鎖と別れ 鹿丸side

 
鳴門と別れ、先回りした俺はクラピカの仲間である男と接触した。

色黒で犬が数匹。
此奴に間違いなさそうだ。
微かにクラピカの匂いがする。

「スクワラと言うのはお前か?」

「だ、誰だ!」

「クラピカの使いだ」

「クラピカの!?」

道には車の列がズラリと並んでいて、此の侭じゃ旅団に追いつかれるのは数分と持たないだろう。

「旅団がこちらに向かってる」

「何だって!?」

「早く逃げろ」

「此の渋滞でどうやって逃げろってんだ!」

男は旅団と聞いた瞬間、かなりの同様を見せていた。
自分が敵わないと理解しているのだろう。

しかし、何故旅団は此の男を特定に向かって来れたのか…。
其処が一番の疑問だな…。

「…」

そう言えば、キルアが言ってたっけ。

“ビルが密集してやがる”

変化系の能力者…。

チラリと車の中を見てみると、男の隣の椅子の上に目玉が2つあった。

「其れ、緋の眼か?」

「あ?嗚呼、ウチのボスが人体収集家でコレクションにするんだと…気色悪いよな」

まさか、そう思って凝をしてみた。
すると可笑しな事に目玉だけではなくケース丸々オーラに包まれていた。
しかも具現化系の色だった。

「偽物だな、其れ」

「Σ馬鹿言うな!此れはオークションで手に入れたヤツだぞ!?」

「其のオークション全ての品が旅団によってすり替えられたんだな。
一応、俺がクラピカに渡しておく。お前は其の侭車で移動しろ」

「ぅ…分かったよ」

男は半ば半信半疑だったが、緋の眼を俺に渡してくれた。
其れを持って、来た道を戻る。

もちろん、奴らが見えるスピードで車と車の間をすり抜けていく。

そして、携帯を取り出し電話をかけた。

「…私です。緋の眼が偽物だって事が分かりました。今其れ持ってそっちに向かってます」

『了解。こっちはもう完了した』

「では」

電話を切った瞬間…

「「Σっ!?」」

旅団のメンバーとすれ違った。
瞬間、俺は足を止めた。

「テメェ!黒ずくめ!」

「此奴、仮面が違うよ?」

「黒ずくめは2人いるのよ。狐面と此の男」

パクノダって女がこっちに来たんだな。
なら、やっぱ此奴らもあっちに向かわせた方がよさそうだな。

「お前らが追ってた男は鎖野郎とは関係ない奴だった」

「だったら何故テメエが其れ持ってやがんだよ!」

「お前たちをおびき寄せる為に使わせてもらっただけだ」

そう言って俺はまた走り出した。

「待て!黒ずくめ!」

「緋の眼持ってた男はどうするよの!」

「あの男を追った方が、いいかも」

奴らがついて来れるスピード。

「チッ、早いな…」

「余裕見せてるわね、あの男…」

「何かムカつく…」


















鳴門と合流した時には、既に逆さ十字の男はいなかった。

「団長はどうした…!」

「鎖野郎に攫われたよ…」

「マチとシズクの2人がついていながら、何て様なの?」

「黒ずくめが強いんだもん…」

「理由になってないよ」

さて、鳴門は此れからどうするのか…。
何も聞かされてないってのはやり難い。

「全員集まったようだね。じゃあ、今からアジトに戻ろうか?拒否権はないから」

予定だとパクノダだった筈だけど。
逆さ十字を先に捕まえるとはな。

俺たちは旅団を引き連れアジトに向かった。
キルアの言う通り、ビルが密集していて一見どれがアジトか普通の人間なら分からないだろ。

凝をして見てみれば、色が違うからすぐ分かる。
中に入ると、残りの旅団メンバーとご対面。

「黒ずくめ!?」

「何で此処に…!」

「ノブナガ、団長はどうした…?」

「鎖野郎にまんまとしてやられた…」

「…其れでのこのこ帰って来たのか?」

「スフィンクス、止めな!ノブナガは悪くないよ。悪いのはアタシとシズクだから」

「黒ずくめが鎖野郎に加担してるなんて思ってなかったんだよ?」

ごちゃごちゃと口論そ始めた旅団メンバーたちを見つめていると、鳴門が心話で話しかけてきた。

「(此の後クラピカから連絡が入る。
其の時、翔赫がパクノダを連れてクラピカの元に向かう)」

「(私がですか?)」

「(そうだ。
パクノダに対して、クラピカの情報全て漏らさないようにと鎖を打ち込むらしい。
其処でだ、もしパクノダが死を覚悟でクラピカの情報を漏らすようなら、構わない。漏らす前に殺れ)」

「(…御意)」

其の後クラピカから連絡が入り、鳴門が言った通りパクノダを連れてこいと。
そして、俺はパクノダを連れてクラピカの元に向かう。

指定した場所は少し離れた空港だった。
電話で指示通りに動き、止まっていた飛行船に乗り込んだ。

「…」

暗闇の中、明かりも付かず飛行船は直ぐ飛び立った。

暫くした後、漸く飛行船の明かりが付き、奥からクラピカが変装した侭姿を現した。
其処には血だらけの逆さ十字の男も。

「協力感謝する」

「礼を言うならもう1人に言ってくれ」

俺は鳴門がやると言った事に、9.9割否定はしない。


そして、クラピカは逆さ十字とパクノダに念を使った。
律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)。
相手の心臓に鎖を巻きつけ、設定したルールを相手に宣告する。
其のルールを破った場合、鎖の先に付いた刃が心臓を貫き死が待ち構えている。

逆さ十字には念能力を一切封じる事と旅団のメンバーとの接触を絶つ事。
パクノダにはクラピカの事を一切漏らさない事。

其れが律する小指の鎖によるルールとなった。

逆さ十字とパクノダは其々別の道へ進んでいった。

「…」

「…」

鳴門と目を合わせて小さく頷くと、素早く印を組み分身と入れ替わりパクノダを追った。

旅団メンバーへ電話をかけ、女はアジトに向かっていた。

「此れから戻るわ。…ええ、団長は解放されたわ。
其れについては戻ってけら説明する」

ゆっくりとした足取り。

路地から出てきた白い子猫に笑いかけてやったり。
パクノダは今までになく穏やかだった。

「団長は…?」

そして、アジトに付いた女を待っていたメンバーたちが見つめる中、眉なしが問う。
女は銃を握っていた。
しかも、先程とは打って変わって、表情は暗かった。

「…此処には、来れない」

「ぁあ!?どうゆう事だ…!」

「大丈夫…
フェイタン、スフィンクス、マチ、ノブナガ、フランクリン、シャルナーク…信じて受け止めてくれる…?」

女の体にオーラが纏いだす。
銃を構えたパクノダを殺るのは今だと。

女は信じて受け止めてと言った。
普通の銃ではない事は確かだ、其れを味方に向けて放つと言う事は其れもパクノダの能力だと言う事。

「…」

刀を抜き、女の心臓を一突き。

「Σっ…」

「…パク?」

バタンと倒れたパクノダに、薄紫の髪の女が駆け寄った。

「パク!!」

「パクノダは俺たちに何をしようとしてた…?」

「きっと、鎖野郎の情報を与えようとしてたんだ…」

「契約の剣か…」

「此れからとうするネ…」

「鎖野郎をぶっ殺す!」

「当たり前な事聞くんじゃないよ!」

「団長も探さないと…」

「先ずは情報だね」

俺の姿は見えなかったらしい。
刀傷があるのも、契約の剣だと思い込んでいた。

「…」

クラピカに対する恨みを増やしてしまう形となったが、此れで俺の任務は完了した。
此処に留まる必要もなく、俺は暗闇に姿を眩ませた。











戻ってきた俺は分身と入れ替わった。

クラピカはパクノダに撃った鎖が切れた事を知ったようだ。

理由は分かっていない。
情報を伝えたのだろう、と差程驚いた様子もなかったらしい。
其の結果も予想済みだったと。

其れでも、クラピカの鎖の能力は旅団に対する武器である事に変わりはない。
だから何れはバレる事なのだと、冷静なクラピカがいたとか何とか。

「…」

「情報は?」

「遮断致しました」

「其れでいい」

クラピカの為、知らない内に蜘蛛の未来が決まっていく…。

そんな気がした。
 

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