゃ話にならないわよ?」

「30分!?」

「まだまだ、やっとこ2分てとこだわさ」

「うーっ、くっそー!」

其れからは、堅を維持するだけの体力オーラ強化にまたも穴掘りや、堅維持修行が続いた。

「…なぁ」

「ん?」

「寝る時何時もこうな訳?」

ロープで吊るした大きな岩を頭上に設置し、ロープを離すと後頭部に即落下。

「時偶、アタシがナイフでロープを切るんだわさ。
反射神経強化だわね」

「ふーん」

「アンタたちには別メニューよ」

「…」

「…」

「なに驚いた顔してんのよ…」

「いや、てっきり、なぁ?」

「嗚呼、まだゴンらの修行の監督かと」

「したいのなら止めないけど?」

「するする」

「アンタたちには、ゴンたちと同じものしてもらうわ。
ただし、スピードありよ」

「面白れぇ」

「そうでなきゃな」


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