ビスケットとヒヨッコ ビスケside

 
白いシャボンはオーラに反応し爆発。
赤いシャボンはオーラを発しないモノに反応し爆発。
シャボン全ての動きを把握して、素早く纏と絶の入れ替えで捕まえる。

ま、此奴らには荷が重いわね。

2人の後を追って、観察しているけど、出くわす怪物に手こずってばっかり。

ちゃんと見極めば動きのパターンも見えてくるのに見ようともしない。

弱点を隠す微妙な動きにすら気付かない。

真っ向勝負は嫌いじゃないけど、此のゲームでは不向きだわね…。

其れにしても、さっきから見てるけど、此奴ら…!!

何て勿体ないんだぁあ!!!

グッと拳を握り締めた。

此奴ら磨けば光り輝く原石じゃないのー!
でも、此の侭じゃ凶悪な怪物やプレイヤーに出会ってしまったらゲームオーバー…!

「今度は手強そうだね!」

「嗚呼!」

鎧の騎士があの2人の前に現れた。

うぅーっ!
もう我慢出来ん!!!!

「凝ーー!!」

「ん?」

「彼奴…」

アタシの声に反応して後ろを振り返る2人。

「ほら!よそ見すんなぁ!
凝だよ!出来るの?!出来ないの!?」

「出来るけど、忘れてた…」

「何かあの子、さっきまでと雰囲気違わない?」

ほら、凝をしたら一目瞭然じゃないの。
念使えるのに何で使わないか理由が知りたいよ。

「「Σ!!」」

「見えただろ?其の鎧の騎士はくぐつでいくら攻撃しても効かないよ!」

此のゲームはハンター専用って知ってたんだろう?
其れに2人か1人がハンターなら、ツェズゲラが言った通り念を使えないなら此のゲームはクリア出来ないって。

其れなのに、此の子たちときたら…。
今まで普通に楽しんでた。
ジンが作ったゲーム、とか言ってたけど。
其れでもハンター専用なのを忘れてる。

「そっか!どっかで此奴を…」

「操ってるんだ!」

本当に青っちぃわね…。

「こっちか!ん?」

操ってる怪物を見つけた黒髪の子。
其の瞬間、其の怪物は触ってもいないのにカード化。

鎧の騎士はバラバラと地面に崩れ落ちた。

「リモコンラッド。念能力でモノを操って身を守る。臆病でいきなり違った生物と出会うだけで気絶してしまう、か…
なる程ね!」

岩石から下に降りた。

「凝出来るじゃないの。何で言われるまでやらなかったの?
ずっと見てたけど一度も使ってないよね?」

「いや、まぁ…なぁ?」

「…うん」

言葉を濁すって事は…

「忘れてた訳ね…」

余程楽しかったのね。
夢中になるくらい、ハンター専用だって事も念も忘れるなんてやっぱりガキだわさ…。

アタシは人差し指を立てた。

「「ん?」」

「何ぼさっとしてんだよ!凝ーーー!」

「(一体何なんだよ此奴…!)」

アタシに言われて凝が形になるまで、まだまだ時間がかかってるわね。

「何が見えた?」

「「数字の1」」

「よろしい。いい事!此れからはアタシが指を立てたらすかさず凝!
何が見えたか大声で言う事!其れ以外にも何か怪しい雰囲気を感じたら、何を思っても凝!いいね!
遠くを見る時、自然に素早く凝を行う。
戦闘の初歩だけど余っ程経験積まないと身に付かないからね!」

「うーん、確かに…」

「おい、ゴン!」

「此れからはアタシがコーチしてやるからね!特別にタダでいいよ。
其の代わり、ビシビシ鍛えるから其のつもりでね!」

アタシがそう言えば、銀髪のガキは反抗を見せる。
此れだからガキは…。

また指を立てる。

「数字の5!」

「正解。お前腕立て200回!」

「え?」

「罰ゲームだよ。遅かった方がやるんだよ!早く!」

額を小突くアタシの腕を、銀髪はパシっと払う。

「はぁ!?ふざけんな!誰が!」

強情だわさ…。

「ふん!」

岩石を拳で叩けばヒビが入った。
其れを見た2人は少し、後ずさる。

「っ…」

「アンタたちヒヨっ子が産まれる前からずっとプロハンターやってんだからね!」

「産まれる前って…?」

「いくつなんだよ…」

アタシの年を教えると2人は目を見開いて驚いていた。

「「Σえーーー!?」」

見た目は、アレだけど。

「57歳!?」

「ババアじゃん!」

此のガキ!!

アタシはイラッとした瞬間、銀髪の顔に拳をお見舞いしてやった。

「念を覚えて40年。アンタたちより随分先行ってるし有り難くコーチ受ければいいわさ」

此のアタシがタダでコーチしてあげるのよ?
どれだけレアだと思うの!?

「こっちの意向は無視かよ」

「文句あんの?」

「当然だろ?」

シブトいわね…。

「大体アンタ何者だよ」

「そっか!自己紹介がまだだったわね。
アタシはビスケット・クルーガー。
堅苦しいのは苦手だから呼ぶ時はビスケでいいわよ。
其の代わり、教えを請う身としてアタシの言い付けは絶対守る事」

「だから呼ばねーし請わねーよ!
どんな奴かも分かんない人間にモノを教わる程切羽詰まってないよ?俺たち。
ゴンも何か言ってやれよ」

「そうだね…俺たちにはウィングさんがいるしね…」

ウィング…?あれ、ウィングって…。

「あ、そうだ。そうそう俺たちには師匠がいるからいいよ」

「師匠?ウィングって言ったけどもしかしてヒヨっ子ウィング?
眼鏡かけた寝癖坊やでしょ?
服の着方がいくら注意しても直らないあの…」

「知ってんの!?」

「知ってるも何も、アタシの教え子だわよ、ウィングは」

あのヒヨっ子ウィングが弟子を作ってたとはね。

「へぇ、すっごいや!」

「彼奴が師匠とは驚いたわねー。
月日が立つのは早い事。ま、ウィングは覚えが悪い分教えるのに向いてるかもね。
そうよ、アンタたちからしてみれば師匠の師匠なんだから教わるのに何の不足もないでしょ?」

「確かに、資格はあるねー。でも、今の話が本当なら、だけど」

「ふっ、中々頑固だわね…ま、好きだけど?そうゆう子」

銀髪の額を小突く。

ただ、切羽詰まってないとか言ってたけど実際此のゲームをプレイするに当たって、此の子たちはまだまだ未熟すぎる。

本当に強い敵と、ましてやプレイヤー狩りに出くわせば確実に死ぬ。

さっき、此の子たちが出会った怪物をカード化したのを見せる。
ランクはE。

此の岩石地帯は大体初期だから怪物の入手難度のランクは低めだわさ。

アタシが言ってるのは、こんなカードをゲット出来ないとかそうゆう問題じゃない。

「アンタたちが此のカードをゲット出来ない事が問題じゃないの。
此のカードを簡単にゲット出来る奴らがいるって事が問題なの」

そんな連中でも此のゲームで何年もくすぶってる連中だっているのよ?
其れなのに凝すらままならないヒヨっ子がプレイする事自体間違ってるんだわさ。

「アンタたちより戦闘経験も上を行く連中がゴロゴロいる事を知りなさい。
自分の立場と実力も理解した上で言葉も行動もするの」

「そっか…そうだよね…
俺たち、楽しくて…ジンの作ったゲームだからってはしゃいでた…」

「ゴン…」

「此れ、ハンター専用のゲームだもんね…」

「そうよ。一番最初にも言われたでしょ?死んでも文句言わないって。
ましてや、プレイヤー狩りがいる今、アンタたちは今の侭プレイしてたら必ず死ぬわよ?」

こんな会話してる中、殺気を感じた。

「ガキが3人か…八つ裂きにしてやろうか…」

ほら、言わんこっちゃない。
此の殺気は間違いなくプレイヤー狩り。

「座って。こっち近付いて」

直ぐ気配を消したわね…。

「「え?」」

「適当に雑談してるフリを。アタシの背後に敵がいる…」

「「Σぇ…」」

もし、アタシが此処にいなかったら今此の子たちは敵が襲いかかってきて、殺されてた。

よかったわ。此の子たちを見ていて。
ま、でも他の仲間が其れをさせないだろうけどね。

「気配を探ろうとしないで。敵に緊張が伝わる。何か話して」

其れにしても、此の子たちの仲間は何処行ったのよ!
あの子たちがいればまた状況は違ってくるだろうけど。
此の子たちを守れるくらい強いならちゃんと傍にいなさいよね!

此のアタシにさえ気配も感じさせてもくれないなんて…。

ただ者じゃないわ!

見ていて、全く隙なんて見せなかった。
子供と言う概念を覆してるわね。

ましてや、アタシが見ていて逆に見られてる感じがしたもの。

とんでもない子供ね。
末恐ろしい。
 

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