スコップと衝撃

 
「え、何でだよー」

「スペルカードは…?」

「え?修行に必要ないでしょ?そんなもの。別に貴重なカード持ってる訳でもないんだし」

其れは言えてるな。

「そ、そんなぁ…」

「ほら!今度は2時間半で戻るわよ!」

ゴンとキルアのダルそうな顔を横目に、俺たちはまたマサドラを後にした。






「はぁ、はぁ…」

「っ、はぁ…」

さっきの岩石地帯に着いた時には、2人ともかなり体力を消耗していた。

「なさけねぇな2人とも」

「修行が足りねぇんだよ」

此れしきの事で何バテてんだか。

「鳴門たちと一緒にしないでよっ」

「俺もこんな数時間ぶっ続けで走るのなんて初めてだっつーの!」

息を切らしたゴンとキルアを無視したようにビスケは用意をちゃくちゃくと進めた。

「よぉし始めるわよ。ゲイン」

スコップ、縄、懐中電灯、押し車。

え、デパートで買ったのって此れ?

「さて、マサドラに戻るわよ」

「(うげっ…今来たばかりじゃねーか。もしかしてボケてんじゃねーだろうな此のババア…)」

「但し、今度は文字通り本当に真っ直ぐ進んで行く!」

「ま、真っ直ぐって、もしかして…」

「岩山は…?」

「そう、掘るの」

其の為のスコップと懐中電灯と押し車か…。なる程。

「俺たちは?ゴンたちと一緒?其れとも別行動?」

「競争したって此の2人が勝てっこないのは目に見えてるからね。だから別行動だけど、アンタたちはサクサク進んでいいだわさ。
アタシは此の子たちメインで行動するから」

「分かった」

掘ればいいのか。

「鹿、こっち」

「メンドクセェな…」

「ごちゃごちゃ言わずにさっさとやるの!」

「へいへい…」

ゴンたちの進む岩山の近くからスタートした。

もしかしなくても術は使っちゃダメだろうから自力で頑張りますか。

山肌をスコップでを刺してみた。

ーサクッ

「お、意外に掘れんな」

「全部此れならいいけど…」





岩山の半分辺りからか、少しずつ堅くなってる気がした。

「結構疲れるかも」

「意外と全身使うもんな…」

スコップで掘るのは腕だけじゃなく下半身も。
掘り出した土を運ぶのは下半身だけじゃなく腕の力もいる。

考えたな。
オーラ強化と同時にスタミナ強化も出来るって訳だ。

「そう言えば、掘り終わったら何すんだ…?」

「聞くの忘れてたな…」

1つの岩山を出るのにそう時間はかからなかった。

此れならマサドラまで2日もかからなくて済みそうだ。

一緒に掘り進めていたあの2人。
チラリと横を見てみると、岩山はまだ穴が開いてなかった。

「ゴンたちまだみたいだな」

「彼奴らほっといて先進もうぜ?」

「そうだな」

炎天下の中ってのもあって、体力はかなり消耗されていた。
マサドラまであと半分って所くらいだったか。
一番の難所がやってきた。

ーカキンッ

「っ…!」

「鳴、大丈夫か?!」

かなりの硬い岩肌にぶち当たり、衝撃でスコップを離してしまった。

「うん、何とか…」

落としたスコップを鹿丸が拾った後、其の岩肌を突ついていた。

「随分硬いな…」

「スコップで掘れねぇよ其れ…」

「待てよ…」

「…」

何か思い付いたらしい。

「スコップもオーラで纏ってみたらどうだ?体の一部だと思えば。
オーラは何もかも強化してくれるし、簡単に掘れるんじゃねぇの?」

「そうだな。やってみるか!」

スコップを鹿丸から受け取り、集中。
オーラがスコップまで纏っているのを確認して、硬い岩肌に其れを突き刺した。

ーサクッ

「うわ、すごっ」

「やっぱオーラは便利だな」

其れからと言うもの、オーラのお陰でサクサク掘れ、マサドラまであと少しとなった所で日が暮れている事に気がついた。

「鹿、疲れてる?」

「少しだけ」

あのオーラ作戦は上手くいったのはいったけど、普通に掘り進めるより断然に体力を消耗した。
普段の俺らなら有り得ない程の疲労感。

マサドラへ着く頃にはかなりヘトヘト状態だった。
何年振りに味わう此の感じ…。

「疲れた…」

「言えてる…」

目標としていた2日。
実際には20時間でクリア。

グタリと座り込む俺たち。

「フッカフカのベッドて寝たい」

「同感…」

ここにきて、数日。
ゆっくりとした時間を過ごす事がなかったと、改めて思う。

ゲームの中だとはいえ、風、匂い、感触、其れら全てが本物のようだ。
月も優しく光を放つ其の様も、まるで本物其のもの。

「なぁ鹿」

「ん?」

「現実世界みたいじゃね?此処」

「何言ってんだ。現実世界だろ」

え。

「どーしてそう言えんの…」

「俺らと違って時空間移動なんて有り得ない。
ましてや、オーラで其れが出来るかってゆーとノー。
オーラと言えど、人を違う場所へ運ぶのは可能だとしても人を違う次元に運ぶのは到底無理な話。
此処の住民はオーラで作られた人形。
だから同じ事を何度言っても同じ答えしか出てこないし、そーゆー風にプログラムされてっからだ」

って事は、此処。

「本当に現実世界…?」

「無人島なんかを開拓して作ったんだろ。
ゲーム機に吸い込まれたんじゃなく、どっかの島に飛ばされたと考えた方が辻褄が合う。
このゲームのクリアした報酬覚えてっか?」

「確か、3つ好きなお宝を現実世界に持って帰れるんだったよな…?」

「一番の問題点が其処」

「…あ!そっか、ゲームの中で作られた物が現実世界で使える訳がない!」

「そーゆー事」

なる程。
現実世界にない物が、持って帰れる筈がない。
現実世界でやってるこらこそ、持って帰ったとしても何ら問題なく使える訳か。

「此処は、おとぎ話の中でもゲームの中でもねぇよ」

「何時から気付いてた?」

「此のゲーム報酬聞いてからだな」

「ふーん」

流石は鹿丸。
すぐ答えを導き出す其の頭が欲しいよ。

「あー」

「お客さんかな」

こちらに近付く気配が2つ。

「どーする?」

「逃げるのメンドクセェ…」

だよなぁ。
疲れてっし、あんま動きたくないし。

「…仕方ないか」

グラウ呼ぶか。
彼奴にやってもらおう。うん、そうしよう。

そして、俺はグラウを呼び出した。
 

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