師匠の師匠とプレイヤー狩り

 
ずっと気配を消して3人を見ていた。
其の間、ゴンたちが手こずっていた怪物もカード化してバインダーに納める事も忘れずに。

其れにしても、あの女がまさかの57歳とはな。
そして、ビスケット・クルーガーって言ったらネテロの爺さんからもらった情報の中に其の名前があったな。

念を教えてもらうにはウィングより遥かに…。
其れもウィングの師匠な訳だから、教えてもらうに越したことはない。

「どうする?鳴」

「あの女は教える気満々だし、其れに俺たちも念の上達にも繋がるだろ?」

其れより、今はあのプレイヤー狩りだ。

「(全く気付かなかった…)
其のカードよくゲット出来たね!」

「アハハ!…ねぇ、何で気付いたの?」

「殺気。敵はアタシたち殺す気だわよ。
僅かだけど漏れた殺気。子供3人に見えて油断したんだわね。でも気を付けて。
敵は結構場数を踏んでるわよ」

ゴンとキルアなら太刀打ち出来なかっただろうな。
分からなかった今、あのビスケットがいたからよかったようなもんだ。

「油断してるなら弱いんじゃない?」

「子供の念能力者は実は相当いるけど、戦闘に向く能力者でしかも手練れの子供なんてほんの僅か。
ベテランなら誰でも経験上其れを知ってるのよ。
敵は経験豊富さ故にアタシたちを見て油断した。
でも直ぐに自分を諫(いさ)めて気配を消した。僅かな殺気と其れを消した早さ。
総合して言えば相手の気配から敵の手強さを感じ取る事が出来るんだわさ」

いや、気配を分からせた時点でもうアウトだろ。
油断したのは自分が相手より上だと確信して優越感に浸っていた証拠。
消してたのに相手に悟られるようじゃプレイヤー狩りも大した事はない。

「(俺たちは気配を感じ取る所か、気付く事さえも出来ないレベルか…)
どうすればいい?」

「(切り替えが早い。頭のいい子だ…)
アンタたちの意見は?」

「此の侭3人で行動する」

「うん、俺もそう思う」

其の前に殺してしまえば早いだろうが。
とは言っても、ゴンとキルアじゃ無理だけどな。

「殺るか?」

「いや、あの女は何かしら策があるらしい。此の侭見守ってていいよ」

じゃなきゃ、こんな場面で座って話してる時間すら勿体ないと思う筈だ。

「理由は?」

「油断したのに気を引き締めたのは多分俺たちが3人だから。
だから3人で行動すれば敵も迂闊には動かないと思う」

「ん。ま、正解だわね。でも敢えて別行動をとる。
アタシが1人、アンタたちが2人で別れたら、敵は100%アタシを、追ってくる。
アタシは南、2人は北。
気配は其の侭で500mくらい普通に歩いてって。目指すはあの高い岩山。
彼処に辿り着いたら今度は絶。
素早く戻ってくる事」

何する気だろうな、あの女…。

「鹿はゴンたちを見てて」

俺は女が気になる。

「OK、二重尾行だね」

ーパシンッ

「ん!?」

いきなりの平手打ち。
打たれて初めて自分が殴られたんだと気付くキルア。
ゴンはあたふたとしていた。

え、始まってんの?そんな感じ。

「そんなに言うならいいわよ!もうやってらんないわ!バイバイ!」

「へ!?ん!?」

始まってんの?もなかったみたいだな…。
どうしたらいいか分からないと言った感じで、ゴンは2人の顔を交互に見つめていた。

「(此のババア!!)
あー、行け行け!清々するよ。じゃあな!」

「バーカ!」

あの女が立ち上がり、作戦実行。

「(殺気にも気付かなかった癖に二重尾行とは自惚れもいい所ね…
やはりアタシが必要以上にエサを演じなければあの2人は確実に死ぬ)」

ゴンたちと反対方向へ向かう女の後を追う。
そして、プレイヤー狩りも1人となった女の後を追った。

「さて、お手並み拝見と行きますか」

暫く歩くと、プレイヤー狩りが動きを見せる。

女に近付き、持っていたハサミで襲いかかった。

「キャーーー!!」

女のツインテールの片方が男のハサミによって切り取られていた。
しゃがみ込んで顔を両手で隠す仕草をする女。

「フッフッフ…切ってやったぜ?お前の髪…。
俺はな、愛用のハサミで切った奴の髪を食う事で!本人さえ知り得ない肉体の情報を知る事が出来る!」

食べるんかい…。
しかし、此奴の能力いらねぇ…。

相手の肉体情報知ってどうすんだよ…。

男は女の髪をムシャムシャと食べ始める。
すると、男は目を見開き固まった。

「(実年齢57歳!?嫌、其れよりも驚くべきは…
何という鍛え抜かれた肉!俺には分かる!
内に秘められた極限をも超えた鍛錬の結晶!!)」

男はハサミを専用の容器に直し、腰に付けていた其れを外して地面へ投げた。

そして、ゴンたちがこちらに到着したようだ。
俺の隣に鹿丸がやって来る。

「ん?」

男はゆっくりと構え出す。

「武道家として手合わせ願いたい…」

すると、ふ、と笑みを零した女は手袋を外した。

「ただの屑じゃないようだわね…いいだろう」

女も同じように構えた。

先に動いたのは男だった。
其の腕を両手で掴み、回すように投げ、落ちてくる男の脇腹に裏拳をかます。

「グァアッ!」

其の衝撃で数m吹っ飛ぶ男は、口端から血を流し、脇腹を手で押さえていた。

「運がいい。念での戦いならアンタを殺してた」

やっぱりあの女は強い。

「さてと、いるんでしょ?アンタたち。
いらっしゃい!」

岩に身を潜めていたゴンたちが姿を現した。

「今の勝負、何処からハッキリ見えた?」

「敵が宙に浮いて逆さになってた所から…」

「俺も…」

「(相手は決して弱くない…)」

「ん、なる程ね…」

「(其れ以上、此奴は桁違いに強い…)」

「普通の怪物ならカード化してゲット出来る訳だけど、其の時の入手困難はDって所だわね」

そろそろ俺たちもゴンたちの所に出てやるかと思い、姿を見せてやった。

「まぁ、妥当かな」

「鳴門!鹿丸!」

「今まで何処行ってたんだよ!」

「やっと姿を現したわねアンタたち」

「俺は武道家じゃないけど、念での戦いじゃなくても殺してた」

未だ横たわる男を見つめ、そう言うと女は深く溜息をついた。

「とんでもないガキだわさ…」

「褒め言葉として受け取っておくよ」

「アンタたちには戦いについては教えなくてもよさそうだね」

「俺らは念でいいから、2人には色んな事ビシバシな」

「分かってるわさ。じゃなきゃアタシは此処にいない」

念としても戦いとしても、あの2人にはまだまだ強くなる必要がある。
ゴンは親父を見つけるのに、此のゲームをプレイするのに必要な強さと判断。
キルアは其れについていくからには同様強さと自制心。

「此の男はまだ遣えるんだろ?」

「当たり前よ。今の状態であの子たちがどれだけ通用するか試すの」

難度Dな此奴を攻略しなきゃ、此の先どう足掻いたって無駄ってね。

少しずつでも前に進む為に俺も鹿丸も手を貸すよ。

「じゃあ、移動するわよ!」











岩石地帯のッカリと開いた大きな落とし穴みたいな場所。
プレイヤー狩りとゴンとキルアを其処に降りさせ、俺たちは上から拝見。

「2週間あげる。其の間にアンタたちはあの男を負かせるの。
相手を殺す気で行きなさい。でないと!アンタたちが殺されるわよ。
其処のアンタは其の2週間、此の子たちの攻撃を防ぐだけでいいわ。
もし防ぐ事が出来たら見逃してあげる。
出来なかったら殺す。
どう?」

「ガキ2人がどうなっても知らねーからな」

俺と鹿丸なら5秒もいらない。
斬られた事も解らない侭、相手は死んでいく。

だが、男は負傷してる上、今日明日くらいはマトモに動けないだろう。
どう攻略してくか、見物だな。

「ゴンとキルアの悪い癖が出るぞ?きっと…」

「あー、きっとな」

「悪い癖…?何よ其れ…」

あの天空闘技場の新人潰しの彼奴と戦った時みたいに…。

「まぁ見てれば分かるって」

「教えなさいよー!」

大怪我しなきゃいいけどな。
 

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