出逢いと旅立ち

 
異国の書に書かれてある印を間違える事なく組んだ筈が…

「此処は何処だ…」

降り立った場所は、見覚えのない森だった。

「鳴…」

「…子供…?」

森の中を楽しそうに駆ける1人の黒髪の子供を見つけた。

「後追ってみるか」

「嗚呼」

こうして、俺と鹿は黒髪の子供を追ってみる事にした。

其の子供を見ていたら分かる。

運動能力かずば抜けて高い。
素早さ、フットワーク、バネ、そして…

「誰かいるのー?」

気配は完全に遮断してた。
バレる筈がなかったのに、黒髪の子供は俺たちがいると既に確信していた。

「隠れてないで出ておいでよ、匂いで分かってるんだからね!」

此の嗅覚。
牙の嗅覚より優れてるのかもしれない。

黒髪の子供とはおよそ1キロも離れていたのだから。
普通の子供と思ってたのが間違いだった。

「すげーな彼奴」

「どんな嗅覚してやがる…」   

牙の嗅覚は彼奴は忍者で、ましてや多少なりとチャクラも使ったりして強化してるが、生身の人間がこんな離れた場所の人間の匂いに気付く事自体可笑しい事だ。
普通は気付かねーよ。

そして、俺たちは黒髪の子供の前に姿を現した。

「驚かしてすまなかった」

「…」

「君たち何処から来たの?」

見ない顔だけど、なんて言う此の少年よに何て言えばいいのか分からない。
俺らと同じ年くらいに通じるのか、が一番の問題だろ。

「瞬間移動してきた」

「え?そんな事出来るの!?」

キラキラと目を輝かせながら体一杯遣っておどろを表現する此の少年に、何だか可笑しくてつい笑みを零していた。

普通に信じたよ…。
疑うって事を知らないのか…?

「忍者だから俺たち」

「にんじゃ…?何其れ…?」

「忍術使って敵を欺いたり、倒したり、治療したり出来るんだよ」

「すっごーい!ねぇねぇ!やってみせてよ!」

好奇心旺盛なんだろう。
初めて知ったモノに興味を出した其の少年は真っ直ぐな瞳で俺たちを見ていた。

「一回だけな?」

そう言って、俺は片手で印を結ぶ。

ポフン、と煙りの中から現れたのはもう1人の俺。

「…手品?!」

「此れが忍術だ」

「分身の術」

「すごい…ホンモノみたい!ねぇねぇ!違うのも見せてよ!」

「一回だけって言ったろ?」

「ケチー!」

人懐っこい性格だな。
ほんの数分前に会ったばっかりなのに、もう警戒態勢を崩させてる。

「あ、俺ゴン!ゴン・フリークス、よろしくね!」

「渦巻鳴門、よろしく」

「奈良鹿丸だ」

其の後、ゴンの母親のミトさんに紹介してもらった。
同い年だった所為かやたらと喜んでるゴンがいた。

此処はクジラ島という小さな島。
クジラの形其のモノだった事から其の名前が付いたとか。
ゴンの父親はハンターと言う職業に就いてるらしく、ゴンも其のハンターになりたがっていた。

「ヌシを釣り上げたらハンター試験受けてもいいって言ってくれたんだ!」

さっきいた森の中に大きな湖があり、其処に巨大な魚がいるそうだ。

「ハンターってのはそんなに面白いのか?」

「えっとね、試験に合格したらハンター証(ライセンス)ってのがもらえるんだ!」

「…」

「…」

「すごいでしょ!」

「他に使い道は?」

「え?」

「…」

あー、此奴馬鹿だ…。

「ハンターについて調べられないのか?」

「ネットなら…」














町に降りてきた俺たちは、唯一の外の情報と繋がる場所へやってきた。

「…此れは何だ?」

テレビみたいな小さな箱に、文字が書いてある板みたいなモノ。

「パソコンも知らないの?」

其の箱みたいなのをパソコンと言うのか…。

「インターネットって言って、回線で色んな情報を見る事が出来るんだ!」

カタカタ、と板に付いている文字を不慣れに押していた。

「ハンターについてっと…」

テレビ画面に情報とされるものが映し出された。

ハンターとは
珍獣・怪獣、財宝・秘宝、魔境・秘境―。
"未知"という言葉が放つ魔力に魅せられ、それを追うことに生涯をかけている者達のことを『ハンター』と呼ぶ。
プロの資格を得るためには過酷な「ハンター試験」に合格しなければならない、か…。

「ハンターか…」

「鳴門も鹿丸も受けてみる!?」

「ま、暇つぶしにはなるだろ」

其れにしても、一応は金も必要だよな。
ハンターになれば色んな情報とか売れそうだし、力も付くだろうし…。

「受けてみるか」

「わーい!一緒にハンター目指そうね!!」














其れからと言うもの、ゴンは森へ入り浸り状態だった。
ヌシを釣り上げるんだ!と。

俺たちはと言うと、ゴンの家で寛いでいた。

もちろん、タダで泊まらせてもらってる訳だから全ての家事手伝いをこなしてる。

「鳴門くん、鹿丸くん…」

呼び止められた俺たちは、ダイニングにあるテーブルへ。

カタン、と出されたお茶を頂きつつ、ミトさんに目をやる。

「ゴンの父親はね、12歳に此の島を出て行ったの。
ハンターになるんだって…私はまだ小さかったからお兄ちゃんみたいに慕ってた私にとって、ジンが此の島から出ていくなんて耐えられなかった。
其れでも、ジンはまた帰ってくるからって…
ジンが帰ってきたのは、其れから随分と経った日。
彼奴は小さな子供を抱えて戻って来たの」

「其れがゴン?」

「ええ。彼奴は此の子を頼むって、そう言ってまた出でったわ…
まだ結婚もしてなかった私によ!
お陰で子持ちと勘違いされて回りの男は寄り付かないし!
一生許さないんだから…」

昔話に花を咲かせる、なんて冗談。
ミトさんの顔は今にも爆発しそうな程、怒っていた。←

「今度あったらタダじゃおかないわ!!」

グッ、と拳を握る様は某ピンク色した同じ里の女の子と其れが被ってしまった…。

「…」

俺の親父よりまだマシだよな。
もういないし、コレ(九尾)封印するし。

「でもあの子ったら、やっぱりジンの子なのよね…
子は親に似るって言うもの…。本当、ジンにそっくり。
鳴門くんたちもハンター試験を受験するのよね?」

「「一応…」」

「ゴンを、お願いね…」

悲しげな其の表情は、全てを物語っていた。

ゴンがヌシを釣り上げるのも
そして、此のクジラ島を離れていくのも…。

此れと決めたら、頑として曲げない。

一見、聞こえはいいがあらゆる状況を考えた場合、一番危険に晒される可能性が高い。

「無茶しないよう、一応叩き込んでいいって事ですね?」

「ええ、ジンの息子ですもの。危ない橋を渡ろうとしていたら、軽くフォローしてあげて…
無茶した時は拳骨でも何でも、ガツンとね!」








ゴンはヌシを釣り上げ、町に戻ってきた。

「ミトさん!此れでハンター試験受けてもいいよね!」

「…………………好きにしなさい」

「やったーーー!」

母親代わりだったからこそ、ゴンが此の町を離れていくのは寂しいんだよな。

小さい時に見てたジン同様、自分の傍から何かが離れてくのは…。
 

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