戦闘開始と潜在能力

 
「始め!」

女が言った後、ビノールトとか言うブラックリストのプレイヤー狩りはハサミを手にした侭、両膝を地面に付けた。

「「…?」」

「何ボサッと見てるんだい!痛めた個所の回復を図ってるんだわよ?やらせといていいの?」

其の言葉でキルアが動く。
背後に周り一度立ち止まってから、一気に相手へ詰め寄るが其れを悟られハサミでの反撃。

うっすらと頬にハサミでの傷がついている。
2人に緊張が走った。

「(奴がダメージを受けてなきゃ、動きが鈍っていなければ…
目を潰されてた…)」

ゴンも同様近付こうと試みるが、リーチが違いすぎる。

「(入り込めない…)」

「(近付く隙がない…)」

ちょっとは頭使えばいいのに…。
真っ向勝負したって勝てない相手に対して2人とも力み過ぎ。

「(使うか…?いや、まだ人に試してない。
一体どのくらいのダメージを与えられるか分からないし…とても実戦で使えるレベルじゃない)
ゴン、持久戦で行くぞ!」

キルアはしゃがみ込み、足元に落ちている小石を拾いだす。

「まずお前が休め。俺が奴を見張りながら此れで攻撃を続ける。
6時間交代で行こう」

「(フフフ、願ったりだ。一週間もこうやって体を休めれば大分回復する。
一週間くらい眠らずにやり過ごせる!
体さえ治ったら奴らを始末してしまえばいい…)」

「石か…使えるね!其れ!」

すると、ゴンは拳にオーラを込め、岩肌に拳を叩き込んだ。

「「ほぉ…」」

「まぁまぁの威力だな」

「アレか。ずっと籠もってやってたのは」

「強化系なあの子ならいい能力になりそうだわね」

オーラを込めた拳は岩を粉々に砕き、周囲にゴロゴロと転がった。

「(そうか、アレが!)ゴン、今の!」

「うん!」

体半分も隠れる程の大きな岩を持ち上げてゴン。

「(Σ何を!?)」

そして、

「どりゃああ!」

「岩を盾に!?」

ハサミで反撃出来る筈もなく、プレイヤー狩りは其の場から動くしか術がなかった。

「うん、流石に其の大きさの岩はハサミじゃ切れないみたいだね!」

「…ガキが!!!」

「正解だわさ。我慢比べじゃ勝ち目ないからね」

「よーしゴン。其の作戦で行こう!」

岩を砕いては盾にし、其の繰り返し。
数時間動き回る2人に対し、ビノールトは息を乱している。

「(何てスタミナだ!
動きっぱなしだぞ!?体休める所じゃねーっ)」

「(やっぱりだ。ビノールトがダメージを受けてるとは言え、半日で押してきている。
生死が絡む極限の戦いである事に強く意識してからの動き、悪くない…。
死に直面する事で自分たちの全力を引き出す事が出来た訳だ。
経験不足故、ギアの上げ方を知らなかったんだわね。
敵の動きの読み方、筋肉の動かし方、力の緩急や強弱諸々、まるでなっちゃないけど…其れは此れから覚えればいいだけの事。

此の2人……………原石!!)」

「…めっちゃ目が輝いてんだけど」

「だって、あの2人に心トキメかされるんだわよ!」

心トキメかされる?

まるで、宝石を見つめる女子だ。
うっとりしてるようで、其れでいて楽しんでるみたいなそんな感じ。

「燃えてきたーっ…鍛えるわよー!」

あー、何か見てるだけってのも暇だな。
早く終わればいいのだけど、きっと此れは長引くぞ…。
あの2人の事だから…。

攻防が続く中、

「考えたな」

下の地形が全く違うものとなっていた。
岩を使っての攻撃で、其処がまるで岩の密林みたいに化していた。

「敵の動きを封じつつ、自らの姿も隠せる」

「驚いた…2週間所か1日でケリが付きそうだわね」

まさか此処まで早いとは俺も思ってなかった。
奴がダメージを食らってなくても、近い時間でこうなっていただろ。

「Σっ!」

そして、密林地帯の死角からゴンが岩を砕いた破片が男に飛んでいき、

「ゲームオーバーだぜ?オッサン!」

其の拍子で倒れかかった男にキルアが詰め寄り、男の腕を取り拳を振り下そうとした時だった。

「ダメだ!キルア!」

「ん?」

折角のチャンスが、ゴンの声で無駄となる。

男が其の声に乗じてキルアと自分の体を離すと、キルアはゴンに詰め寄った。

「何で止めたんだ!ゴン!」

「まだまだ時間はある。1対1で彼奴を圧倒出来るようになるまで続けようよ!
今止めるの勿体ないよ?俺たち、今スッゴく調子いいもん!」

ほらきた。
こうなるって予想は出来てた。

「余計にヒマになったし…」

ネテロの爺さんの時もそうだった。
1人、ボール遊びを寝ずに朝までやってたとか?

「此りゃ2週間丸々やりそうだな…」

「ま、いいだわさ。自分たちがやりたがってるならやらせても。
其れで力が付くなら尚更ね。
てゆーかアンタたち、暇なの?」

「かなり」

「退屈過ぎて眠い」

鹿丸なんかもう、俺の膝に頭乗っけて寝る体制。
目閉じてるから半分寝てるようなもんだな。

「(何で膝枕なのよ…)
じゃあ、念の修行してみる?」

「する」
「やる」

鹿丸は其の体制の侭、目だけを開けて。

「(全く、あの2人と此の2人も同じ子供だわさ…)」

其れから俺たちはゴンとキルアそっちのけで念の修行を始めた。
最初は初歩。
オーラのコントロールから。

ピエロモドキがしてみせた、指からオーラを出して其れを形にするアレ。

「数字の1から9まで、10秒以内で作るのよ」

グラウがしてたヤツだよな。
念で文字作るとかの。

人指し指を立て、して見せた其れをマネしてみる。

チャクラコントロールと差程変わらない。
俺のチャクラ刀も同じように形とキープするコントロールだから其れ程難しい事もない。

すんなりと出来てしまった俺たち。

「…アンタたち…師匠潰しだわよ…」

「だって簡単過ぎるのが悪い…」

「…」

「普通はすぐ出来っこないんだわさ!」

1分もかかる事なく出来てしまった事にビスケは深い溜息を付いていた。

「ま、でもすぐ出来たからって次に進むにはまだ早いわさ。
明日まで其れを磨く事ね」

えーーーー、明日まで…?

「明ら様に顔に出すんじゃないよ。
其れより、アンタたち能力はもう決めてるの?」

「メインはもう完成した」

「随分早いわね…」

「応用のを此れから見つけてく所」

どうせなら全属性全て使いたいよな。

特質系と具現化系はグラウに使うから。
ま、本当は操作系も使う所だったんだけどグラウは自分で動けるから必要なくなったしな。

残りは強化系と変化系と放出系と操作系。
此れをどうグラウに応用するかを考えなきゃな…。

接近戦用、遠距離戦用、回復用とか?

「俺も一応決まって形にはなった」

そう言えば鹿丸の能力って何だろう。
すぐ決まってたみたいだけど。

「後で見せ合いっこしようよ?」

「いいぜ」

「(何か此の2人危ないカホリがするだわさ…)
アンタたちの属性は何だったの?」

「神化系」

「Σっ…」

目を見開いたビスケ。
やっぱり知ってたんだ。
ウィングが知ってて此奴が知らない筈ないもんな。

「ウイングが教えたのかい…?」

アレ?疑ってる?

「俺で2人目なんだって」

「(神化系…暫く聞いてなかった。
ネテロは神化系の初の1人目を知ってる。其奴に念を教えたのもネテロだったけど、アタシは話を聞ぃただけで見た事はなかったんだわさ。
水見式をした時、一番最初に現れる変化が持質系である葉が枯れる…其れから全ての属性の変化が現われる。
全属性を使える念能力者は本の一握りだけど、神化系とは訳が違う。
ただの全属性は同時に全属性の変化が現れる。だけど、威力にムラが生じる。
100%のもあれは10%のも。
神化系はどの属性も100%以上の威力を引き出せる事…強力な上、使い方によっては一番恐ろしいもの…。
ウイングが嘘を教える筈は絶対に有り得ない…じゃあ、本当って事なのよね…)」

「疑ってんの?」

「仕方ねぇんじゃね?だって2人目だし」

其れもそうか。

ビスケはまだ何やら考えこんでいた。
 

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